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セルフメディケーション
自身の健康に注意を払い、軽度な身体の不調は自分で手当てする「セルフメディケーション」は、医療費の増大や医療体制の逼迫(ひっぱく)を背景に年々重要性が増している。厚生労働省は「セルフメディケーション税制(セルメ税制)」を26年12月まで延長し、施策でセルフケアを後押しする。また「セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」を25年1月から開催し、セルメ税制の在り方などについて幅広い議論が行われている。
4本柱軸—自分自身の健康に責任
「セルメ税制」延長
セルフメディケーションは①規則正しい生活を心がける②一般用医薬品(OTC医薬品)を上手に使う③症状やけがに対して正確な知識を持つ④常日ごろの健康と生活習慣をチェックする—の4本柱を基軸とし、世界保健機関(WHO)は「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義している。
特定の成分を含んだOTC医薬品の購入額が1家庭で年間1万2000円を超えた場合に適用されるセルメ税制は、当初は21年12月までの時限措置だったが、26年12月まで延長された。セルメ税制を活用することで確定申告後に所得税が一部還付となり、翌年の住民税が減額となる。
医療費1・6兆円増
セルフメディケーションが推進される背景には、医療費の増大や医療機関の逼迫がある。厚労省によると、22年度の国民医療費は46兆6967億円となり、21年度と比べて1兆6608億円の増加となった。30年前と比較して約2倍の規模に膨らんでいる。国民医療費は今後も増加が予想され、社会保障給付の持続性が喫緊の課題となっている。
医療DX
厚労省は1月から「セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」を開催し、医療のかかり方や健康サポート薬局の普及促進、一般用医薬品データベースの整備などについて幅広く議論している。また、6月に政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)では、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しや医療デジタル変革(DX)を通じた効率的で質の高い医療の実現などが明記された。
医療費の増加を抑制するためにも、セルフメディケーションの普及・促進と国民の意識改革がカギとなっている。
【ごあいさつ】 日本OTC医薬品協会 会長 上原 茂/重点活動5項目 普及へ実行
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日本OTC医薬品協会 会長 上原 茂
わが国の医療提供体制および国民皆保険の維持は重要な課題となっています。当協会では自助・共助・公助の観点から、かねてより「自分の健康は自分のために自分で守る」というセルフケアや軽微な身体的不調は自分自身で手当てするセルフメディケーションの普及を進めてまいりました。特に今年度は五つの重点活動項目に取り組んでおります。
1点目は「OTC医薬品・検査薬の普及・拡大」です。スイッチOTC化の加速、慢性疾患治療薬などの新たな領域のスイッチOTC範囲拡大の支援をしてまいります。また、OTC検査薬についても穿刺血(せんしけつ)などの低侵襲性検体を用いた検査薬など、範囲拡大への必要な対策のとりまとめを行ってまいります。
2点目は「セルフメディケーション税制改正への要望の実現」です。2026年度の税制改正に向けて制度の恒久化、対象品目の範囲拡大、1万2000円の購入を利用の条件として維持するものの差引額をゼロとし、上限額を引き上げることを要望します。そのためにも、関係団体と意見交換などを行い、税制改正への準備を進めてまいります。
3点目は「ヘルスリテラシー向上による適切なOTC医薬品の選択と適正使用の推進」です。くすり教育を普及させる取り組みを推進し、また、生活者が医療機関にかかるあるいはOTC医薬品での対処の判断を手助けする「上手な医療のかかり方」を実践できるよう、取り組みを進めてまいります。
4点目は「セルフメディケーションに関するDXの推進」です。OTC医薬品情報の提供サービス支援、おくすり手帳との連携、税制申告の支援など、生活者の利便性を向上させるための取り組みを進めてまいります。
5点目は「OTC医薬品の品質・信頼性の向上」です。自主点検により明らかになったOTC医薬品の品質問題の解消および再発防止に向けた取り組みを強化します。
これからも、日本OTC医薬品協会はOTC医薬品が生活者の健康維持、管理から医療への橋渡しをする大切な存在として貢献できるよう活動を進めてまいります。
