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メカトロニクス京都2025 ~変わる世界、次のステージへ~
トランプ米政権の関税政策の影響などで、国内や世界経済の先行き不透明感が高まっている。だが、不透明で変化し続ける経営環境の中でも、次の成長に向けた投資も必要だ。京都企業も施設の新設などで、人手不足対策や生産能力の増強などを推進し、さらなる成長加速を狙っている。
メカトロニクス京都2025 ~変わる世界、次のステージへ~
NKE社長 中村 道一 氏/小回り利かし、市場開拓
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NKE社長 中村 道一 氏
—自動車業界をはじめ多様な工場向けの自動化機器、搬送設備を展開しています。米国の関税政策の影響は。
「2025年3月期の業績は堅調だったが、米トランプ政権が発足した1月から受注環境は厳しい。不確実性が高まると、企業の設備投資は一旦ストップや延期となる。車業界は特に厳しく、様子見ムード。商談はかなり先の案件が中心だ。だが、明るい市場は必ず存在する。小回りが効く中小の強みを活かして開拓していく」
—具体的には。
「機器の動きを実際に見るとイメージが湧くことが多々ある。デモ機を載せたキャラバンカーによる新規獲得も前期の増収牽引役で、今年は機器単品ではなく複合的に見せるリニューアルを行い、機動的に動けるキャラバンカーも投入する。また、東北や中国地方のパートナー企業との連携を強化した。従来はスケジュールやサイズ、製造能力などの関係でお断りしていた案件にも対応が可能となり、業容を広げていく」
—期待の市場は。
「次世代電池、薄物フィルム搬送、部品供給関連に力を入れる。海外はタイ子会社が黒字転換し、ベトナムも力を入れている。中国は市況が厳しい。このため、中国の技術者を日本に呼び、時間がかかっていた国内の技術提案業務を増強した」
ホリゾン社長 堀 英陽 氏/事業の多角化にチャレンジ
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ホリゾン社長 堀 英陽 氏
—印刷物の紙を折る、ページをそろえる工程などに使用する製本関連機器の市場動向を教えてください。
「趣味嗜好(しこう)が多様化し、印刷物の種類が増えている。当社の製品は多品種少量に対応した印刷後加工が実現できるため、市場の需要に合致している。国内外を問わず人手不足による自動化・省人化のニーズもある。他社製のロボットなども組み込んだ工程の提案なども求められている状況だ」
—5月に中国の展示会に出展しました。
「本格的な出展にトライした。中国をはじめとするアジア地域は今まで自動化が進んだ機械の需要はそれほど大きく無かった。ただ、人件費も上がっており、自動化の検討が進んでいるほか、印刷産業の発展で品質も求められている。現地メーカーも多いが2025年はチャレンジする年として、中国・アジア地域をより強化する」
—製造業の工場内などで使用できる工程間搬送の自動化提案も始めました。
「自社工場で工程間の部材搬送のため、ロボットを使っている。それらの搬送のシステムは自社で開発しており、このノウハウを使って他社へも提案を始めた。持続可能な企業にするための事業多角化のチャレンジのひとつ。実績も出ており、今後も強化する」
片岡製作所 社長 西 則男 氏/ペロブスカイトに期待
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片岡製作所 社長 西 則男 氏
—米国のトランプ政権の発足以降、電気自動車(EV)や電池関連の投資を見直す動きが相次いでいます。
「関税による市場変化が懸念材料だ。海外顧客からの二次電池検査システムの受注予定や仕様書の提示が延期になるなど、様子見が発生。受注残は多いものの、顧客の設備投資時期や納期が後ろ倒しになった。今、一番の期待は次世代のペロブスカイト太陽電池だ」
—国の補助も受け、レーザー加工システム事業で手がける同電池向けレーザーパターニング装置の量産工場を新設する計画です。
「当社は生産に欠かせない重要特許を三つ持っているのが強み。既存工場で同装置の量産を始めつつ、2028年内に新工場を稼働させる。同装置事業は国内でしっかり成長させ、29年度に100億円の売り上げ規模を目指す。政府はペロブスカイト太陽電池を40年までに原発20基分の20ギガワットまで普及させる計画で、順調な伸びが期待できる。このほか、半導体検査装置のプローブカード向け超精密穴開け装置も業績に貢献する」
—新本社・研究開発センターの進捗(しんちょく)は。
「7月完成で本格稼働は秋の予定。研究開発体制強化に向け、採用も加速する。空きスペースができる既存工場も改修で増強する」
イシダ 社長 石田 隆英 氏/アフリカ開拓、拠点生かす
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イシダ 社長 石田 隆英 氏
—食品工場や小売業界などの自動化を支援する計量機や包装機、スーパーの値札に使う電子棚札(ESL)システムなどを展開しています。
「2024年度は全体的に好調だった。国内で特に良かったのはESLシステムで、値札の付け替えがいらず、人手不足対策になるとして、24年度の同システムの売り上げは前期比82%伸びた。世界各国で人件費の増加などで自動化ニーズがあり、景気回復や円安の影響で海外も全般的に良かった」
—業務でのAI(人工知能)活用を推進しています。
「全社員に業務の中で少なくとも一つはAIを使用してもらっている。効率が上がった事例もあり、試行錯誤しながら使っている。当社はAIを活用した機器も展開しており、業務の効率化で社内でフルに使ってもらうことで、製品にも落とし込んでいく」
—成長戦略は。
「国内は工場の働き手不足に対応した無人化・省人化のニーズを捉え、引き続き拡大する見通し。海外ではアフリカがまだまだ開拓できると考えている。すでに販売拠点を持っており、24年には南アフリカの包装機メーカーも買収したので、事業をさらに伸ばしていく。経済発展状況も見ながら、将来的には拠点も増やしていきたい」