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粉体技術
粉体技術は粉砕や分級・ふるい分け、計量・計測、造粒・粒子設計など、多くの単位プロセスから構成され、幅広い産業分野の進展を支えている。そのため、"産業の米"とも称される存在となり、食品や医薬品など日常生活で活用される製品のほか、最近では省エネルギーや脱炭素社会実現にも深く関わるなど、従来にも増して注目度は高まっている。これに伴って技術・研究開発も日々続けられており、今後のさらなる進展が期待されている。
幅広い分野の進展に深く関わる〝産業の米〟 粉体技術
全固体電池実用化のカギ
粉体技術活用のトレンドとして、まず次世代電池製造分野が挙げられる。中でも軽量・コンパクトで安全性に優れる全固体電池の実用化のカギを握る。全固体電池は電解質が固体化されたものであるため、表面改質技術を用いて微小粒子を電解質表面にコーティングすることで優れた界面生成につなげるほか、導電性の高い材料開発にも粉体技術が大きな役割を果たすことになる。
医薬品製剤の連続生産研究も注目される。これまでのバッチ生産方式から、リアルタイム計測技術や分析手法、関連機器や装置の進展を背景に設備の省スペース化や製造コスト削減を可能にしている。プロセス分析技術を組み込んだ開発手法の活用で製品の高品質化の追求も進む。こうした新たな取り組みは製剤分野にとどまらず、他の生産プロセスでの活用も可能とみられる。
このほか、粉体プロセスで扱う粒子サイズの微小化と相まって、粒子の的確な活用につながる粒子挙動の把握や解明が重要になっている。
これに対応するため、シミュレーション技術や人工知能(AI)、マテリアルインフォマティクス(MI)の利活用も本格化の動きを見せている。
コンピューターやソフトウエアの進展、充実などがこれを支えており、特にシミュレーションは精度向上が著しい。またAIについても、粒子挙動などの把握・解明にとどまらず、装置設計・開発などへの活用を視野に理解を深める取り組みも進んでいる。これは粉粒体の機能向上や複合化、新素材・新材料開発の効率化を促すことにつながるだけに、今後の動きから目が離せなくなっている。
日本粉体工業技術協会-展示会名「POWTEX」に
日本粉体工業技術協会(京都市下京区)は5月28日、第43回定時総会を開き、2023年度の事業および決算報告、24年度の事業計画ならびに予算案を決議した。24年度は22年度からスタートした「第3期中期運営計画」の最終年で仕上げの年に当たるだけに、同計画に掲げる重点項目の達成を柱に各種の事業を展開、さらなる成長・発展を目指す。
23年度事業活動
23年度は新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことを受け、さまざまな活動が平時の姿に戻りつつある一方、GDP成長率のマイナス成長や個人消費・設備投資などの減少など、厳しい状況が見え隠れしたことが特徴だった。主な事業活動は以下の通り。
同協会活動の柱の一つである展示会は大阪開催年で、23年10月13-15日の3日間、大阪市住之江区のインテックス大阪で開いた。今回から展示会名を「POWTEX」と改称、「POWTEX2023(国際粉体工業展大阪2023)」として新たなスタートを切った。開催規模は172社・団体、515小間と前回を上回ったほか、今回も前回に続きオンライン展を併設した"ハイブリッド型展示会"として行った結果、来場者もリアル展とオンライン展併せて約1万1000人を超えるなど、盛況さがうかがえた。
「未来をつくるPX(Powder-Technology Transformation)」をテーマに掲げ、初の試みとして会場内に「PXステーション」を設け、粉体技術を分かりやすく発信するとともに、PXフォーラムなど多彩な併催企画を通じ、展示会の新たなスタイル確立への足場を築いた。
もう一つの柱である分科会も単位操作・常置型14、目的指向・プロジェクト型7の計21分科会が、合同11回を含む延べ53回の本会合を開催、活発に展開した。開催回数こそ前年度から微減となったものの合同分科会は倍増した。幹事会の議論を基に現地型分科会として、趣向を凝らした見学会や講演会を実施、参加者は1600人を数えた。海外での分科会は、晶析、微粒子ナノテクノロジー、粒子加工技術、粉体シミュレーション技術利用の4分科会が合同で、粉体・ナノテクノロジー国際フォーラム「IPNF2023」を開いた。
教育部門は、単位操作・常置型分科会が中心に粉体技術者養成講座を6回開き、専門講座は晶析分科会が企画した「晶析操作に関わる先端技術」が実施された。各種委員会活動では、AI技術利用委員会が2回の委員会を行い、「粉体プロセスとデータサイエンス」をテーマとした講演を通じ、AI技術の活用例を議論した。同委員会はPOWTEX2023でもセミナーを行い、約100人が聴講するなど関心の高さを示した。
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