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北海道産業特集(2024年9月)
日本の未来を描く 北のフロンティア
北海道ニュービジネス協議会会長 小砂 憲一氏 /ビジネスには志が必要 ビジョン明確に
「ビジネスを興すにも志が必要だ」と説くのは、アミノアップ会長であり北海道ニュービジネス協議会(HNBC)の会長を務める小砂憲一氏。北海道の産業構造が大変革期を迎えた今だからこそ、「若手起業家は明確なビジョンを示してほしい」と語る。人材育成に向けたこれからを聞いた。
―大学生を対象とするビジネスプランコンテストは今年で7回目を数えます。
「そう。『道内学生によるものづくり製品化&事業化アイディア募集』はHNBCや北海道経済団体連合会、北海道科学技術総合振興センター、札幌商工会議所の4者がスクラムを組んで進めているもの。私たちのような民間企業も加わって若い人たちの技術や事業の構想にふれる機会をつくっている」
―熱心な学生が多いと聞きました。
「みんな熱心だ。それに年々、プレゼンテーションの力を身に着けてきている。意欲的な若者が増えてきた」
―物足りない点はありますか。
「本気度がもう一歩かな。自分が考え出したことへのこだわりや諦めない姿勢がもっと必要かもしれない。それと先々への明確なビジョンがほしい。自分のプランが実現すれば世の中をどう変えていけるか。ビジネスには志が必要ということをしっかり認識してもらいたい」
「明日を担う若い人には頑張ってほしい。有名になる、売上高が上がるなどそれらはあくまでも結果としてついてくるものだから」
中小企業基盤整備機構北海道本部 /心構え・覚悟学び「全てが変わった」
「初めて研修を受けたときは目の覚める思いだった」と語るのはエノ産業(北海道東川町)の野呂千晶社長だ。2017年、当時副社長だった野呂氏は、中小企業基盤整備機構北海道本部が中小企業大学校旭川校で開いた経営管理者養成コースに参加した。約半年間におよぶ受講の中で「経営者としての心構えと覚悟」などを学び、「いかに自分が大変な先々に向かおうとしているかを痛感した」と当時を振り返る。
中小機構北海道本部による経営管理者養成コースは、質の高い経営を行うための総合的・創造的マネジメント能力の向上を目指すもの。グループディスカッションなどで受講者自身が考えながら進める参加型実践的研修として知られる。20人という少数の参加者が180時間にわたって経営のイロハを学ぶ。
24年4月、6代目社長に就いた野呂氏は「あの頃は書籍を読んで社長学を学ぼうとしていた。思い立って研修を受け、全てが変わった」。その後、エノ産業からは毎年、従業員が多くのプログラムを用意する中小機構の研修に参加。今年までの7年で合計の参加人数はおよそ40人。全社員の6割を占めるに至っている。
野呂氏は「引き続きこれからも研修には参加させる。瞬間的な熱さだけではダメ。時間をかけて自分自身と会社に落とし込み、実践することが重要」と力を込めた。
中山機械 /船舶自走式運搬機械を開発・製造 年数件の受注目指す
中山機械(北海道北広島市、高田志郎社長)は、新規事業として船舶自走式運搬機械の開発と製造に乗り出している。国内の港湾で使われている同種の機械はほとんどが海外製。港湾機能の一層の効率化が求められる中、需要増加が見込まれ、中山機械では年間数件の受注を目指す。
マリンストラドルキャリアと呼ばれる船舶自走式運搬機械は、陸揚げする船舶を岸壁に着岸させ、船の底部分2カ所をキャリアにぶら下がったワイヤに通し、船舶を持ち上げて陸上に揚げる。そのままキャリアを自走させて船舶のメンテナンス場所まで運ぶ。すでに常呂漁業協同組合(同北見市)から受注し、2025年春に稼働する予定だ。
中山機械は1912年(明治45)創業の老舗メーカー。製造業の歴史が浅い道内では最古の部類に数えられる名門企業だ。最近では同じ北広島市内に完成した「エスコンフィールド北海道」の屋根開閉装置を開発、製造したことでも知られる。
旭イノベックス /ユーザーの声反映 使いやすく
