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住宅産業
高付加価値化で競演 ハウスメーカー新戦略
オーダーメードに技術で応える
住宅業界では資材や人件費などの建築コストが高騰し、一戸建て住宅の価格が上昇し続けている。ハウスメーカーは一戸建て事業で競争力を磨こうと高付加価値化に注力。住宅の性能とデザイン性の両立を図るほか、都市部の高額商品や地方での平屋など、エリア別の販売戦略を展開し成果が出つつある。良質な住宅ストック形成に向けた国の支援策を受け、省エネルギー化や高断熱化、環境対策も進む。今回は各社の施策や商品開発の現況を探る。
性能・デザイン両立
土地や住宅の価格動向を踏まえ、ハウスメーカーは建築コストを抑えながら住宅の高品質化で差別化を図り、社会課題の解決に取り組む。
規格住宅やセミオーダー住宅でコストを低減する一方、オーダーメードの需要に対しては独自技術や知見を生かした高価格帯の商品を訴求する。
4月には建築基準法改正で確認審査の一部を省略できる「4号特例」の範囲が縮小。特に国内の一戸建て住宅の約9割を占めるという木造住宅に対し、性能や構造安全性への要求が一層高まる。住宅市場は新設着工戸数が減少し停滞感が漂う中、住宅生産団体連合会(住団連)が発表した「経営者の住宅景況感調査」では、高付加価値化に関する足元の成果が示された。
一戸建て注文住宅の2025年1-3月の受注実績について「戸数は微減だが高付加価値提案が奏功し1棟単価がアップ」「高価格帯の受注がけん引」「富裕層向けは堅調」といったコメントが寄せられている。今後も顧客ニーズの変化を捉えた各社の商品戦略が注目される。
多機能HEMS搭載
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大和ハウス工業の富裕層向け木造一戸建て住宅「プレミアムグランウッド スマイルエディション」
大和ハウス工業は富裕層をターゲットに鉄骨一戸建て住宅「ジーヴォシグマプレミアム スマイルエディション」と、木造一戸建て住宅「プレミアムグランウッド スマイルエディション」を24年に発売した。雨天時でも日常と同等の電気が約8日間使えるシステムや、余剰電力を蓄電池と電気自動車(EV)に同時充電できる同社初の「V2H蓄電システム」を標準搭載。電気代を抑え、停電時などの非常時の電源も確保する。
全館空調システムや第1種熱交換型換気システムを組み合わせ、室内を快適な空気環境に調整。多機能の家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を搭載し、住宅設備や家電をスマートフォンで操作できる仕組みも提案する。
3階建て大型邸宅投入
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都市における理想の暮らしを追求した旭化成ホームズの大型邸宅「フレックス アスガルド」
旭化成ホームズは3階建て大型邸宅「フレックス アスガルド」を1月に投入した。重量鉄骨・システムラーメン構造の住宅ブランド「ヘーベルハウス フレックス」シリーズで、ハイエンドの建て替え層を主なターゲットとする。新たな天井高バリエーションを追加し、1-2階それぞれに高さ2560ミリメートルの選択が可能になった。
新開発した大開口のアルミニウム樹脂複合サッシは框(かまち)がほぼ見えないデザインにし、ガラス面積を従来比で約6%拡大。断熱性を高めながら開放感を演出する。3―4階建てのみ外壁部の断熱材は厚みを60ミリメートルから70ミリメートルに増強した。同時に、同社は全ての一戸建て商品で断熱等級「6」を標準仕様化している。
地域ビルダーと供給
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積水ハウスは木造住宅の耐震性を高める共同建築事業「SI事業」をパートナー企業と展開する
積水ハウスは地域ビルダーと共同で木造住宅を建築する「SI事業」の新たなパートナー企業3社と1月に提携した。締結したのは土屋ホーム(札幌市北区)、トータテハウジング(広島市中区)、悠悠ホーム(福岡県大野城市)。パートナー企業は合計8社になり、高耐震性の木造住宅の供給が東北から九州まで幅広い地域で可能となった。
