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堺商工会議所
2025年大阪・関西万博が大盛況のうちに10月13日閉幕した。堺市の多くの企業が参加し、国内外に自社の技術や取り組みをアピール。ここでの経験を生かし、地域の発展につなげる。堺商工会議所(葛村和正会頭)は地域の中小企業や小規模事業者の支援を通じ、堺市に関わるステークホルダーを“つなぐ”役割を果たしてきた。万博での体験を生かし産学官連携で街全体の発展を目指す。
オープンファクトリーで魅力発信
26社が公開イベント/工場見学や体験実施
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地域企業の発展を支える堺商工会議所 -
万博のリボーンチャレンジでは堺市の中小も多く出展した(写真は大阪ヘルスケアパビリオン) -
万博の出展企業の交流会では堺市企業の経営者など121人が参加し、参加者は熱心に耳を傾けていた -
海外からの工場見学を受け入れる取り組みは今後産業観光の重要コンテンツになると期待される(小泉製作所提供)
堺商工会議所は22年度から大阪府八尾市を中心とする地域一体型オープンファクトリー(OF)「ファクトリズム」と連携し、堺市内企業のOFの取り組みを支援している。25年度のOFは10月23—26日に開催され、堺市を中心とする堺市域で26社が工場見学や体験などのイベントを実施した。ファクトリズムの南エリア支部長を務める河辺商会(堺市西区)の福田康一社長は「万博出展のために長い期間準備してきた。万博に関わる中小には“モノがたり”がある。OFで我々の熱量を伝えたい」と強調する。OFを通じた連携の輪が広がる。
従来の秋開催のOFに先駆け、25年度は万博でOFイベントを実施。7月の大阪ウィークでは河辺商会や小泉製作所(同堺区)、シャープ化学工業(同西区)、常磐精工(同北区)が万博会場でワークショップを行い、堺の魅力を発信した。
堺会議所は22年度の開催からファクトリズムに参画する堺市域の企業に伴走支援を実施。「さかいオープンファクトリー推進事業」として、堺市でのOFの普及と啓発活動を実施している。
万博のレガシー(遺産)を生かす取り組みがすでに動き始めている。堺会議所は6日、万博に出展した企業との交流会を実施。万博での中小の出展枠である「リボーンチャレンジ」に出展した中村超硬や東洋水産機械(同中区)など88社、121人が参加した。
その成果報告会で、万博のOFイベントに参加した小泉製作所の小泉達哉社長は「OFで自分たちのファンをつくることは重要」と強調。また万博期間中に海外からの多くの見学者を自社工場に受け入れた際の体験を語った。「通訳がいない状態で『どうなることか』と思っていたが、見学者と社員がスマートフォンの翻訳機能を駆使して交流していた」と、海外の訪問者とのエピソードに終始笑顔だった。万博を契機に産業観光の取り組みが進むかもしれない。
万博を一過性のお祭りとして終わらせるのではなく、次につなげる取り組みが必要だ。堺会議所の担当者は「企業の技術を知ることで堺会議所が手伝えることも増える。万博で作った技術をうまく生かせば地域を活性化できる」と狙いを明かす。堺会議所は企業同士をつなぐ機能を強化していく。
メイドインさかいフェア開催
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メイドインさかいフェアでの包丁の研ぎ直しは来場者に人気のコンテンツ
堺会議所は8、9日の両日、堺会議所や堺市産業振興センターイベントホール(堺市北区)の周辺で「メイドインさかいフェア」を開いた。優れた技術やサービスを持つ企業を認証する地域ブランド「堺技衆」の企業や、包丁の研ぎ直しなどの伝統産業、万博出展企業のポスター展示など、堺産業の魅力を発信した。
またイベントホールでは、さかい逸品発掘市など地元企業販売ブースを構えた。地元の産品を多くの消費者に知ってもらう機会を創出。2日間で家族連れなど約1万4000人が訪れた。
さまざまな支援で地域企業を底上げ
堺会議所では創業や税務、労務管理などの相談窓口を設置。中小企業診断士や税理士、弁護士などの専門家と無料で相談できる。また価格転嫁や交渉の準備、資金繰りの支援も実施。事業承継についてコーディネーターの助言が受けられる仕組みも整えている。
また商工会議所の経営指導を前提とする日本政策金融公庫の小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)の融資数は増加傾向にあり、25年4—9月の実績は24年同月比77・9%増の185件で、すでに24年度の年間実績値にほぼ到達。さらに販路開拓や業務効率化に向けた経費の一部を国が補助する「小規模事業者持続化補助金」は25年度で前年度比3・8倍の210件に達している。
中小・小規模事業者は地域の生産に貢献するとともに、地域のコミュニケーションに参加している。「事業者の底上げは街のにぎわいに必要で、小規模事業者持続化補助金などに基づく資金が必要になる」(堺会議所)。今後、堺会議所とあまり縁がなかった事業者にも融資や補助金に関する説明機会を増やし、地域の活性化につなげる努力を続ける。
また各種セミナーも充実させている。世界中で注目されている生成AI(人工知能)の一種「チャットGPT」に関するセミナーは24年から開催している。
また12月13日には堺会議所で創業者交流会を開催し、創業時の悩み事に関するQ&Aやグループワークなどを実施する。
