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粉体技術
粉体技術は粉砕や分級・ふるい分け、計量・計測、造粒・粒子設計など、多くの単位プロセスから構成され、幅広い産業分野の進展を支えている。そのため、"産業の米"とも称される存在となり、食品や医薬品など日常生活で活用される製品のほか、最近では省エネルギーや脱炭素社会実現にも深く関わるなど、従来にも増して注目度は高まっている。これに伴って技術・研究開発も日々続けられており、今後のさらなる進展が期待されている。
第3期中期計画仕上げの年
分科会活動活性化など 重点5項目遂行
24年度事業計画
24年度前半は若干の停滞感が残る一方で、今春の実質賃金上昇の効果や物価上昇の鈍化などで個人消費や設備投資などが緩やかながら増加するとの見方があり、景況感の改善につながるとの期待感がある半面、急激な円安の進行など不確実性要素が散見されるだけに、予断を許さない状況にあるといえる。
こうした中、牧野尚夫会長に代わり角井寿雄副会長が新たに会長に就任、新体制がスタートした。24年度は22年度を開始年度とする「第3期中期運営計画」の最終年度にあたり、同計画に掲げる①分科会活動の活性化②POWTEXのさらなる進化③広報の改革④国際化の推進⑤組織の強化뗙の重点5項目の遂行を中心に事業活動を展開する。
活動の中核を担う分科会活動は、産学官が協力し産業界に貢献できる活動を推進する。23年度に粉体ハンドリングと輸送の両分科会が併合したことで20分科会体制となった。分科会を所管する分科会運営委員会は将来に向けての発展につながるよう、組織や運営の充実を支援していく。
技術委員会関連では、活動開始から4年目に入るAI技術利用委員会はこれまでと同様に「粉体プロセスとデータサイエンス」をテーマに議論を継続するとともに、収集した情報や成果をPOWTEXでの「AI技術利用セミナー」で発信する。さらに委員を対象に開催する「AIソフトウェア実習講座」を広く会員企業に浸透させることで、企業内での活用や人材育成の機会提供を促す。
広報・普及関連事業では月刊誌「粉体技術」での多彩な特集や企画記事をベースに技術啓発や広報を進める。一般購読者にも事業や活動の認知度向上にも活用する。ホームページは50周年事業の一環として大幅改善が進んだが、この継続とともに、メールマガジンの刷新にも着手する。
人材育成・教育事業関連では、粉体入門セミナー(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)のほか、粉体技術者養成講座7講座、粉じん爆発・火災安全研修(初級=基礎編および中級=技術編)の開講を予定している。
規格・標準化事業関連では、標準粉体委員会が4部構成のJIS(日本産業規格)原案骨子の作成に取り組むほか、ガラスビーズ(MBP1-10、GBL)の供給体制に関する検討を継続する。さらにJIS試験用粉体(JIS Z 8901)の粒子径分布測定規格を沈降法からレーザー回折法への置き換えが可能かについて問題点などを検討する。
規格委員会は協会規格とJISの定期見直しを続ける一方、3件の継続案件は規格協会にJIS原案を提出する。また新たに3件のJIS原案作成委員会を立ち上げる。規格・標準化の広報・啓発に向け、新規制定規格を紹介するセミナーの開催も予定する。
粒子特性評価委員会と集じん技術委員会は、ともに3件の規格開発プロジェクトを経済産業省の委託事業として契約締結した。粒子特性評価委員会は粒子特性評価の測定解析手順の確定に向け、集じん技術委員会はバグフィルターろ過材や空気およびその他ガス清浄装置試験方法確定に向け、それぞれISO規格開発活動を進める。
ふるい委員会では試験用ふるいや工業用ふるいを用いた粒子のふるい分け検査測定手順確定へのISO規格開発活動を行う。粉じん爆発委員会は、初級、中級の研修に加え、POWTEX2024で情報セミナーを計画する。
海外交流事業は、韓国の「KOREA CHEM」「A-Powder Tech」、中国・上海の「IPB」に交換ブース出展や入会促進活動などを展開する。POWTEX2024では海外情報セミナーも計画する。
協会収益の一端を担う標準粉体製造頒布事業は、今期の売り上げ計画をコロナ禍以前の水準に設定した。また新たな受発注販売システムを導入、各産業界の発展に貢献できるよう、客先サービス向上や業務効率化につなげる。
POWTEX2024 11月27-29日開催
