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ロボット技術
産業界が直面する大きな課題の一つが、労働力不足への対応だ。社会の急速な高齢化に伴う生産人口の減少によって、働き手を十分に確保できない状況が急速に広がっている。生産の自動化・省力化、生産性向上は喫緊の課題である。ITの高度活用によるデジタル変革(DX)が急がれており、ロボット導入拡大への期待がこれまで以上に高まっている。産業用ロボットは問題解決への大きな役割を果たそうと、速さ、正確さ、制御の柔軟さなどを進化させている。
全体を見渡す構築重要
産業用ロボットは、作業者がヒュームや揮発性有機化合物(VOC)にさらされる溶接や塗装、機械加工の省力化・連続・無人稼働に対応するロード・アンロード、チップ化が進み手作業では難しい電子部品実装、人の出入りを最小限度に抑制する必要があるクリーンルーム内作業などで活用されている。構内物流でのマテリアルハンドリングもロボットの主要な用途だ。
ユーザーの業種では自動車や半導体、電子機器業界などが早くから導入が進められてきた。それらに加え、今後は物流、食品、医薬分野などへの導入拡大が見込まれている。
ロボット活用の目的はまず、連続・繰り返し作業や、苦渋作業からの解放から始まった。高齢化が進み、人手不足が深刻化するいま、省人化・自動化ニーズは高まる一方だ。
単に「人から機械へ」と置き換えを図るのではなく、人とロボットが同じ空間で作業する協働ロボットの導入も広がっている。さまざまなセンシング技術、機械制御技術とともに、人工知能(AI)を活用し、ロボットによる自動化と生産性の向上が加速している。
生産現場で活躍する産業用ロボットばかりでなく、介護・福祉、インフラ・災害対応、教育、飲食業などサービスロボットも社会に浸透し始めている。多様な応用が提案されているドローンは急速に拡大することが確実視されている。
産業用ロボットは多様なパーツで構成される。リンクとジョイント(関節)からなるアーム、アームを動かすためのモーター、アクチュエーター、減速機、エンコーダー、伝導機構といった要素が不可欠となる。ロボットの使用環境に応じて、防塵性能や防水性能、防爆対策、洗浄・殺菌対策などが必要とされる。
ユーザーの目的を満足させるためにどのような仕様とし、エフェクター(先端ツールやハンド)をどのように制御するか。一つのロボットユニットだけでなく、工程全体を見渡して、いかに効率よく、効果的にシステムを運用するか。これを実現することがロボットシステムを構築するロボットシステムインテグレーター(SIer)の役割だ。今後、これまでなかったようなロボットシステムの導入ニーズは増える一方だろう。SIerの活躍が期待される。
活発化するロボット開発
この7月に発表となった第54回機械工業デザイン賞IDEAの受賞製品を見ても、ロボット製品の開発が活発化している状況を反映していると言える。同表彰事業は工作機械や電気・電子機械などだけでなく、建設機械、食品機械、福祉機器など、広く生産財が対象。製品の品質や経済性・市場性、人間工学的な面からの安全性や環境、福祉への対応などについて、総合的に評価する。
ロボットも主要な対象分野であり、日本のロボット産業をとりまとめる日本ロボット工業会も表彰事業に参画している。今回は受賞17製品中5件がロボット関連製品だったが、これは例年になく多い。受賞5製品はそれぞれ用途や方向性は異なるが、それだけにロボット技術への期待が広範にわたることを示している。
最優秀賞(経済産業大臣賞)のJUKI「高速フレキシブルマウンタ LX-8」は、高速性能追求型と汎用性の高いタイプの完全独立した2種類のヘッドを搭載し、超リアルタイム生産を実現する。
日本工作機械工業会賞のオークマ「ものづくり現場の人手不足を解決する移動式ロボット加工セル OMRシリーズ」は、オペレーターが簡単に安心して使いこなせる操作性を備えた可搬性のある協働ロボット。
日本ロボット工業会賞の川崎重工業「屋内配送用サービスロボットFORRO」はマーカーの敷設が不要な自律走行機能を搭載した自動配送サービスロボット。病院内での適用を展開例として開発された。
審査委員会特別賞の芝浦機械「双腕協働ロボットRIDRSシリーズ(H)」は、作業の多様化に対応可能な機能拡張を視野に入れ、片腕7軸・両腕で14軸に加え、腰の旋回・揺動2軸の全16軸の自由度を有している。
同じく審査委員会特別賞の安川電機「自動車内板塗装ブースの簡素化と省エネに貢献するドアオープナー MOTOMAN-MPO10L」は内板塗装工程において、搬送コンベヤーに追走する走行装置を使わず、工程を完全自動化する。
9月にJapan Robot Weekを開催
日本ロボット工業会と日刊工業新聞社は「人とロボットが共生する社会へ」をテーマに、「Japan Robot Week 2024」を開催する。リアル展は9月18-20日、東京・有明の東京ビッグサイト東展示棟で実施。入場料1000円(入場登録者、招待状持参者、中学生以下は無料)。またオンライン展を9月11-27日に開設。入場無料・登録制。詳細は公式ホームページ(https://biz.nikkan.co.jp/eve/s-robot/)へ。
Japan Robot Weekは2012年に初開催。世界最大級のロボットトレードショー「国際ロボット展」の翌年に開催するロボット専門展示会として、隔年で開催し、今年で7回目となる。産業用やサービスロボット、ロボットSIerを中核に、近年の広範なロボットニーズに対応する専門展示会だ。今回は22年を上回る176社・309小間(8月23日時点)の出展規模となる。
なお、「2025国際ロボット展」は25年12月上旬、東京ビッグサイトでの開催を予定している。