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安定化電源&電子負荷
安定化電源や電子負荷はエレクトロニクス産業を支える重要な電子測定器の一つ。研究開発や生産、産業機器の組み込み用途など多彩な分野で使われている。自動車や車載関連に加え、消費電力が増大化するAI(人工知能)関連のほか、宇宙ビジネスや航空機などの市場を創出している。
回生機能搭載—脱炭素に貢献
計測評価/AI普及—大容量化加速
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安定化電源&電子負荷の需要は増加傾向(菊水電子工業ブース=自動車・車載の展示会=25年横浜市)
安定化電源や電子負荷は直流と交流のモデルがある。主要メーカーは、安定化電源と電子負荷を1台に集約した「双方向安定化電源」や、規定の電力範囲内で任意に電圧と電流の出力を設定できるワイドレンジとも呼ばれる「可変直流電源」の投入に加え、交流電源でありながら直流の電圧を出力できる「交流/直流電源」など、顧客ニーズを先取りした製品投入や測定サービスを展開している。
AIの普及に伴い、データ通信量増加の課題やサーバーの処理速度の要求が高まっている。並行して消費電力が急激に増大。AIサーバーだけでなくデータセンターを評価する安定化電源や電子負荷の容量は大容量化が求められ、需要は継続して増加傾向にある。
菊水電子工業によると、AIサーバーは従来のサーバーに比べデータ処理量が大幅に増加したことで大容量の電力需要に対応する必要がある。AIサーバーは、中央演算処理装置(CPU)に加えて画像処理用半導体(GPU)を搭載しており、消費電力は数十キロ—数百キロワットになり、入力電力の急激な変化に対して、どれだけ迅速に対応できるかが重要になる。こうした中、同社は消費電力の飛躍的な増加に向けたサーバー用電源などの試験に同社の安定化電源と電子負荷大容量製品の引き合いが増加しているという。
計測機器商社の国華電機(大阪市北区)の2025年の安定化電源の需要は、直流においてAIサーバー、交流が空調関連やパワーコンディショナーの引き合いが活発化し前年比5%増となった。電子負荷ではAIサーバーのほか、建機・農機などの電子化によるモビリティー関連がけん引し、前年比50%増となった。
穂高電子(横浜市港北区)は大容量化・高電圧化のニーズは継続するとし、26年以降も増加傾向になると予測する。
テレビなどの家電製品は直流と呼ばれる電力で駆動する。家電製品はコンセントから交流の電力(商用電源)を受け、機器内部で直流に変換。直流安定化電源は商用電源を、直流の電気に変換してエネルギーを発生させる。商用電源では電圧不足やノイズの混ざりがあると、正しい測定結果が得られない。交流安定化電源は周波数や電圧など安定させた交流電力を発生させることができる。
電子負荷は電流や電圧を自由に変え、多様な負荷を与えて試験が行える。大容量化する安定化電源や電子負荷において回生機能の搭載が進んでいる。
この機能は電子負荷などが受け取ったエネルギーを商用の電力に変換し、工場など構内の照明や冷暖房用のエネルギーとして利用できる。省エネルギー化や二酸化炭素(CO2)排出抑制に貢献する。一方、この回生機能未搭載の電子負荷では、エネルギーを熱変換して放出するためエネルギーロスが大きい。エネルギー消費を意識して回生機能を求める声は高まっている。
双方向直流電源は直流電源と直流電子負荷を組み合わせた測定器。これまでは個別に用意し、システムに組む必要があった。
こうした中、カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けて電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などの電動車(xEV)開発に加え、インバーターやパワーコンディショナー、DC/DCコンバーター(直流昇・降圧変換部品)、オンボードチャージャー(OBC)など電力変換機器の開発、リチウムイオン電池(LiB)の評価など省エネに関する需要にけん引され、安定化電源や電子負荷のニーズは高まっている。
車載用堅調、航空機向け創出
主要メーカーはユーザー要望に対応。自動車・車載だけでなく、宇宙ビジネスや航空機関連など新市場を創出している。
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ペロブスカイト太陽電池など新市場からの引き合いが高まるテクシオ・テクノロジー(エネルギーに関する展示会=東京・有明) -
クロマジャパンは自動車・車載の展示会で小型・大容量の双方向電源を紹介
菊水電子工業は交流/直流電源において、回生電子負荷機能などが追加できる工場オプションを提案している。OBCやインバーターの設計・開発ニーズを取り込んでいる。
テクシオ・テクノロジーの24年は生産向けの小・中容量の直流安定化電源が米国関税規制の影響で足踏み感が見られたという。一方で24年末に投入した新製品がモビリティーを中心としたパワーエレクトロニクス開発で売り上げをけん引した。人工衛星などの宇宙ビジネス市場では、ペロブスカイト太陽電池といったパワエレ開発分野で浸透し、この新規市場で実績を伸ばしはじめている。
クロマジャパンはAIサーバーの需要は旺盛で、安定化電源や電子負荷はキャパシターや蓄電池の開発も引き合いが高い。またEVやLiBの開発は投資が縮小しても進んでいる。小型大容量の双方向直流電源に加え、当社の強みの一つである自動測定を生かして、日本独自の急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」や米テスラの充電規格のほか、欧・米・中国の急速充電規格の評価試験を訴求する。
計測技術研究所(KG)は電子負荷に搭載された「まるで電子抵抗 電子負荷の高速電流応答技術」が川崎CNブランド2024に認定された。こうした中、交流電源では冷凍空調関連向けの大容量交流電源が継続して好調に推移している。航空機の地上用電源として発電機から交流電源のニーズが増加傾向にある。
特に航空機に搭載される電源は地上の商用電源とは異なる400ヘルツの周波数で動作する。これまで発電機などで電力を供給していたが、同社は対応可能なオプションや400ヘルツ出力専用機をそろえている。
リチウム電池 製造設備で共同事業体/建屋・生産装置・システム一体で設計・開発
電池サプライチェーン協議会(BASC)に加盟する日立製作所や西部技研、ジェイテクトなど9社は、蓄電池製造設備産業の強化に向けて、共同事業体「スイフトファブエナジーシステムズ」(東京都港区)を26年4月に設立する。設計から生産までの全体プロセスを最適化し、時間とコストの削減を目指す。事業総額は約180億円を見込み、28年ごろにモデルとなる設備の完成を予定する。
車載用や定置用LiBの製造装置・ラインの開発・設計・販売・運用支援を事業内容とする。成果はBASC約250社の会員企業にも情報を共有する。
国内安定供給体制の強化および蓄電池産業戦略の実現に貢献すべく、さまざまな分野のBASC会員企業が参画し、それぞれの強みを結集・連携して産業横断型の製造プラットフォーム構築を推進するという業界初の先進モデル。企業単独の最適化ではなく、産業界全体の全体最適で基盤を築く。この事業では、建屋・設備・生産装置・システムを一体で設計・開発し、蓄電池製造ラインとして統合したソリューションを共同で構築・展開することで、圧倒的な短期間・低コストでありながら、高品質を高次元で両立できる電池製造拠点の提供実現を目指す。

