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堺商工会議所
2025年大阪・関西万博が大盛況のうちに10月13日閉幕した。堺市の多くの企業が参加し、国内外に自社の技術や取り組みをアピール。ここでの経験を生かし、地域の発展につなげる。堺商工会議所(葛村和正会頭)は地域の中小企業や小規模事業者の支援を通じ、堺市に関わるステークホルダーを“つなぐ”役割を果たしてきた。万博での体験を生かし産学官連携で街全体の発展を目指す。
会頭に聞く
地域企業の持続的な発展支援
堺商工会議所の葛村和正会頭(ダイネツ会長)に、堺市産業の今後の展望を聞いた。
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堺商工会議所 葛村 和正 会頭
—国内でのビジネス環境をどう捉えていますか。
「中小企業や小規模事業者と大手企業との格差が広がっている。国の施策で円安になり大手の輸出企業が潤ったが、その利益を中小に還元できていない。また企業の人材不足は深刻で、最近では大手が中小の30—40代の中堅社員を中途採用で引き抜いている。こうしたことが続けば、中小はあと5—10年でやっていけなくなるだろう。またエネルギーコストの上昇を価格転嫁できないケースもある。中小と大手との格差を是正するために、中小の要望をまとめ、国に伝えることが商工会議所の大きな役割だ。堺市と連携し、中小の賃金上昇の補助などを国に要望していきたい」
万博レガシー、堺旧港が重要な観光資源
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万博会場の夢洲への海上交通を担った堺旧港を重要な観光資源に位置づける -
古墳を見渡せる気球は堺の新たなシンボルとなる
—2025年大阪・関西万博が閉幕しました。万博のレガシー(遺産)へのお考えは。
「ハード面においては、万博会場の夢洲(大阪市此花区)への船のアクセスで堺旧港(堺市堺区)の有用性が実証できた。堺旧港でのクルーズなども観光資源として重要になるだろう。30年の統合型リゾート(IR)開業に向け、堺旧港をもっと活用するべきだ。今後、堺旧港の一部にカフェや常設の屋台村などができる予定。大仙公園(同堺区)での気球事業や堺旧港などを地域の重要な観光資源に位置づけ、堺会議所として支援したい」
—ソフト面のレガシーは。
「万博開催時にいろいろな場所で『とにかく万博に行ってほしい』と言い続けてきた。閉幕直前の1カ月間には多くの子どもたちが訪れ喜んでくれたと思う。万博に行けば子どもの心に感動は残るだろう。私が子どもだった1970年の大阪万博の記憶はまだ残っている。大人が働きかけなくても、子どもが自分で考えるきっかけになると思う」
「また堺市の企業が万博後に次のステップをどのように踏んでいくかが大切。万博に出展した堺市の企業などとの交流会を開催したところ121人が参加した。参加企業の勢いを感じる。万博を通じて、一つにまとまれたのが一番大きいレガシーだと思う」
—万博では海外との交流も盛んに行われました。
「来日した人々が日本の良さを広報・宣伝してくれた。8月に夢洲と大阪中心部をつなぐ地下鉄の運転が見合わせになった際、多くの来場者が万博会場に閉じ込められた。だがチェコ館をはじめ多くの国が自国のパビリオンを開放し、来場者を助けた。海外で同様のことがあれば大変な事態になる。だが今回、大きな混乱は起きず、その事実が広がることで日本は海外から高い評価を受けた。また各国のパビリオンでの打ち上げパーティーでは海外の担当者と日本人スタッフがとても仲良くなっていた。外国人が日本の良さを感じてくれている。ソフト面の交流で、万博に来た外国人は日本のリピーターになってくれる」
外国人材採用も後押し
—市内でオープンファクトリー(OF)に参加する企業が増えています。
「25年度はOFを万博会場でも実施した。OFを通じて、一般の人は今まで知らなかった企業の取り組みを知ることができる。日本経済を支える加工業の存在を再認識してもらえるだろう。こうした取り組みは中小の人材確保にもつながる。商工会議所として全面的にこうした取り組みを支援したい」
—国内で廃業が相次いでいます。事業承継についてのお考えは。
「企業にとって事業承継は重要な課題。どうやったら企業を続けていけるか。5—10人の社員の事業者で、30—40代のエース社員の引き抜きや、エネルギーコストの上昇などが続けば経営者は会社を続ける意欲がなくなる。そんな社長の苦労を子どもが見ていたら跡を継ぎたいとは思わないだろう。また社会で活躍する女性を増やすことも重要な課題だ。女性経営者が増えてきたが、まだ少ない。中堅クラスで社内の女性の割合を増やすことも必要になる。商工会議所として課題解決のために取り組みたい」
—外国人人材の活用についてのお考えは。
「日本は少子高齢化が進み、労働人口が減る。施策として外国人材の活用は必要不可欠。外国人材を中堅以下の正社員として雇用し、管理職に育てることが必要だ。堺会議所では24年度から外国人留学生が学ぶ日本語学校の担当者と中小との情報交換の場を設け、人材マッチングのきっかけをつくっている。今後、こうした取り組みを強化したい」
—地域を盛り上げるため創業支援も重要です。スタートアップの支援のあり方についてはいかがですか。
「創業前の支援だけでなく創業直後の支援にも力を入れる。創業者がビジネスでの障害にぶつかった場合、相談する人がいなければ事業をやめるかもしれない。同じような仲間がいる交流会を開催し、新人の経営者の挫折を防ぐ。SNSなどを通じた伴走型支援も積極的に実施したい」
