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日本工作機器工業会 創立70周年
モノづくりの発展支える
工作機器は工作機械や産業用ロボットなどのキーデバイスとして、モノづくりの高度化に貢献してきた。その業界団体である日本工作機器工業会が創立70周年を迎えた。20日に東京会館(東京・丸の内)で記念式典が行われる。工作機器産業は“縁の下の力持ち”として日本のモノづくりを支えており、同工業会への期待も高まっている。
日本工作機器工業会は1955年4月に旋盤用チャックメーカー十数社が集まり、日本工作用機器工業会として設立された。その後、クラッチ・ブレーキ、ボールネジ、直動案内機器、ツーリングなどのメーカーが次々と参加し、92年12月に「社団法人日本工作機器工業会」に名を改めた。2012年4月には現在の一般社団法人となった。
工作機器の定義は「金属加工、非金属加工等の産業機械に使用される機器」。生産のシステム化、機械の構造変化の進展、利用範囲の拡大といった変化が続く中で、需要業界の多様なニーズに応えて工業会の体制も整えてきた。
同工業会は25年5月時点で正会員59社、賛助会員9社で構成。生産や流通の調査、技術および安全性の研究、標準化の推進や工作機器の普及啓発など、多種多様な活動を展開している。
組織は総会や理事会をはじめ、広報、技術振興、国際、需給などの各委員会を設置。このほか部分品や工作物保持具、工具保持具、附属機器といった製品分類ごとに部会や分科会を設けている。
会員の多くを中堅・中小企業が占め、日本のモノづくり産業の発展を縁の下で支えてきた。工作機器はあらゆる産業機械のキーデバイスとして重要性が増しており、日本のモノづくりの発展に向けて大きな期待が寄せられている。
【インタビュー】 日本工作機器工業会 会長(THK会長) 寺町 彰博 氏
最新鋭機で競争力確保
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日本工作機器工業会 会長 寺町 彰博 氏
日本工作機器工業会がまとめた会員の販売額統計では2024年の販売額が前年比8・2%減の1623億円だった。同工業会によると、中国市場や半導体関連投資の低迷が想定以上に響いたという。25年は中国における設備関連投資需要の高まりや電気自動車(EV)の再投資で好調に推移すると見る。寺町彰博会長(THK会長)に今後の展望を聞いた。
—25年の受注環境は。
「24年より若干プラスになる見通しで、販売額が1768億円だった23年並みに戻るだろう。中国では税制優遇措置を取っており、設備関連需要が高まっている。またEV関連の再投資が始まった。トランプ関税の問題はあるが、中国市場は堅調に推移すると見る。関税問題は結果として米国にマイナスに働き、中国に利を与えていくという気がしてならない。早く落ち着いてほしい」
—会員への影響は。
「米国が主張する通りの関税率となれば大変だ。世界経済が失速する危険性がある。ブロック経済化によってこれまで機械設備ユーザー側が効率良く保有できていた設備を関税対策のため二重三重に持つことになれば、一時的に設備需要は増えても混乱による損失の方が大きいだろう。注視しながら必要に応じた支援策が求められる」
—最新機械に更新せず、10年以上前の古い機械を使い続ける傾向にある日本の製造業のあり方をどう見ますか。
「中国のように日本政府が補助金を出して機械の更新を後押ししなければ世界で勝てなくなる。この10年で中国の機械は非常に高度化している。今こそ最新鋭機械への更新が求められる。日本の製造業が価格だけでなく、モノとしての競争力でも勝てなくなる危険性をはらんでいる。ビンテージの機械で製造することは産業界の破壊につながる。機械を使用する層に続いて、マシンビルダーが崩壊する恐れがある。政府も製造業を土台に据えるつもりであれば対応策を考えるべきだ。10—20年後にどういう国にしたいかというところに立ち戻る必要がある」
—80周年に向けて工業会をどのようにけん引しますか。
「厳しい戦いになるが、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)に対する仕事をいかに増やすかにかかっている。喚起しながら積極的に推進し、需要を取り込んでいくことが工業会に求められている。会員企業がそれぞれに適した形で投資する必要がある中で、事務局が法制面などにおいて各社にアドバイスできるように支援体制を構築しなければならない」