こうしたさまざまな事業活動に加え、本年度は11月27-29日の3日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで「POWTEX2024(国際粉体工業展東京)」を開く。東京では通算25回目の開催となる。今回は300社・団体、1100小間の出展規模を予定する。23年のPOWTEX2023に引き続き、オンライン展(会期=11月11日-12月26日)を併設、リアルとオンラインのハイブリッド展示会となる。
最新の粉体機器・装置やエンジニアリング、情報などが一堂に会するほか、併催企画も充実。23年に好評を博した「PXステーション」が設けられ、テーマに基づき、来場者、出展者、主催者の交流型イベントとして展開される。
そのほか、先端材料と粉体シミュレーションの二つの特別展示ゾーンの設置に加え、最新情報フォーラムをPXフォーラムとして模様替えするほか、各種セミナーなども開かれる。さらにユーチューバーのものづくり太郎氏による特別企画も予定されるなど、盛りだくさんな内容になっている。
開催までに東京粉体工業展委員会を中心にさらなる内容の検討や準備が進められることになっており、その成果が期待されるとともに、大いに盛り上がりを見せそうだ。
24年度協会活動を語る 対話を通じて連携深める
第13代目の会長として就任した。これまで粉体や粉体技術を活用した最終製品を消費者に提供する立場で業務に携わってきただけに、従来と違う視点を持って協会運営に当たりたいと考えている。
当協会は、法人企業中心の工業会とは異なり、法人企業と高度な専門技術を持つ個人会員から構成されており、この多様性を活かしたさまざまな「場の提供」も大きな役割となる。技術を含めた情報や教育、議論の場に加え、毎年秋に開催する展示会も場の提供だが、これ以外も充実させたい。
1971年に粉体工業懇話会として発足後、約10年で現在のスタイルの基礎ができ、それをベースに時代背景や経済環境などに応じ変化を加えてきた。2021年に設立50周年を迎え、次の50年の成長・発展を考えたとき、これまでの技術面での取り組みだけではなく、「ビジネスサロン」的な出会いの場が必要と考える。最近はベンチャー企業の入会も相次ぎ、そうした企業が成長し今後の協会を担う存在になってもらいたい。それには出会いの場は欠かせない。
その実現に向けベンチャー企業だけではなく、大手や中堅企業の会員と"対話"を深めたい。対話通じ会員間の連携を図り、新たなものを生み出すアプローチにつながれば、協会活性化のきっかけになるとともに入会のメリットになる。
24年度は第3期「中期運営計画」の仕上げの年になる。第1期から9年にわたり、五つの重点項目を掲げ運営に当たっている。振り返れば、分科会はこの間、粒子積層技術やバイオ粒子プロセスなど新たな分科会に加え、AI技術利用委員会も発足した。50周年記念事業を遂行し国際粉体工業展も「POWTEX」として進化させた。ホームページもリニューアルし、標準粉体購入をシステム化するなど、分科会の活性化や展示会の新たな展開、広報改革は成果が出ている。
国際化の推進と組織強化についても、キーマンの方々と対話をしたい。今や各企業が独自に国際化を進めており、協会の役割は海外展示会でのブース交換や分科会での学術的な海外交流が中心へと変化してきている。今後は海外交流委員会と連携して、新たな切り口を見いだせるように挑戦してみたい。
昨今、内部統制やコンプライアンスをキーワードとした組織の運営強化が課題となっている。当協会も、よりシンプルで分かりやすい組織への議論を進める良い機会かもしれない。会員数は堅調に推移するが、女性や若手の活躍が十分ではないことは否めない。ダイバーシティーの観点が欠かせなくなっている今、そうした層が活躍できる場の提供、雰囲気の醸成を積極的に行いたいと考えている。
その上で24年度は中期運営計画の達成に精力的に取り組み、25年度からの次期中期運営計画の策定・運用の検討に入る。重点項目の大筋は変わらないが、そこに新たな軸を組み込めればと考える。今のスタイルを生かしつつ、トライしたい。
11月には「POWTEX2024」の開催も控える。POWTEXとなって2回目だが、製品展示に加え併催企画なども盛りだくさんで内容も充実している。人と技術と情報の出会いの場として、出展者だけではなく来場者にも大いに活用してもらえると思う。新たな試みに期待するとともに、今から反応が楽しみだ。