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2025年注目された工作機械・周辺機器
人材不足が社会課題となる中、製造業では生産性の向上や熟練技能者不足に対応するため、自動化技術や工程集約に注目が集まっている。9月に独ハノーバーで開催された欧州国際工作機械見本市「EMOハノーバー2025」や国内の工作機械見本市「メカトロテックジャパン(MECT)2025」でも出展メーカー各社は工作機械に協働ロボットや自動搬送機などを組み合わせたシステムの提案に力を入れていた。また多品種少量生産に対応するため、工程集約が可能な加工機の開発も進む。
人材の課題に貢献 欧州で最新機種披露
2025年の工作機械業界は外需が大きく伸びる一方、内需は国際情勢の不安定さなどから設備投資を控える動きが強まった。しかし、技術者不足や熟練技能者の高齢化による退職といった人材の課題は早急な対応が必要だ。各メーカーは自動化や工程集約をテーマに製品や技術開発を進めている。
ドイツで開かれたEMOでは、日本の大手・中堅メーカーがそれぞれ独自の発想で自動化技術を提案した。
オークマは熟練技能が必要な大物加工対象物(ワーク)に対し、経験の浅い作業者でも高精度加工の安定維持を図れる大型立型マシニングセンター(MC)「MB—100V」を提案した。熟練技能者が担う熱変位に対しては、機械が自律的に抑制する知能化技術「サーモフレンドリーコンセプト」の導入で経時熱変位を7マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下に抑えた。人手と時間がかかる切り粉には、ワークの広範囲に切削液をかける独自の洗浄技術で機内清掃作業を大幅に減らした。
後付けで自動化できるMC
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キタムラ機械の小型同時5軸制御立型MC「メドセンター5AX」
キタムラ機械(富山県高岡市)は、小型同時5軸制御立型MC「メドセンター5AX」を出展した。
同機は標準機を導入後、必要になった時に自動パレット交換装置(APC)や自動工具交換装置(ATC)などのユニット化されたシステムを後付けできる。「いきなり自動化システムを導入するのはハードルが高い」(北村彰浩社長)と捉え、MC本体が後付けを前提に設計されており、同社がコンセプトとして掲げる「失敗しない自動化投資」を実現できる。この思想が「欧州でも刺さっている」(同)と好調で、さらに浸透を図る。
また、機械本体を入れ替えずに済むことから、欧州を中心に進むサーキュラーエコノミー(循環経済)に貢献できる点も強調する。
省人化技術にニーズ 変種変量生産にも対応
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豊和工業の横型MC「HMP—350HC1」
今年国内最大の工作機械見本市となったMECTでも自動化技術は来場者の関心を集めていた。
豊和工業は工作機械と空油圧機器、二つの面から訴求した。主軸30番の横型MC「HMP-350HC1」にAPCを組み合わせて展示。近年ニーズの高い変種変量生産に対応できる自動化システムとして提案した。同MCは、モジュールの追加で多様なワークや仕様に対応できる。
また現場の課題解決につながる旋盤用チャックも紹介した。新製品の「H3BP」はワークの把握力を同社従来品より35%高めた3爪中空パワーチャック。ラインアップは外径10インチのみで把握力は150キロニュートン。同12インチの同社従来品を超える把握力で、重切削性が高まり生産性向上につながる。このほかくさび形3爪中空チャック「H3KTA」や爪交換容易な「H018MA」などを展示した。同社はこれまで人手だよりだった作業を自動化することでコストを大幅に削減。チャックの価格低減を実現している。
省スペースの棚型ストッカー
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協働ロボと合わせて展示された三栄商事の「ターナー」
三栄商事(名古屋市東区)の棚型ストッカー「TARNAR(ターナー)」は自動化を始めたいと考える企業から注目が集まった。
パレットを高さ方向にストックするため、接地面積が小さいのが特徴。1パレットあたり20キログラムまで積載でき、16パレット1列仕様と32パレット2列仕様をそろえた。要望に応じて列数の変更も可能だ。また内製化により低コストを実現し、中小企業にも取り入れやすい製品とした。
タッチパネルでパレットごとの管理ができ、ストッカー単体で金型や部品、工具管理用途も見込む。倉庫に設置すれば資材の在庫管理用、セキュリティー機能の追加により薬品管理用など、製造業以外でも使用できるためさまざまな業種へ広く提案する。
同製品は三栄商事とグループ企業の浜名エンジニアリング(愛知県豊橋市)の連携により生まれた製品。三栄商事が集めた顧客ニーズを製品化した。
微細なスラッジを回収
白山機工(石川県白山市)が開発した「高精度フィルター装置搭載クーラントユニット」は、研削加工などで排出されるスラッジを含むクーラント液から1マイクロメートル相当の微細なスラッジを濾過して回収できる。フィルター交換などにかかるメンテナンスコストも抑えられる。
装置内に送られたクーラント液は内部で水位を上下させながらフィルターメッシュで濾過される。フィルターメッシュに付着したスラッジは水流や水位変動によって剥がされて装置の下部に沈殿する。たまったスラッジは定期的に排出されるため面倒なタンク清掃が不要となる。フィルターのメッシュサイズは0・3マイクロ—100マイクロメートルの中から選べる。
