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金型の日
11月25日は「金型の日」。日本金型工業会は金型工業の認識を深めるとともに、今後の金型業界の発展を目的として、工業会の創立記念日を「金型の日」と定め、例年記念式典を実施している。52回目となる今回の式典は、25日14時から名古屋市中区のANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋で開催される。
自動車の軽量化ニーズに照準
職人の暗黙知—AIで再現
金型は「産業のマザーツール」と呼ばれる。金型を製作すれば同じ品質のものを安定して作れるため、工業製品の量産に欠かせない。日本金型工業会の調べによると、日本の金型産業はピーク時の1991年に生産額が約2兆円、事業所数は約1万3000カ所、就労者数は約12万人だった。それに対し2023年では生産額が約1兆4332億円、事業所数は約4300カ所、就労者数は約7万5000人となっている。
国内需要の減少や海外企業との競争激化により、生産額・事業所数・就労者数が減少傾向にある。その一方で、自動車の電動化などによる軽量化のニーズから、高精度なプラスチック用金型やアルミダイカスト金型の需要は増加が見込まれている。
近年では複雑形状ダイカスト金型への金属積層造形(AM)技術の適用や、現実世界を仮想空間で再現するデジタルツイン技術を用いた金型加工の開発などが行われている。
また、熟練職人の暗黙知をAI(人工知能)で再現する取り組みなど、製品開発の効率化やオペレーションの最適化が進んでいる。
日本の金型—世界で戦える/技術・底力…明らかに
金型の日を制定した日本金型工業会は、金型に関するさまざまな事業を行うことで、金型業界の発展に貢献している。
同工業会は7月に金型の基礎的な製造工程から金型産業が抱える課題、金型産業の将来ビジョンなどを解説した書籍「真説・日本の金型産業論 甦れ!世界が憧れる“Made in Japan”」(日刊工業新聞社刊)を出版した。
日本の製造業の競争力を支えてきた金型。QCD(品質・コスト・納期)の要を担いながら、デジタル化、人材難、グローバル競争といった大波の直撃を受け続けてきた。同書は金型産業の現状を多面的に捉え、日本の金型技術が持つ本質的な強さや可能性を披露することで「日本の金型産業はまだまだ世界で戦える」という底力を明らかにする。さらに付加価値の向上や輸出産業化などにより持続可能な成長産業への進化を提言する。
【ごあいさつ】 日本金型工業会 会長 山中 雅仁/競争・協力・協調 基軸に前進
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日本金型工業会 会長 山中 雅仁
日米関税交渉により、自動車関税は27・5%から15%に引き下げることで合意しました。とはいえ、これまでの2・5%からは大幅な上昇であり、自動車産業はグローバルな通商環境の変化を受け、コスト削減、生産体制の再編、サプライチェーン(供給網)の再構築などが喫緊の経営課題となっています。我々、金型業界もニューノーマル(新常態)が到来したとの意識を持って、生産性向上や高付加価値化、新商品・新市場・新事業の展開など、複数のシナリオを想定した経営の舵取りが求められています。
また、55年ぶりに大阪で開催された万博は、10月13日に成功裏に閉幕し、景気の先行きが不透明な中、約3兆円の経済波及効果を生み、景気の下支えとなりました。成功の要因には、SNSによる体験情報の拡散や特別イベント開催、スタンプラリーなどのさまざまな仕掛けの効果が大きく、企業のメディア戦略、マーケティング戦略の参考になるものが多く見受けられました。
さて、今年も来たる11月25日に「第52回金型の日記念式典」を開催します。「金型の日」は、金型工業の認知度向上と今後のさらなる発展を期して制定されました。日本金型工業会では、金型産業が企業集団として産業の要の地位を存続するだけでなく、多様な人材が集まり、成長・発展する魅力ある業種を目指して、「競争」「協力」「協調」の関係を基軸に活動に取り組んでいます。
活動における一つ目の視点は、たゆまぬ技術革新です。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの最新技術の導入が、金型産業に設計・製造の効率化・高度化といったモノづくり革新をもたらすことに加え、自社製品・サービスにとって、顧客に新しい価値を提供する原動力になります。このことから、こうした取り組みはますます重要なものになっています。
二つ目の視点は市場拡大です。中でも、海外市場をどう取り込むかは発展へのポイントになります。多様な海外市場においては、信頼性の高い情報収集とマーケットインの戦略的アプローチが極めて重要と考え、会員相互で情報交換・交流を行っています。
三つ目の視点は、言うまでもなく人材育成と技術の伝承です。培われた技術やノウハウの次世代への継承、若い世代が「ここで働きたい」と思えるような職場環境や人材育成プログラムづくりなど、その具体的展開について工業会では議論を深めています。
式典では、これまで業界の繁栄にご尽力いただいた優良従業員の皆さまが表彰されますが、ご功労に感謝申し上げますとともに、今後もさらなる高みを目指して研鑽(けんさん)を重ねられますことを祈念しております。
最後になりますが、会員企業の皆さまはもとより関連団体、官公庁の皆さまのさらなるご指導・ご鞭撻ご協力をお願い申し上げ、私のごあいさつとさせていただきます。
