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新潟県長岡市特集2025
新潟県長岡市は中越地域に位置する県内2位の人口を有する都市。毎年8月2~3日に開催される日本三大花火大会「長岡花火」には多くの地元製造業が協費し、打ち上げ前に社名を読み上げられているなど、地域に対する企業の想いは熱い。市内には4つの大学と1つの高専が立地し、産学連携の動きも活発だ。2025年に市内でおきた、モノづくり産業にまつわる動向をまとめた。
新産業の創出へ、気運高まる
長岡高専×地元企業 キャリア教育で企業訪問
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システムスクエア本社のバックオフィスや工場内などを見学した
多くの企業が理系人材の採用に苦戦する中、中小企業は大手に比べ知名度の点でさらに不利になることも多い。一方、教育機関においては、学生が自身の進路についてより主体的に考えられるような教育に力を入れ始めた。長岡工業高等専門学校は、新潟県や長岡市、小千谷市と連携し、地元企業を巻き込んだキャリア教育を行っている。
同高専では低学年からのキャリア教育に特徴がある。新設科目の「キャリアデザイン」では産業界の動向を学んで高専と社会の繋がりを理解し、「アントレプレナーシップ基礎」ではビジネスに関する知識を学んでビジネスプランニングに取り組む。キャリア教育の重要なイベントとして、3年生全員が参加する「工場見学」がある。早い段階から学生と地元企業の関わりをつくることで、生徒が自身のキャリアに意識を向けるよう働きかけている。
9月22日、長岡高専3年生の200人あまりは、新潟県長岡市と小千谷市の企業などを見学した。各学科2グループに分かれ、貸し切りバスを用いて3カ所ずつ回る。一日がかりの大規模なイベントだ。
外山茂浩副校長は「生徒たちは地元企業のことを意外と知らない。見学会で自分が学んでいることが未来でどう役立つのかを知る生徒も多い」という。そして「働いている人たちの姿を見て、将来、自分が働く姿が想像できる」と語る。
見学会実施には新潟県と長岡市、小千谷市も協力している。地元就職支援の一環として、見学先企業の選定は高専の要望を聞きながら自治体が担当。企業の情報をまとめたワークシートの準備、企業訪問時のマナーに関する動画の作成、見学会終了後のアンケートなどの準備も行い、万全の体制を築いている。
見学先の1つで、食品などへの異物検査機器を製造するシステムスクエア(新潟県長岡市)には、電子制御工学科の生徒が訪れた。事業概要の説明を受けたあと、2チームに分かれて社内を見学。同社の本社は2019年に刷新された。新たな社内では畳張りの会議室を設けたり、部門ごとに照明の色を変えたりと、働きやすさや居心地の良さを重視した作りとなっている。機器の説明や、見学後の質疑応答には長岡高専OBの従業員も参加。学生からは、製品についての質問や、入社してから印象的だった仕事についてなどの質問が上がった。学生たちは自身が働く様子を想像しながら見学できたようだ。
システムスクエアの担当者は「毎年興味を持ってもらい、生徒からは質問も沢山もらう。自分の卒業したあとの働き方を想像してもらえているのでは」と考える。工場見学を受け入れる理由については、自社への高専生の就職が叶えば嬉しいとしながらも、「長岡は他県と比べても優位性のある企業が多くある。技術の追求や、新しいモノを生み出せる環境があるのだと知ってもらいたい」と語る。
外山副校長は「高専の5年間は長い。自分が学んでいることが何に役立つのか分からず、中だるみを感じてしまう学生もいる」と指摘し、キャリア教育の重要性を訴える。生徒が納得できる自身のキャリア像を描くことができれば、その実現のために進学するか就職するかどうか、そしてどの会社を就職先に選ぶかを納得して決めることができるだろう。
長岡高専発企業が活躍 新潟初グロース上場スタートアップ支援事業に選定
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FieldWorksの農作業支援ロボット
長岡高専の卒業生による活躍が相次いでいる。
創業者・会長が長岡高専OBのフラーは7月、新潟県に本社を置く企業として初めて東証グロース市場に上場した。高専出身者が社員の2割以上を占め、「高専のフラー」というブランド力を強みに人材採用を強化中。新潟県政の重要課題の一つは若者や女性の県外流出だ。渋谷修太会長は上場時の会見で「『仕事があれば地元に戻ってきたかった』という若者の声を聞く。(新潟県に本社を置くことは)非常に意味がある」と語った。人材の定着の手本となることが期待されている。
長岡高専出身者数名が起業したFieldWorks(新潟県長岡市、山岸開社長)は、農業とデジタル技術を融合して諸課題の解決に取り組む「アグリテック」のスタートアップ。新潟県とにいがた産業創造機構(NICO)、関東経済産業局によるスタートアップ支援事業「J—StartupNIIGATA」にも選定された。
同社が手がけるのはラジコン式の小型農作業支援ロボット。現在のラインアップは畝間の草刈りを行う「ウネカル」と、畝間の薬剤散布を行う「ウネマキ」。作業者の負担軽減や、熟練度の違いによって発生するむらをなくす効果が期待できる。12月初旬に東京都で開かれたロボット見本市「2025国際ロボット展」では、農林水産省ブースに出展。同社の既存のロボットの機能を進化させる、「親子式」と呼ぶ機種をおひろめした。畝間の移動を補助するロボットで、夜間稼働など省人化がさらに進めやすくなる。展示は海外からの来場者の注目も集めていた。山岸社長は「ロボットを沢山の人に見てもらうことで、採用にもつながれば」と語った。
長岡市 35年に製造品出荷額1兆円に
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長岡市
長岡市は2033年度をめどに、市内で生産された物品などの出荷額を指す「製造品出荷額等」を、23年度実績の7124億円から1兆円に引き上げる。2026—35年度の次期総合計画に盛り込む予定。製造品出荷額等の数値は翌々年度に発表されるため、35年度に発表される33年度の数値で1兆円達成を目指す。
製造品出荷額等の数値を上げるには、生産活動を活性化させることはもちろんだが、原材料費やエネルギー価格上昇に伴って適正な値上げが実施されることも重要だ。市の担当者は「物価の上昇に伴って事業者が適切な価格改定を行えるように支援していきたい」と話す。
政策の一つ「強みを生かし未来を見据えたオール長岡による産業振興」では、強みであるバイオマス資源の活用を加速する。同市では既に、産学官金が参加するバイオエコノミーコンソーシアムや、市の運営する生ごみバイオガス発電センターなど、バイオ資源を活用するための土壌は整いつつある。バイオ資源を活用した新事業創出支援として、総合計画期間内に30件の支援事業を行うことを重要業績評価指標(KPI)に設定した。長岡市バイオ革新的ものづくり創出補助金などを積極的に活用する方針。
政策「誰もがキャリアを活かしいきいきと働くための人への投資と産業集積の創造」では、起業支援プログラムに基づき事業構想から企業成長までの一貫した起業・創業支援を行う。国は6月、第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市の「NEXTグローバル拠点都市」に新潟県と長野県のコンソーシアムを選定。起業家や投資家、企業、行政、教育機関などがつながりイノベーションを創出していく都市を目指すもので、同市もこれに参画した。起業支援センターの支援による起業件数実績は、14—24年度で303件。次期総合計画でも着実に進め、総合計画期間内に起業実績400件を達成する計画だ。
