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九州中央支局特集
~「Re」につなぐ港湾
世界とつながる熊本港・八代港
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八代港のガントリークレーン
熊本県は、県内の国際物流拠点である八代港(八代市)と熊本港(熊本市)の振興や競争力強化に力を入れている。県は両港を県の産業競争力を左右する基盤と捉える。両港の港湾管理者である県や地元の市、経済・貿易団体および運送事業者などがそれぞれのポートセールス協議会を構成。国際航路の拡充や貨物集積の強化による持続的な港湾利用を官民一体で推進する。
港湾利用 官民一体で推進
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熊本県で開いたポートセミナー -
好評だった熊本港のバックヤードツアー(写真はいずれも熊本県提供)
県は、2019年に策定した「ポートセールスビジョン」を24年に改訂、28年までの5年間の達成目標を示した。台湾積体電路製造(TSMC)の県への進出や世界的な脱炭素化、物流の2024年問題など社会情勢の変化への対応を実現していく考えだ。
国際コンテナ取扱量は、港湾と後背地の産業活動を映し出すバロメーターといえる。両港とも長い時間をかけてきたポートセールスにより、コンテナ取扱量は増加してきた。ただ、コロナ禍以降の物流の混乱や中国経済の停滞などによる取扱量の減少も見られる。
県の企業立地課は、持続的な港湾振興に向けて「ポートセールス活動の取り組みを続けて世界とつながる物流拠点をアピールする」と話す。企業立地が増加するとコンテナも増加し、船会社が航路を充実することにつながる。この好循環が重要と意気込む。
八代港のコンテナ取扱量は、輸出入合計のコンテナ本数で、24年は1万9458TEU(20フィートコンテナ換算)で28年には3万TEUに引き上げる計画。熊本港は24年1万2849TEUで28年に1万8000TEUを目指す。
八代港の国際コンテナ定期航路は、釜山港への週2便、台湾各港への週1便の合計3便。神戸港への国際フィーダーコンテナ定期航路週1便を持つ。熊本港の国際コンテナ定期航路は、釜山港に週2便、国際フィーダーコンテナ定期航路は、神戸港へ週1便という状況だ。県は、八代港の台湾航路において同じ港に2回寄港するダブルコール再開や中国・上海を結ぶ新規航路開設を船会社に働きかけ続けている。熊本港については、当面は国際フィーダー航路増便に向けた取り組みを進め、将来的には上海、台湾航路の就航に向けた誘致の推進を続ける方針だ。
県は、両港を使用する荷主企業に助成事業を実施している。新規利用は、1TEU当たり2万円。継続利用は同1万5000円を助成する。八代港については小口混載貨物(LCL)サービスを新規開設した小口混載事業者へも助成する。さらに八代市が、陸送距離の短縮や冷凍(リーファー)コンテナ輸送に関する独自の助成を設定している。
こうした助成事業を活用して重点的なポートセールスも行う。コロナ禍以降、九州北部港へシフトした大口荷主企業や県北に集積した半導体関連の荷主企業向けポートセールスもその一つ。企業立地課によると半導体関連の立地協定件数は、21年度から4年間で75件。同課半導体支援室は「半導体企業の集積を進めて港湾利活用にもつなぐ。港湾の機能が充実することがさらなる集積への呼び水にもなる」と話す。
八代港と熊本港の両ポートセールス協議会は、25年度のポートセミナーを11月に熊本県内で実施した。セミナーでは木村敬熊本県知事と大西一史熊本市長、小野泰輔八代市長がそれぞれ講演とトップセールスを実施し各港湾の利便性などをアピールした。
セミナーに合わせて普段は入れない港湾バックヤードツアーも実施。荷物をどのように取り扱っているか、ガントリークレーンを使ったデモンストレーションで披露した。同課は「見学できたことで利用に前向きな声を多く聞くことができた」と手応えを感じている。
メッセージ/大きな転換期迎えるゲートウエー
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八代港港湾振興協会会長(MATSUKI会長) 松木 喜一 氏
熊本県や八代市のゲートウエーである八代港は今、大きな転換期を迎えている。八代産業界をリードする日本製紙八代工場(熊本県八代市)は、新聞用紙や印刷・複写機用紙の製造から、トイレットペーパーやティッシュなど輸出を中心とした家庭用紙の製造に転換する。また、台湾積体電路製造(TSMC)の製造子会社JASMは、熊本県菊陽町の第2工場で回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)の先端半導体を作る。
日本製紙八代工場は、2028年2月の製造開始までに310億円を投じる。既存設備を撤去し、新しい設備の導入や倉庫を建設する。同工場の物流を担うMATSUKI(熊本県八代市)は、機械の輸送と搬入の準備を進めている。これからは新工場の建設に向けて八代港からの建設資材の受け入れが大いに加速することを期待する。
港湾振興における喫緊の課題の一つは、働き手。つまり港湾労働者の確保だ。ただ、すべての業界が人手不足であり解決は簡単ではない。賃上げが必要だが港湾を利用する企業の理解がないと難しい。働き手の確保には、将来を見極めた福利厚生や労働に対する十分な対価が必要だろう。企業への賃上げ要請は企業が納得できるように進めなければならない。
港湾振興は県や市と民間が連携し、港の利便性や重要性を国や利用企業にいかにして情報発信していくかが重要だ。国の支援を受けながら港湾利用企業や働く人にとって利便性が高く、働きやすい港にしていかなくてはいけない。港湾ユーザーの要望をきちんと聞き、それに応えることが今後も求められる。
