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産業ガス
産業ガスはモノづくり産業を支える重要なインフラ。製品開発から製造、品質管理に至るさまざまな分野で利用されている。産業ガスメーカーは成長分野をターゲットにした市場開拓を行い、安定供給する体制を整える。近年はカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けて、二酸化炭素(CO2)の回収・利用や水素の利活用を推進する。
半導体・鉄鉱…産業界で活躍
産業ガスは製造プロセスのさまざまな分野で使用されるガスで、窒素、酸素、アルゴンなどがある。単体で用いられるもののほか、2種類以上のガスを混合して機能性を向上させたもの、さらには半導体製造や分析機器の校正用の高純度ガスまで種類は多岐にわたる。
鉄鋼、化学、建設、エネルギー、自動車、機械、半導体、航空・宇宙など幅広い分野で利用されており、用途はさまざまだ。
鉄鋼業では高炉の燃焼温度上昇に酸素、鋼の熱処理に窒素やアルゴンが使われる。化学分野では石油精製やプラスチック製造の材料ガスとして水素、工場の防爆用には窒素が、建設・機械分野では溶接・溶断用ガスとしてアセチレンと酸素、アーク溶接用シールドガスとして炭酸ガスやアルゴンが使われている。
さらに半導体デバイスなどエレクトロニクス製品の製造には特殊材料ガスのほか、大量の窒素や水素が必要になる。シリコンウエハーの製造にはアルゴンも使用される。近年は国内の半導体製造工場の増設や新設に対応し、産業ガスメーカーもそれらを支える体制を整えている。
日本酸素ホールディングス(HD)傘下の大陽日酸は5月、持続可能な半導体製造工程の実現に向けて、環境負荷を低減できるガス技術開発を加速すると発表した。ベルギーの国際半導体研究機関「imec」が進める半導体業界全体の環境負荷低減に関する研究プログラムに参画し共同開発を進めていく。
日本酸素HDグループは中期経営計画における重点戦略の中で、「サステナビリティ経営の推進」「カーボンニュートラル社会に向けた新事業の探求」「エレクトロニクス事業の拡大」を掲げている。
【カーボンニュートラル】CO2回収・利用/エア・ウォーター
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次世代型CO2回収装置「地球の恵みステーション」(エア・ウォーター提供)
高圧ガス業界は電力使用量が日本国内の総需要電力量の約1%を占める電力多消費産業。産業ガスメーカーではCNに向けた取り組みを強化している。
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開催中の大阪・関西万博では未来技術やサービスを実証する「未来社会ショーケース」事業を実施している。その中の一つで脱炭素や資源循環を実証する「グリーン万博」にはエア・ウォーターが参画。会場バックヤードにあるカーボンリサイクルファクトリーというエリアで、次世代型CO2回収装置「地球の恵みステーション」の実証を行っている。
長年培ったガス製造・エンジニアリング技術や、ドライアイス国内トップシェアメーカーとしての知見を生かす。
カーボンリサイクルファクトリーはCO2を「あつめる・つくる・つかう」最新技術の実験場。大気や排ガスからCO2を回収し、メタネーション技術を用いて会場内の給湯設備や厨房(ちゅうぼう)で燃料として使用している。
地球の恵みステーションはエア・ウォーターが戸田工業、埼玉大学とともに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の補助事業として開発を進めている。次世代のCO2吸収材を使用して万博会場内の排ガスから低圧・低濃度のCO2を効率よく分離、回収。それをCO2液化設備「ReCO2 STATION」で気体から液体にして純度を高める。次世代のCO2吸収材はCO2を脱離する際に、設置する工場や施設にボイラなどの追加熱源が不要なため、低コストで導入できるのが特徴。
回収したCO2は大阪ガスのメタネーション実証設備「化けるLABO」に供給され、水素と化学反応させることでメタネーションの原料として活用される。また、一部でドライアイスを製造し、万博会場内で冷却材として有効活用する。
近年、一般工場の燃焼排ガスをはじめとする低純度CO2回収のニーズが特に高まっているという。エア・ウォーターは地球の恵みステーションの実証を経て、低コストの次世代型CO2回収設備を本格展開し、2030年に年間CO2回収量を現状の3倍超となる100万トンに拡大する計画を立てている。工場などを持つ企業のCN化に貢献していく。
