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堺商工会議所
エネルギー価格や人件費の高騰などで国内のビジネス環境は厳しさを増している。堺商工会議所(葛村和正会頭)は地域の中小企業や小規模事業者を支援。そうした取り組みの一環として、オープンファクトリー(OF)や自社ブランドの構築など、自社の価値を高める取り組みを後押しする。事業者間の連携や地域活性化に向け、新たな価値を創出する仕掛けを展開する。
さかいオープンファクトリー
32社が公開イベント 企業間連携の輪
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堺商工会議所
堺商工会議所は2022年度から大阪府八尾市を中心とする地域一体型OF「ファクトリズム」と連携し、堺市内企業のOFの取り組みを支援する。25年の大阪・関西万博開催まで半年を切ったOFでは「25年あなたのこうばが、あなたのまちが、(万博の)サテライト会場となる日が来る」がコンセプト。24年度のOFは10月24-27日に堺市とその周辺地域で最大となる32社が公開イベントを実施した。
小泉製作所(堺市堺区)では小学生らの子ども向けの工場見学ツアーを実施。溶接現場で多くの子どもが「やりたい」と手を上げる様子が印象的だった。小泉達哉社長は「参加した子どもが溶接などのモノづくりを経験したことで自信を持ち、興味を深める動機づけになる。将来、この経験が貴重だったことに気付く。大人になった時にモノづくりに関わってくれるかも知れない。そんな時のための種まきをしている」と強調する。
裁断機・打ち抜き刃型を手がけるイイノ(堺市堺区)は今回初めてOFに参加した。イイノは野球のグローブを作るための打ち抜き刃型で国内で高いシェアを占める。今回のOFでは布を刃型で特定の形で抜き、ストラップを作る実習を実施。飯野晃一専務は「ニッチな業界で働く従業員の家族に仕事内容を知ってもらえる。私たちが当たり前に行っている仕事が実はすごいことだと知ってほしい」とOFへの参加の狙いを明かす。
ファクトリズムの南大阪支部支部長を務める河辺商会(堺市西区)の福田康一社長は「OFによるつながりをきっかけに企業間連携での仕事が始まるケースが出てきた」と話す。OFを通じた連携の輪が広がっている。
堺会議所は22年度の開催からファクトリズムに参画する堺市域の企業に伴走支援を実施。「さかいオープンファクトリー推進事業」として、市内小学校で配る地図付きパンフレットを作成するなど、参加企業の取り組みを支援してきた。堺市の製造業はOFを通じ、地域との接点や会社の露出を増やすことで仕事を創出するとともに、インナーブランディングの取り組みとして社員の仕事に対する意識向上を図る。堺会議所は万博会期中だけでなく、閉会後も堺の魅力であるモノづくり企業の力を情報発信していく。
広がるメイドインさかいフェア
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オープンファクトリーを通してモノづくりのファンを増やす
堺会議所は9、10日の両日、堺会議所や堺市産業振興センターイベントホール(堺市北区)の周辺一帯で「メイドインさかいフェア」を開いた。堺の名店や名品を広く紹介する機会を通じ、各店舗への誘客や購買の促進につなげることを目的に年1回開催している。
家族連れを中心とした堺市民をはじめ多くの人々に向けて、優れた技術やサービスを持つ企業を認証する堺ブランド「堺技衆」の企業や、開始前から行列ができるほどの人気の伝統工芸士による包丁の研ぎ直しなどの伝統産業、万博出展企業などの堺産業の魅力を発信した。またさかい逸品発掘市やさかいスイーツフェスタなど地元企業販売ブースを構えた。地元の産品を多くの消費者に知ってもらう機会を創出している。2日間で家族連れなど約1万7000人が訪れた。
セミナー通じ、価格交渉後押し
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メイドインさかいフェアには堺の伝統産業企業が出展
原材料費や人件費が高騰し、製造業のコストは増加している。だが中小や小規模事業者は「買ってもらっているので強気に出られない」「交渉の仕方が分からない」など、取引先の大手への価格交渉に苦心している。
堺会議所はすでに特別相談窓口を設置し、伴走型で企業の価格転嫁対策を支援している。
24年度は、発注元企業と交渉する際のこつや手法を解説する目的で、中小に向けた価格交渉に関するセミナーを6月に実施。ゼロプラス(兵庫県伊丹市)の大場正樹社長を講師に迎え、中小製造業が値上げを実現するため、価格交渉の準備や具体的な交渉術などを解説。価格転嫁に苦しむ中小経営者などが参加した。
25年1月にも中小企業診断士を講師に招いた価格交渉のセミナーを実施する。原価計算の基礎知識や値上げ金額の計算方法などを学びながら、デモンストレーション形式で価格交渉のグループワークを実施する。