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堺商工会議所
エネルギー価格や人件費の高騰などで国内のビジネス環境は厳しさを増している。堺商工会議所(葛村和正会頭)は地域の中小企業や小規模事業者を支援。そうした取り組みの一環として、オープンファクトリー(OF)や自社ブランドの構築など、自社の価値を高める取り組みを後押しする。事業者間の連携や地域活性化に向け、新たな価値を創出する仕掛けを展開する。
身の丈に合うIT導入
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堺の伝統産業を守るための施策が求められる
生産性向上や人手不足対策、業務効率化を図る上でデジタル化は避けて通れない。だが中小企業や小規模事業者ではノウハウや人材、経費の問題でなかなか進んでいない。何から手をつけ、誰に相談するかといった基本的なことから支援する必要がある。
堺商工会議所ではデジタル化に取り組む中小に支援しており、コロナ禍の2021年から身の丈に合ったIT導入やデジタル化への支援の取り組みを拡大している。中小を対象にITの専門家を企業に派遣し、販路開拓のための自社ホームページの作成や業務効率化のための会計ソフトの導入、交流サイト(SNS)の活用方法、社内セキュリティーの見直しなど、社内のデジタル化に関して助言する。その後、経営指導員がIT導入までをフォローする。
デジタル化支援
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ITやDX関連のイベントを通じ、会員企業のデジタル化を後押しする
12月11日にはITやデジタル変革(DX)に関する製品・サービスの展示体験交流会を堺会議所で実施。堺会議所の会員であるIT事業者がブースで製品やサービスを展示し、ITやDXの導入を考える企業が製品やサービスを体験できる。また日常業務のデジタル化、SNSやウエブ広告手法の選び方といったセミナーを実施。中小のデジタル化を後押しする。
堺商工会議所 葛村 和正会頭に聞く/稼ぐ力強化へ支援必要 万博で魅力をアピール
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堺商工会議所会頭 葛村 和正 氏
堺商工会議所の葛村和正会頭(ダイネツ会長)に、堺市産業の今後の展望を聞いた。
◇ ◇ ◇
-材料費や人件費の高騰などビジネス環境が厳しくなっています。堺市のビジネスの現状をどう見ますか。
「資材やエネルギー価格の上昇、運送などの外注費部分に関しては、業界全体で価格転嫁しやすい環境にはなっている。一方、社内の人件費の値上げをお願いするのはまだ難しい。従来の原価のままでは厳しく採算が合わない状況だ。このような状況では、大手と中小との格差が広がる。25年度にかけ廃業が進むかもしれない」
-特に従業員5人以下の小規模事業者はさらに厳しい状況にあります。
「小規模事業者は中堅・中小の下請けとなるケースが多く、中堅・中小と小規模事業者との間でも格差が広がると見ている。中堅・中小であれば、人工知能(AI)やデジタルなどの先端技術を導入できるかも知れないが、小規模事業者では対応が難しいかもしれない。国の補助金の申請対応すら難しいケースもある。堺会議所は設立時から販路拡大やIT・DX化支援、価格転嫁対策、事業承継などのさまざまなセミナーを年間50回程度開催し、会員にSNSやメールなどで情報を周知している。ぜひセミナーに参加し『稼ぐ力』を強化してほしい」
-年収103万円の壁についての議論が進んでいます。
「商工会議所の会員の大半を占める小規模事業者にとって、社会保険料は大きな負担となる。従業員の年収が130万円を超えると企業規模に関わらず社会保険料の支払いが義務付けられ、企業が保険料の一部を負担する必要が出てくる。そのため企業にとっては130万円の壁への対策のほうが課題だ。従業員100人以上の企業ではすでに対応しているが、従業員50人以下の企業では未対応のケースも多い。小規模事業者では労働力の半分をアルバイトが占めるケースもあり、コスト増加が深刻になる」
-オープンファクトリーや自社ブランド製品を作る中小の動きをどう見ますか。
「企業の取り組みを知ってもらう取り組みは良いことだ。モノづくりへの関心を高めるきっかけになる。だが小規模事業者は単独では参加が難しい場合もあるため、数社が集まって共同出展できるような支援を堺会議所が用意することも必要だろう。また自社製品を開発し販売する中小も増えており、こうした取り組みを応援していきたい」
-2025年の大阪・関西万博開催まで半年を切りました。今後の展望をお聞かせください。
「万博会場を視察した際、木造建築の大屋根リングの上から見た光景が壮観で、淡路島まで見渡せたのが印象的だった。パビリオンも着々と完成しつつある。海上ルートも整備され、大阪湾の活用も進むだろう」
「観光を一つの産業として考えた場合、堺市は恵まれた場所にある。堺には夜景がきれいな工場もあり、堺を中心に観光が楽しめる仕組みを作りたい。また万博は新しい技術や製品の商談の場でもある。海外の政府高官や企業のトップなど、来場者に堺のイベントや産物を紹介する取り組みが重要だ。堺の魅力を世界にアピールしていきたい」