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産業ガス
産業ガスはモノづくり産業を支える重要なインフラ。製品開発から製造、品質管理に至るさまざまな分野で利用されている。産業ガスメーカーは成長分野をターゲットにした市場開拓を行い、安定供給する体制を整える。近年はカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けて、二酸化炭素(CO2)の回収・利用や水素の利活用を推進する。
工場ー環境負荷低減を加速 脱炭素社会実現のカギ握る
万博で水素燃料電池船/岩谷産業
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万博会場へアクセスできる水素燃料電池船「まほろば」(岩谷産業提供)
岩谷産業は万博会場の夢洲(大阪市此花区)までアクセスできる水素燃料電池船「まほろば」を運航している。会場の夢洲とユニバーサルシティポートなど近隣の船着き場を結ぶ。まほろばは燃料電池による発電とプラグイン電力のハイブリッド動力のため、CO2排出量をゼロにできるほか、燃料の臭いがなく騒音・振動が少ないのが特徴だ。
船舶向けの水素ステーションも関西電力南港発電所(大阪市住之江区)に整備しており、会期終了後は観光船として活用も期待される。まほろばは岩谷産業と関西電力、東京海洋大学、名村造船所の4者共同による「商用運航の実現を可能とする水素燃料電池船とエネルギー供給システムの開発・実証」プロジェクトの一環として誕生。同プロジェクトは21年にNEDOの「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」として採択された。
水素は脱炭素社会の実現に向けてカギとなるエネルギー。世界で水素需要は拡大しており、各国の水素産業に対する支援も、技術開発から社会実装へと移行しつつある。日本でも24年10月、水素の社会実装を強力に推進する「水素社会推進法」が施行された。政府は水素等製造事業者の事業計画を認定して資金補助などを行うほか、既存の燃料に比べ割高な水素価格に対する値差支援を行う。
大陽日酸は豊田通商、東邦ガスとともに、名古屋港や周辺地域での商用化を見据えた水素供給インフラの設計・検証を6月から始めた。25年度中に港湾内の物流車両や大型クレーンなどの荷役機器に最適な低コストの水素供給インフラについて、技術や事業面から検証する。NEDOの「水素社会構築技術開発事業」に採択された。
炭酸ガス不足を解消/植物由来でプラント新設
近年は慢性的な炭酸ガス不足が発生している。高度経済成長期に建設した製油所の老朽化・閉鎖や世界的なCNの流れを受けて、石油精製由来の炭酸ガス生産量が縮小傾向にあるためだ。溶接や食品などの業界では炭酸ガスは不可欠であり、需給は逼迫している。
岩谷産業はタイのナコーンサワン県でバイオエタノール由来の液化炭酸ガスプラントの建設を検討し、27年1月の稼働を目指す。経済産業省のグローバルサウス未来志向型共創等事業に採択された。
バイオエタノールの原料であるサトウキビは成長時に光合成で炭酸ガスを吸収するため、一連のサプライチェーン(供給網)において大気中に排出される炭酸ガスを削減できる。同社は脱炭素化の取り組みと、産業用途での炭酸ガスの供給を両立させる考えだ。
高圧ガス事故防止に向けて/JIMGA
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高圧ガスハンドブック第4次改訂版
高圧ガスは取り扱いに注意が必要な危険物。5月、東京・江戸川区の工事現場で、地中に埋まっていたアセチレン容器を重機が穿孔したとして、大規模な爆発事故が起きた。
事故防止
産業ガスの供給方法には、顧客の工場敷地内でガスを生産するオンサイト供給、ガスメーカーの製造工場からローリー車などで顧客先に輸送するローリー供給、シリンダー1本単位で販売するシリンダー供給がある。
小口顧客向けのシリンダー供給は、各地の充填所のタンクに貯蔵された液化ガスを高圧ガス容器に小分けして販売。空になった容器は顧客先から回収し、繰り返し使用する。一般的に容器は販売店やメーカーなど供給者の所有物になるが、さまざまな現場で使用された後、返却されないことも少なくない。
日本産業・医療ガス協会(JIMGA)はこの事故を受けて、高圧ガス容器取扱事業者に対し、納品した高圧ガス容器、特にアセチレンガス容器についての点検と早期回収の呼びかけを強化している。また、高圧ガス保安法では製造業者だけではなく、販売業者および消費者も保安管理・容器管理の徹底が求められる。使用済みの高圧ガス容器はすみやかに販売店に返却するよう呼びかける。
JIMGAが例年10月に全国高圧ガス溶材組合連合会など他団体と協力し、全国で行っている長期滞留容器や放置容器の回収活動では、毎年1000本を越える放置容器が回収されるという。
ハンドブック
このほかJIMGAでは、高圧ガスに関する事故やトラブルを未然に防止するため、高圧ガスの適切な取り扱いと法令の順守を促す「高圧ガスハンドブック」の発行や、高圧ガスの保安・安全に関する講習会・セミナーなども行っている。