「スケルトン(S)」部分の基礎・躯体・接合部を積水ハウスが担い、「インフィル(I)」部分の外装・内装をパートナー企業が担う。積水ハウスはSI事業に提供する独自の耐震技術「ダイレクトジョイント構法」をバージョンアップ。耐力壁や屋根、床の強度を高め、耐震性の確保と間取りの自由度を実現する。
富裕層の”こだわり”応える
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高い設計力とリーダーシップを持つチーフデザイナーが、顧客の要望やこだわりに応える住まいを提案する(住友林業)
住友林業は高レベルの設計士が富裕層のこだわりに応える「邸宅設計プロジェクト」を拡大する。年に始め、従来の高級物件の枠を超えた邸宅ニーズに対応。社内基準をクリアした設計担当者をチーフデザイナーと認定し、全国の支店に配置する。
邸宅設計プロジェクトはチーフデザイナーを中心に、伝統・文化的品位を感じるデザインを追求。木や光、風といった自然の要素を、木質部材を中心とした素材とバランス良く配分し、屋外とのつながりを持たせた「バイオフィリックデザイン」などを取り入れる。耐震性と設計の自由度を両立したビッグフレーム(BF)構法を基盤とし、GX(グリーン・トランスフォーメーション)志向型住宅にも対応する。
都市型デザイン展開
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積水化学工業の木質系一戸建て注文住宅「ザ・デザイナーズ グランツーユー」
積水化学工業は木質系一戸建て注文住宅の新モデル「ザ・デザイナーズ グランツーユー」を4月に発売した。都市近郊のハイエンド層における設計デザインと建物性能の需要に応えようと、デザイン性・断熱性・スマート性能をパッケージ化した鉄骨住宅「ザ・デザイナーズハイム」を23年に投入。今年2月に平屋住宅にも展開した。
ワンランク上のニーズに対応する邸別設計のシリーズとして、木質系住宅に拡大。独自の木質ユニット工法による高強度・高品質な構造体で、美しい工業化建築デザインを実現する。新開発のHEMSの空調制御を行うほか、断熱等級「6」に標準対応する。
環境・家計に優しい住まい
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ポラスグループの中央住宅が販売する分譲住宅「アイムス花小金井P.T.SITE」
ポラスグループの中央住宅(埼玉県越谷市)は、東京都西東京市で全35邸の分譲住宅「アイムス花小金井P.T.SITE」を販売中だ。全邸が「東京ゼロエミ住宅」の水準Bに対応。出力が3キロワット以上の太陽光パネルやクラウド型蓄電池、HEMSを標準搭載する。さらに断熱性の高いツーバイシックス工法と高性能樹脂サッシを採用し、環境にも家計にも優しい住まいを実現した。
脱炭素社会の実現に向け太陽光パネルを搭載した住宅が増加する中、斜線制限が厳しい条件下でも敷設に適した屋根工法を取り入れた。太陽光パネルの性能を最大限に引き出す屋根設計を実現。屋根勾配を敷地条件に応じて柔軟に調整しつつ、南面へ効率良くパネルを配置し、発電量を確保しながら意匠性も優れた屋根形状を創出している。
自然素材・無垢の木で住宅
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自然素材をふんだんに使ったこだわりの住宅(木のすまい工房)
木のすまい工房(千葉県八千代市)は自然素材と無垢(むく)の木にこだわった注文住宅を提供する。断熱材にセルロースファイバー、柱や土台には含水率15%以下の国産の檜、床には無垢材、壁材にはしっくいをそれぞれ使用することにより、高い調湿性能が家を強くし、快適で美観にも優れる「強さと美しさにこだわった」室内空間を実現する。
自然素材を多用しながら標準仕様で「長期優良住宅認定制度」の基準をクリアし、さらに第三者機関による10回の検査を実地することで建物の安全性を検証している。
4月には東京都品川区にショールームを開設。質感や家の構造などを知ることができる。同社は施主ととことん打ち合わせをして”遊び心”も形にするのが売り。