旭イノベックス(札幌市清田区、星野幹宏社長)が2023年に発売した電気タオル・ウォーマー「ホットeラック」をバージョンアップし、ユーザーの人気を集めている。新たに、電気工事が不要なコンセント付きタイプを追加したほか、タオルを掛けるバーを3本にするなど機能を追加。ユーザーのリクエストを具現化し、使い勝手を高めた。
ホットeラックは、タオルを掛ける部分から約42度Cの温熱を発することで、使用後に濡れたタオルの乾燥時間を短縮するもの。自然乾燥に比べ除菌率は99%以上もの効果を発揮するという。
新発売のマルチステージ(3段式)フラットタイプ「HEC1-FT」シリーズでは、3本のバーにタオルを3枚掛けられ、さらに1枚のタオルを上段に掛ければより短時間で乾燥させられる。3時間で電源が切れるオフタイマーを備える上、電源オンから12時間後には自動的にオフになる仕組み。安全性にも配慮している。
キメラ /超精密金型部品加工 品質保証を徹底
超精密金型部品加工で圧倒的な技術力を持つキメラ(北海道室蘭市、藤井徹也社長)が、徹底してこだわり続けるのが品質保証だ。高い技術力と品質保証は表裏一体。日本品質保証機構(JQA)による各種品質保証規格を道内でもいち早く取得し、他の追随を許さぬ存在となっている。
その代表例が「JIS Q 9100」「ISO9001」の取得。航空宇宙や防衛産業に特化した品質マネジメントシステムの国際規格で、キメラが世界的な航空宇宙関連メーカーであることの証だ。製造現場では試作金型を最短2日、量産金型も最短5日で仕上げ、月1万部品および同50金型を立ち上げる生産能力を持つ。
道内では大樹町に本社を置くインターステラテクノロジズが民間ロケットの製造を進めている。この基幹部材にもキメラの技術が投入されている。
ワールド山内 /航空宇宙産業向け部品製造へ認証取得
機械加工やステンレス加工で知られるワールド山内(北海道北広島市、山内雄矢社長)は2023年、航空宇宙や防衛産業向けの品質マネジメントシステム認証「JIS Q 9100」「ISO9001」を取得。新事業参入への第一歩を踏み出した。言うまでもなく航空宇宙産業向け部品製造と加工を受注するためで、22年秋には航空機用部品の新工場を建設し、準備は万全だ。現在、年内の受注に向けて最後の詰めを急いでいる。
山内社長は「価値観が大きく変化し、ニーズも多様化する。私たちがいかにして応えていけるか。どのようにして顧客の満足度と信頼を高められるか。大きな課題ではあるが、それが会社の原動力にもなる」と明言。金属製品の総合百貨店を標榜し続け、千歳市に進出する次世代半導体工場関連の受注も視野に入れている。
エゾリンク /社会課題解決をビジネス化 研究知生かす
エゾリンク(札幌市白石区、安東義乃代表社員)は北海道大学発スタートアップ認定企業として2023年5月に設立したばかり。理学や環境科学の博士5人は、専門人材が不足している分野をターゲットに社会の課題解決をビジネス化する。
対象分野は幅広い。環境教育では教育プログラムを開発し、地域の活性化では科学的な知見から地域の魅力を再発見する手だてを見つける。観光資源の発掘や創出も科学的な視点で手がける。例えば学校の教育・科学イベント、自治体や企業の職員研修など多岐にわたる。
「大学の研究知を社会に生かし、専門人材が活躍できる場を」と始まったエゾリンクの挑戦。道北部の中川町と音威子府村にまたがる北大中川研究林では、公認ガイドの養成プログラム作成や官学連携など地域活性化に向けた活動を進めている。
さっぽろ産業振興財団 /起業オフィス 手厚い支援体制 全29室満室
札幌市の外郭団体・さっぽろ産業振興財団(札幌市白石区)が運営する施設の一つがインキュベーションオフィス「Sapporo Business VILLAGE」。インキュベーションマネージャー3人を配し、手厚い支援体制を敷くほか、24時間出入り可能といった利便性もあって全29室が満室(9月末現在)と好評だ。
立地は地下鉄東西線東札幌駅から徒歩7分。警備員が常駐し、女性起業家にも安心の環境を整えている。入居企業にはIT系、サービス業、クリエーティブ系などスタートアップ予備軍も含め精鋭27社が顔をそろえる。
入居条件は①札幌市内の法人(設立後5年以内)か事業を営んでいない個人②これから新規事業を始める同市内の法人③同市外の法人で市内に事務所を設ける―など。入居は最長3年。問い合わせ先は011・817・8911。