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研削盤と研削加工
砥石表面測定による研削加工のびびり振動の回避技術
【執筆者】日本大学理工学部機械工学科 教授 山田高三
びびり振動
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図1 円筒研削盤のびびり振動要因
びびり振動とは研削中に生じる振動のことで、強制振動と自励振動に分けることができる。強制振動は研削盤の固有振動数、砥石や工作物の回転数、砥石の振れなどに起因するものである。これは、研削により生じたびびり振動の周波数をこれらと比較することで、例えば砥石の回転周期とびびりの周期が一緒であれば、砥石の振れが原因であるため、ツルーイングのし直しにより振れを除去することで回避することができる。
一方、自励振動は研削盤の特性に関係なく、研削時の微小な切り取り厚さの違いに起因する研削抵抗の違いで生じるものである。これを再生型びびり振動と呼ぶが、これを回避するのが一般的に難しい。そこで、これを回避する方法について説明する。
図1に円筒研削盤におけるびびり振動のモデル図を示す。砥石と工作物は円筒研削盤上でそれぞれの支持剛性と減衰特性により結合している。また、砥石と工作物の接触部では砥石の弾性変形に起因する接触剛性が生じている。一方、研削中においては、研削剛性と研削粘性が生じている。
研削剛性とは工作物の切れ味を示すもので、研削抵抗を工作物除去量で除したものである。これは砥石と工作物の組み合わせで決まり、小さい方が削りやすいことを示す。
研削粘性とは砥石が工作物を抑えつけるように作用するもので、振動速度に比例しダンピング効果があるため粘性と呼ばれている。これは、切り込み量や砥石・工作物の周速度に依存する。
これらの剛性や減衰・粘性の組み合わせが悪いとびびり振動が生じることになる。これらのうち、切削加工にはなく研削加工だけに生じるものが、砥石の接触剛性と研削粘性である。前者は砥石のドレッシングにより変えることができ、後者は切り込み量や研削速度で変えることができる。
砥石の表面測定
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図2 円筒研削盤での砥石表面形状の3次元測定システム
研削加工で重要になるのが、砥石の表面状態であり、この良しあしで加工面品位が決まる。そこで図2に示すように、円筒研削盤にレーザー変位計を搭載し、砥石表面を3次元で測定システムを開発している。砥石を低速で回転し、その表面形状をレーザー変位計(キーエンス製、CL-PT010)を用いて測定する。またその際の砥石の回転角度をロータリーエンコーダー(オートニクス製 E60H20-8192-3-T-5)で測定する。これら測定した二つの結果から砥石全周の表面形状を得ることができる。
「ドレッシング」でびびり振動を回避
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図3 砥石表面の測定結果(WA60K6V)
図3に砥石(といし)表面の測定結果を示す。(a)がドレッシングの際にドレッサーの送り速度を遅くして細かくドレッシングした結果で、(b)が逆にドレッサーの送り速度を早くして粗くドレッシングした結果である。それぞれの左上の図が砥石直径350ミリメートルの全周を幅2ミリメートルで測定したものであるが、(a)は多くの砥粒が砥石表面に存在しているが、(b)はドレッサーが通過した痕が見られ、砥石表面の砥粒数が少ないことがわかる。この測定結果から、(a)による研削では仕上げ面粗さは良くなるが研削抵抗が大きくなり研削焼けが危惧されることや、(b)では研削抵抗は小さく研削焼けは生じないが粗さは悪くなることが予想される。
そこで、測定した砥石表面形状と仕上げ面粗さ、研削抵抗を用いて機械学習をさせることで、その砥石表面に適した研削条件を導くAI(人工知能)研削盤を構築することも可能であり、これは今後の研究課題である。
砥石は砥粒を結合剤で固めたものである。すなわち、砥粒と砥粒とは結合剤で結合されているため、砥粒に力が作用すると結合剤が変形する。このときの剛性を砥粒支持剛性と呼んでおり、この一つひとつの剛性を合わせたものが砥石の接触剛性となる。そのため、砥石表面上の砥粒数の違いにより砥石の接触剛性が変わることになる。
一方、前述のようにびびり振動の要因として砥石の接触剛性が挙げられるが、これは理論によると低いほうがびびり振動を回避することができる。
図3に示したように、ドレッシングリードにより砥石表面を変えることができた。そこで、ドレッシングを粗くすると、図3(b)に示したように砥粒数を少なくすることができる。図に示すように、これらの砥粒一つひとつが砥粒支持剛性で結合されているが、支持剛性が少ないため接触剛性を小さくすることができる。
そこで、ドレッシングリードを変えてびびり振動を回避できるかを確認した。その結果を図4に示す。用いた砥石はビトリファイド砥石(WA60J7V)とレジノイド砥石(WA60J7B)である。これらをドレッシングする際に工作物1回転当たり0・025ミリメートルと0・18ミリメートルの送りで行い、細かい砥石面と粗い砥石面に仕上げた。
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図4 ドレッシングによるびびり振動の回避
図4の上図が砥石表面の測定結果から砥石の接触剛性を算出した結果である。▢のプロットが細かいドレッシング、〇が粗いドレッシングの砥石面である。横軸が工作物周速度になっているが、周速度が速くなるに連れて研削抵抗は大きくなる。砥石が工作物と接触する際は、研削抵抗が大きいほど接触砥粒数は多くなる。そのため、同じ砥石面でも周速度により接触砥粒数が異なるため接触剛性が異なっている。
これを踏まえて図4を見てみると、両砥石において粗いドレッシングで遅い周速度のときに接触剛性が低いことがわかる。この砥石を用いて研削した際のびびり振動数を測定した結果が下図となる。白抜きのプロットで示した粗いドレッシングにおいて、びびり振動数が0ヘルツとなっており、びびり振動が生じていないことがわかる。
このように、円筒研削においてびびり振動が生じた際には、ドレッシングリードを長くして粗い砥石面にすることで、びびり振動を回避することができる。
「切り込み量」でびびり振動を回避
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図5 切り込み量を変えたびびり振動の回避
びびり振動を回避するもう一つの手段が、研削粘性を高くする方法である。研削粘性は先に述べたようにダンピング効果により振動を抑えるものである。これは、切り込み量と研削幅に比例し、砥石と工作物の周速度に反比例する。すなわち、切り込み量を大きくし、研削幅を広くし、周速度を遅くすると研削粘性が大きくなり、びびり振動を抑えることができる。
そこで、研削中に切り込み量を変えてびびり振動を回避した実験結果を図5に示す。実験は、砥石の切り込み量を工作物1回転あたり0・19マイクロメートルの送りで円筒プランジ研削し、その後0・57マイクロメートルに変えて行った。図より、研削初期はびびり振動は生じていないが、真実切り込み量が増加し定常研削になるとびびり振動を生じている。この状態から切り込み量を変えたところ、びびり振動が回避され、図5の上図に示した研削抵抗からもびびりが生じていないことがわかる。
びびり振動が生じた際は研削抵抗を小さくしたほうが回避できるように感じるが、切り込み量を大きくし研削粘性が大きくなるように変えることで回避することができる。
研削条件の最適化と振動制御
測定技術の向上により、砥石表面を定量化できるようになった。しかし、この砥石表面により仕上げ面粗さや研削抵抗を定量的に算出するには至っておらず、この点はAIの活用が待たれる。
一方、びびり振動については研削理論と測定技術により、びびり振動を回避する研削条件を求めることができる。もちろん、AIを用いたびびり振動の回避も可能であるが、理論を用いることで無駄のない最適な研削条件を求めることが可能となる。本記事で、作業者がびびり振動による不良品から回避がなされれば幸いである。
