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川越
埼玉県川越市は、都心から30キロメートル圏内に位置し、古くから県南西部地域の中心都市として発展してきた。中心市街地や商店街を中心に栄える商業、市内北部・南西部に展開する工業団地により県内上位の出荷額を誇る工業、首都圏の食料供給地の役割を担う農業がバランスよく発展し、近年は多くの観光客が訪れるなど観光業への注目も高まっている。市の現状と展望を川越市長の川合善明氏、川越商工会議所会頭の原敏成氏に聞いた。
時が人を結ぶまち川越
川越市長 川合 善明 氏/「魅力があふれ、住み続けたいまちに」
―市の現状をどうみていますか。
「川越まつりなど市のイベントが制限なく開催できるようになった。蔵造りの町並みをはじめ、観光需要が回復傾向にあり、コロナ禍前の活気を取り戻しつつある。大変ありがたいことだ。一方、円安で物価やエネルギー価格が上昇し、事業者の経済活動にも影響が出ている。経済的支援のほか、市内金融機関および信用保証協会と連携した制度融資で支援している」
―産業振興策は。
「2022年度に策定した産業振興ビジョンで『次の100年も選ばれ続ける【KAWAGOE】を目指して』を基本理念として、産業振興に関する方向性や新たな取り組みを定めている。社会経済情勢の変化に対応しつつ、中小企業への支援や企業立地の推進など、地域活性化につながる、さまざまな施策や事業を推進したい。春には市指定文化財である旧川越織物市場を川越市文化創造インキュベーション施設としてオープンする。クリエイターなどが新たな価値を創出する活動を支援することで、多様な形で産業振興に寄与していきたい」
「市内中小企業の優れた製品・技術を川越ものづくりブランド『KOEDO E―PRO』として10年以上にわたり認定し、認定製品・技術のPRに係る費用の一部を支援して、販路開拓を推進している。一方で”発掘”するのが難しくなってくる。工夫をしていかないといけないだろう。また、これまでの認定製品・技術も含め、市場に広めるためのPRを強化していく」
―農業・観光業を生かした「グリーンツーリズム」については。
「グリーンツーリズム拠点施設で農業体験や食体験を実施している。今年は武蔵野の落ち葉堆肥農法が世界農業遺産に認定された。市内外の方々に広く伝える場としても利用していく予定だ。これまで観光というと蔵造りの町並み(一番街)に集中していた。観光客が郊外まで足を運んでくれることにも期待している」
―今後のビジョンをどう描いていますか。
「25年度までの『第四次川越市総合計画』で『人がつながり、魅力があふれ、だれもが住み続けたいまち 川越』を将来都市像として描いている。総合計画に掲げた施策を推進していきたい。今特に考えているのは企業誘致だ。産業面で活気が出て、雇用促進につながるし、 税収も増える。本市は、道路や鉄道網など利便性も高く、条件は悪くない。企業誘致に向けた課題を整理し、検討を進めていきたい」
川越商工会議所会頭 原 敏成 氏/「人と企業が輝く川越へ 変革に挑む」
―2022年11月に川越商工会議所の会頭に就任されました。この1年の振り返りは。
「執行部が新体制となり『人と企業が輝く川越へ 〜変革に挑む!〜』をスローガンに据えた。約1年が経過し、役員・議員・評議員そして会員の皆さまのご支援・ご協力により、良いスタートが切れたと感じている」
―川越市の経済、産業の特色をどう見ていますか。また課題は。
「川越は商業、観光業、建設業、工業、農業ともに県内トップクラスの実力誇る、全国でも稀有(けう)な特色を持つ都市だとみている。マスコミや動画サイトで取り上げられることも多く、観光都市としての知名度はますます向上しており、川越というブランド力を高める力になっている。ブランド力の向上による影響は、観光業だけにとどまらない。地価や人口にも好影響を与えている。しかしながら、日本全体の人口減少に伴う市場規模縮小が避けられず、近隣の都市間競争も激化すると予想されるため、安心してはいられない。いかに街の魅力を高め、都市としての存在感を高めることができるか、常に意識しながら事業活動に取り組むことが重要だ」
―経済活性化に向け会員支援にどう取り組みますか。
「ようやくコロナ前の活気が戻ってきたが、人々の生活スタイルが変化するなか、多くの業態が方向転換を迫られている。事務局では経営支援部が中心となり、新規事業の立ち上げ、業態転換、それに伴う事業計画の策定など、事業者の立場に立って支援を行っている。また、 メディア向けの『新商品・新サービス合同記者発表会』の開催や、交流サイト(SNS)を使った会員情報の発信など、情報発信力の強化にも取り組んでおり、手応えを感じている」
―今後の部会・委員会 の活動方針は。
「23年度に3年間の中期計画を策定し『企業の発展』『地域経済の発展』『政策提言と情報発信』など、五つのミッションを掲げた。ミッション達成のため、役員・議員、職員が一丸となって取り組んでいる。部会は業種別の組織である。業種特有の課題の解決のため、先進事例の視察、勉強会の開催など、各部会が活発に取り組んでいる。委員会は目的別の組織である。広報・情報、産業推進、組織活性化など、商工会議所の活動目的達成のため、テーマに応じた活動や意思決定を行っている。部会・委員会が一堂に会した連携会議も開催し、情報共有を行いながら活発な活動をしている」