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製薬産業
政府、40年度まで官民投資64兆円
政府は創薬や先端医療分野に、2040年度までに官民で総額64兆円を投資する方針を示した。創薬シーズの創出から実用化まで一気通貫で進める体制を構築し、「世界直行型」の開発による海外市場の獲得を目指す。気候変動などの影響で感染症リスクが高まる中、感染症対応に必要な製品の国内生産体制や備蓄の強化も掲げた。国内外から投資や人材を呼び込み、国民の健康維持と医薬品産業の成長につなげる。
企業の予見可能性高める
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官民で創薬分野への投資を加速する(霞が関の官庁街)
日本成長戦略では、創薬を含む戦略17分野への国内投資を加速するため、ターゲットとなる62項目の製品・技術を選定。それぞれの具体的な目標や勝ち筋、官民投資の具体像を盛り込んだ「官民投資ロードマップ」を策定した。
また、27年度当初予算から「『強く豊かな日本』投資枠」を創設し、各省庁からの予算要求に上限を設けず、必要な額を要求できるようにする。複数年度の計画に基づく投資を基本とし、企業の予見可能性を高めることで民間投資を活発化させる。
創薬・先端医療分野 ロードマップ策定
創薬・先端医療分野では、ファーストインクラス(FIC)製品・ベストインクラス(BIC)製品、感染症対応製品、バイオ医薬品・再生医療製品、AI(人工知能)やロボティクスなど革新的デバイスを用いた先端医療、ライフログデータなどを活用したヘルスケア関連サービスに焦点を当てた。
FIC製品は全く新しい作用を持ち、世界で初めて承認される医薬品、BIC製品は同じ作用の医薬品の中で最も有用性が高いものを指す。世界の医薬品市場は22年時点で約200兆円。そのうち、FIC・BIC製品など特許期間中の医薬品に限定すると、日本を除く先進国では年平均9・6%で市場が拡大し、今後も成長が見込まれる。一方、日本は世界有数の新薬創出国だが、新薬の実用化に関わる人材不足や治験実施体制、創薬スタートアップの資金不足などの課題を抱える。
工程表では、世界の医薬品市場の約6割を占める日米欧の同時承認を目指すほか、日本の特許品市場を世界と同等の成長率に引き上げる目標を掲げた。その実現に向け、製薬会社やスタートアップが臨床初期段階で新薬の有効性・実現可能性を確認する概念実証(PoC)までの研究開発や設備投資、国内での国際共同治験への投資、製造設備への投資を重点的に支援する。
研究開発・国内製造施設整備を強化
ワクチンや治療薬などの感染症対応医薬品は、感染症流行時に需要が急増するものの、平時は需要が低く収益が見込みづらい。このため製薬会社が安定的に生産体制を維持するのが難しい。また、抗菌薬の原薬は大部分を中国など特定国からの輸入に依存しており、海外からの供給が途絶えれば必要な治療ができなくなる恐れがある。
そこで原薬や原材料を含め、研究開発や国内製造施設の整備への投資強化を掲げた。また、製薬会社の抗菌薬の原薬、原材料の備蓄のほか、重症感染症の治療に用いる免疫グロブリンの原料となる血漿(けっしょう)の確保体制強化を支援する。
これにより抗菌薬などで国際的な薬事承認により25カ国以上への展開を目指す。免疫グロブリンは国内自給率を100%に引き上げる。また、次の感染症の流行に備えて全国民分のワクチンを確保するほか、製薬企業での抗菌薬の原薬、原材料の備蓄を6カ月分確保する目標も掲げた。平時から一定量の備蓄を確保し、供給途絶リスクに備える。
政府の試算では、官民投資により40年度までにFIC・BIC製品で162兆1000億円、感染症対応製品で29兆2000億円の経済効果を見込む。
10日に開いた創薬力向上のための官民協議会で高市早苗首相は「官民一体で医薬品産業・創薬を発展させる取り組みを進めるため、日本成長戦略に基づき具体的な議論、検討を行う新たな官民での協議の場を設けたい」と述べた。官民一体で議論を加速させ、投資の具体化につなげる。
社会保障制度の再設計を急げ
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日本製薬団体連合会 会長 安川 健司
【ごあいさつ】日本製薬団体連合会 会長 安川 健司
製薬産業の使命は、高品質な医薬品を安定的に届けるとともに、新しい治療法を生み出し、国民の健康と安心を支えることです。医薬品は重症化を防ぎ、働き続ける力や家族との生活を支える社会基盤です。
一方で、原薬・原材料の調達や製造・物流の混乱による供給不安に加え、薬価制度の見直しが重なる中、日本市場の予見性や魅力が低下しています。その結果、海外で使える新薬が日本では使えない、または導入が遅れる「ドラッグ・ラグ/ロス」が課題となっており、患者とその家族にとって切実な問題です。
こうした問題の根底には、国民皆保険制度を持続可能な形へ進化させるという大きな課題があります。この制度は長年、国民の命と暮らしを支えてきましたが、人口構成や疾病構造、医療技術は大きく変化しています。限られた財源の中で、革新的な医療へのアクセスと社会保障の持続性を同時に守ることは難しくなっています。必要なのは、医療費を「抑える」発想にとどまらず、健康寿命の延伸や将来の医療・介護負担の軽減につながる投資へと発想を転換することです。
そのカギとなるのが、医療・介護・健診などに分散するデータの統合・分析と活用です。例えば骨粗しょう症は、自覚症状が乏しいまま進行し、転倒や骨折をきっかけに要介護状態につながることがあります。しかし、早期発見に有効な骨密度検査の受検率は低く、リスクを抱えた人が十分に把握されていません。検査で早期にリスクを見つけ、適切な治療や運動指導につなげれば、将来の骨折や入院、介護を減らせる可能性があります。
短期的には費用増があっても、長期的には生活の質の向上や介護負担の軽減、就労継続などにつながり、社会全体に恩恵をもたらすことが期待できます。このような視点は、認知症や糖尿病、心血管疾患などにも共通します。産官学・医療界と患者・国民が同じデータに基づいて課題を共有し、予防から早期診断、治療、介護までを一体で設計することが必要です。
社会保障制度の再設計は単なる財政論ではなく、誰もが必要な医療にアクセスし、健やかに暮らし続けるための基盤づくりです。政府のリーダーシップのもと、データに基づく政策立案と実行を加速する必要があります。
