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メカトロニクス京都2025 ~変わる世界、次のステージへ~
トランプ米政権の関税政策の影響などで、国内や世界経済の先行き不透明感が高まっている。だが、不透明で変化し続ける経営環境の中でも、次の成長に向けた投資も必要だ。京都企業も施設の新設などで、人手不足対策や生産能力の増強などを推進し、さらなる成長加速を狙っている。
企業の設備・成長投資加速
生産能力を拡大
印刷物の紙折り、丁合、製本、断裁といった工程で使う製本機器を手がけるホリゾンは、2026年春頃の稼働を目指し、京都本社(京都市南区)に新本社を建設している。社員が意欲的に働ける快適スペースの充実などで、採用強化にもつなげる考えだ。研究開発機能も設け、顧客ニーズを捉えた製本関連装置や技術の開発も実現していく。また、びわこ工場(滋賀県高島市)は継続的に設備投資をしており、25年も新しい工作機械を導入するなどで、生産効率の向上に力を入れる。
食品や医薬品向け包装機械など、オーダーメードの自動機械を製造する京都製作所は継続した売り上げ拡大に向け、投資を積極的に行っている。本社(京都市伏見区)の一部工場棟を建て替えて新工場を建設しており、26年秋頃には完成する予定。食品や医薬品業界では、人手不足による自動化ニーズが広がっており、包装機械が好調に推移している。加えて、成長ドライバーの一つである、車載用リチウムイオン電池(LiB)向け設備も今後の拡大を見込む。そのため、製造エリアを広げ売り上げ規模拡大を狙う方針だ。新工場は車載用LiB向け製造設備の生産を主とするが、食品や医薬品向け包装機械も一部製造予定。
レーザー加工システムや二次電池検査システムなどを製造する片岡製作所は、ペロブスカイト太陽電池向けレーザーパターニング装置の量産に向け、本社(京都市南区)近くに工場を新設する。政府が40年にペロブスカイト太陽電池の約20ギガワットの導入を目指す中、同電池メーカーの量産の動きに合わせ、製造装置を量産する。工場は28年内に完成させる方針。同社は今夏に建設中の新本社・研究開発センターも完成する予定だ。
試験環境を刷新
試験ができる拠点を構えるなどして成長を狙う企業もある。
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トクデン(新棟の南工場外観)
誘導加熱技術を使ったロールのメーカーであるトクデンは、マキノ工場(滋賀県高島市)に新棟「南工場」を新設した。南工場内にロールを使った試験などが可能なテクニカルセンターや、自社の生産効率向上に向けた技術開発を行うプロセス開発センターを設置。テクニカルセンターには以前からあるテスト装置を移設したほか、最新の800度Cまで昇温できる高温ロールも設置。同ロールは簡易的なデモ運転もできる。
今後は直径300ミリメートル、長さ7・2メートルの小径長尺ロールや、ロールのたわみを電磁力で補うロールなどの開発品の実機も設置し、デモ運転も可能にする計画だ。技術力をアピールする場所としてもテクニカルセンターを活用し、ジャケットロールなどの販売拡大につなげる。
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堀場テクノサービス(ビークルテストセル内)
堀場製作所の子会社で、計測機器メンテナンスなどを手がける堀場テクノサービスは、堀場製作所の本社敷地内(京都市南区)で自動車評価試験設備「ビークル テスト セル」を本格稼働した。電動化車両を対象とし、ハイブリッド車(HV)などの内燃機関を搭載する車両の排ガス測定・触媒評価や、電気自動車(EV)の電力量消費率など、幅広い試験に対応する。既存の開発施設を約1億円を投資してリニューアルし、4輪駆動のシャシーダイナモなどを設置した。年間の半分は受託試験での設備の使用を目指している。多様化するモビリティー開発の効率化や開発加速につなげる施設として運用していく。
“京都らしさ”アピール
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関西パビリオン
日ごとににぎわいが増す大阪・関西万博では、京都企業も自社技術を使った取り組みの展示などで会場を盛り上げている。関西パビリオンの京都ゾーンでは、期間によって企業・団体が入れ替わり、食や伝統産業などで京都らしさをアピールする。
いのちや健康、近未来の暮らしを感じられる大阪ヘルスケアパビリオンでは、島津製作所などが3Dバイオプリント技術で作った培養肉を展示している。同社のほか、大阪大学や伊藤ハム米久ホールディングス、TOPPANホールディングスなどの6者が参画する「培養肉未来創造コンソーシアム」の取り組みで、島津は培養肉自動生産装置の開発や、分析計測技術の開発などを担当した。
堀場製作所は建物全体が水に覆われたパビリオン「いのちの未来」に同社のはかる技術を提供する。外周の水盤に水質計が2種類15カ所、館内には大気計が1台設置されている。水質計ではかった1日の水質データは、夜に行われる同パビリオンの光の演出にも使われる。データの変動を光の強弱などに置き換え、パビリオン外観を流れる水に当てて光のゆらぎを演出する。大気計のデータも館内の一部のイルミネーションの光のゆらぎに使用されている。
会場外の混雑解消に貢献
会場の外からも京都企業は万博を支える。三菱ロジスネクストは、海上と陸上の各種貨物輸送の結節点となるコンテナターミナルのゲートシステムを高機能化させた新コンテナターミナルゲートを夢洲コンテナターミナル(大阪市此花区)に納入した。同システムで得た車両情報は、新港湾情報システム「CONPAS」とも連動。万博会場周辺の交通混雑解消にも寄与する。
関西パビリオン内の京都ゾーンでも多くの企業・団体が出展する。食や産業、観光など六つの分野で一定期間ごとに展示を入れ替える。島津製作所はここにも出展し、自社製品と地元京都の伝統工芸技術を融合した分析装置などのコンセプトモデルを展示する。