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葛飾区産業
東京都の北東に位置する葛飾区は、金属プレス、プラスチック製品、機械部品、工業用ゴム、皮革、玩具など多様な業種を手がける小規模の町工場が数多く集積する。区内企業は優れた技術力を生かした自社製品製造や、大学などと連携した研究開発に取り組むことで、モノづくりを取り巻く環境の変化に対応している。
中小の人材確保・定着を支援/葛飾区長 青木 克徳 氏
デジタル化支援 地道に継続
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葛飾区長 青木 克徳 氏
―昨年度から実施しているデジタル化支援事業費補助金の進捗(しんちょく)はいかがですか。
「今や効率的な企業運営のためデジタル化、AI(人工知能)活用は不可欠といえる。ただ、中小企業の中には前向きに取り組んでいる企業もあれば、そうでない企業もある。どこから手を付ければいいか分からない企業については区として相談に乗りながら支援している。すぐに売り上げに結び付かないケースも少なくないため、地道な取り組みを継続していくことが必要だ。例えば、これまで『エクセル』などの表計算ソフトウエアで行っていた在庫管理を専用のシステムでの運用に変えるなど、比較的取り組みやすい部分から少しずつ進めていくことがカギになる」
―人材確保の支援にも取り組んでいます。狙いを教えてください。
「中小企業の場合、まずは人手不足の解消が最優先課題だ。そのためには働きやすい環境づくりが必要になる。更衣室や休憩室などの新設・改修工事費や、夏場の屋外での作業時に着用するファン付き作業服やスポットクーラーなどの備品・消耗品の購入費を助成し、人材の確保・定着を支援している。また、従業員が業務上必要な技術を習得するために大学や現場訓練に通った際の費用補助について、本年度からeラーニングや通信制の講習も対象に加えた」
―東京理科大学と区内企業が連携して開発している「知的な筋力トレーニング装置」の進捗を教えてください。また、産学公連携を今後どう進めていきますか。
「試作機は毎年改善がなされており、最終的に製品化し、スポーツジムなどで使ってもらえるようになることを目指している。本年度はスポーツの展示会にも出展し、多くの人に見てもらうことができた。大学との連携はすぐに成果が出るものではないが、地道に続けていくことが大事だ。こうした産学公連携による開発の事例が他にもどんどん出てくることを期待したい」
「町工場見本市」後継者問題に焦点
―葛飾ブランド「葛飾町工場物語」の認定企業数が本年度、新たに5件増えました。
「優れた技術を持った区内企業を積極的に発信していこうということで2007年度に始まった認定制度だ。製品の良さや技術力を広く知ってもらうことで、新たな仕事につながるきっかけになる。現在の認定企業数は100件を超えている」
「認定企業がプロモーション手法を習得するための支援も本年度から始めた。優れた製品や技術を持っていてもそのPR方法が分からない企業が多い。製品の購入や問い合わせ先に誘導するウェブページの制作やSNSの活用など、個々の企業のPR力向上を支援している。認定企業の販路拡大や販売促進につなげることで、葛飾ブランド全体の認知度も向上させていきたい」
―葛飾区の産業の課題は。
「やはり企業経営者の高齢化だ。後継者問題や事業承継といった部分については区としても10年ほど前からさまざまな取り組みを行ってきた。区内企業の優れた技術が引き継がれていくことが大切だ。中小企業の場合、一つの製品を複数社で共同して作っているケースが多く、各社が重要な役割を担っている。仮にそのうちの1社が廃業してしまうと、製品として納められず、代替先の企業を見つけるのは容易ではない」
―2月19、20日に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で行う展示会「町工場見本市」では、後継者問題をテーマにした企画に力を入れます。
「葛飾区をはじめとする城東地域の企業が出展する。都心部で展示会を行うことで、大手企業も含めてさまざまな人に足を運んでもらえるようにしている。今回は、経済産業省・中小企業庁が主催している全国の中小企業の後継者が事業アイデアを競うイベント『アトツギ甲子園』に出場経験のある企業を招いてプレゼンテーションを開催する。リアルな体験談を直接聞くことで参考になるのではないか。区内企業やその技術を知ってもらい販売促進や新たな仕事につなげていくためにも、ぜひ多くの方に来場していただきたい」
産業人材育成支援など補助金充実
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「デジタル化合同セッション」では葛飾区の伴走支援を受けた区内企業の事例を紹介したほか、専門家による個別相談を行った
葛飾区は区内中小企業において全ての従業員が働きやすい職場環境の整備を後押しすることで、人材の確保・定着を支援している。「人材確保・人材定着支援事業費助成金」では、従業員用のトイレやロッカー室、休憩スペースのほか、女性もしくは男性専用施設やバリアフリー対応施設の新設、改修にかかる工事・設計費を助成する。また、暑熱・寒冷対策として使用されるスポットクーラーやストーブといった備品、ファン付き作業服やヒーター付き作業服などの消耗品の購入費も対象となる。なお、備品は設置工事を要する固定式のものを除く。消耗品については、助成は暑熱対策・寒冷対策ごとに1日あたり常時従事する従業員数が上限となる。
同助成金は葛飾区内の事業所、営業所、支店、工場または店舗において工事等を実施する場合が対象で、補助率は2分の1、補助限度額は250万円。「ワーク・ライフ・バランス推進企業」の認定を受けた企業は300万円を上限とする。申請回数は、工事・設計費が1年度につき1回まで、備品購入費が6年度につき1回まで、消耗品購入費が3年度につき1回まで。2025年4月以降に購入・着工し、26年3月までに支払いが完了する事業の経費が対象だ。
人材育成では、大型等免許取得費の補助や大型等免許の有資格者が入社した際の手当に対する補助などを行う「産業人材育成支援補助事業」を実施している。本年度からは人手不足が深刻な物流事業者に加え、建設事業者についても新たに補助の対象とした。
区内中小製造業の販路拡大 後押し
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町工場見本市セミナーを実施
区内の中小物流・建設事業者が負担した従業員の大型等免許取得にかかる教習所費用の2分の1、上限額60万円を補助する。また、大型等免許の有資格者を採用した際、当該従業員に対して免許保有を理由とした一時金を支給する場合の支給額の2分の1、上限50万円の助成を行う。
区内企業のデジタル化の支援も引き続き力を入れる。24年度から実施している「デジタル化支援事業費補助金」は、24年度は34件を承認した。25年度もこれまで46件の申請があった。
対象となるのは、勤怠管理システムや在庫管理システムなどのソフトウエア購入費やクラウドサービス等の利用料、システム構築のための外注費、デジタル技術の導入方法を実証するための専門家からの技術指導料、キャッシュレス決済機器の導入にかかる費用など。なお、ハードウエアの購入のみの経費や入れ替え経費、ソフトウエアの更新費などは補助対象とならない。補助率は2分の1、上限額は50万円で、そのうちソフトウエアの導入の際に使用するハードウエアの購入費は上限額20万円。
同補助金の申請には葛飾区が開く「デジタル化合同セッション」での個別相談やIT導入専門相談に参加してデジタル簡易診断書の発行を受ける必要がある。
区内の中小モノづくり企業の販路拡大も後押ししている。「見本市出展費補助事業」では、国や自治体が主催、共催または後援して大規模展示会場で行われる見本市への出展にかかる展示場所の使用料や見本市への製品の運送料、展示場所の設営委託にかかる費用などを助成する。補助率は2分の1、上限額は30万円。
