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第62回技能五輪全国大会/第44回全国アビリンピック(2024年11月)
11月22日から25日までの4日間、愛知県国際展示場(愛知県常滑市)を主会場に「第62回技能五輪全国大会」が開かれる。愛知県内の5会場と県外の6都県8会場で選手たちが技能を競い合う。同時開催で「第44回全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)」が22日から24日の3日間、愛知県国際展示場で開催される。今年9月には2028年に愛知県での技能五輪国際大会の開催が決まったばかり。技能競技への注目はより高まりそうだ。
仏リヨン大会、金メダル5個獲得 参加者過去最多の1360人
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全国大会で正確な技術を見せたきんでんの郡安選手
昨年の技能五輪全国大会は「メカトロニクス」や「情報ネットワーク施工」など31職種が24年9月に仏リヨンで開催された国際大会に派遣する日本代表選手の選考を兼ねており、全国大会で活躍した多くの選手が国際大会で熱戦を繰り広げた。
国際大会は69カ国・地域から過去最多となる1360人の選手が出場。日本選手団は全59職種のうち47職種・55人が出場した。日本は「産業機械」でデンソーの清水源樹選手が優勝し3連覇を達成するなど金メダルを5個獲得し、国・地域別の金メダル獲得数で5位となった。首位の中国は金メダル36個で、2位の韓国(10個)に3倍以上の差をつけた。3位はフランスとスイスで、ともに6個だった。
このほか日本は「自動車板金」でトヨタ自動車の小石嵩陽選手、「車体塗装」で同星野悠音選手、「再生可能エネルギー」できんでんの郡安拓海選手、「美容/理容」でグラムール美容専門学校の濱吉優希選手がそれぞれ金メダルを獲得。銀メダルは5個、銅メダルは4個で計14個のメダルとなった。企業別ではトヨタ自動車が「自動車板金」と「車体塗装」で金メダルに輝き、計5個のメダルとなった。日本勢10連覇の期待がかかっていた「情報ネットワーク施工」は北陸電気工事の野ツ俣翔也選手が銅メダルを獲得した。
「産業機械」に出場した清水選手は「金メダルを取れてほっとしている」と胸をなで下ろした。また、「自動車板金」と「車体塗装」でそれぞれ金メダルを獲得したトヨタ自動車の小石選手、星野選手は2021年入社の同期。ともにトヨタ工業学園出身で切磋琢磨してきた。小石選手は「6年前から追い続けてきた夢がかなってうれしい」と笑顔で語った。
10連覇の期待がかかっていた情報ネットワーク施工の野ツ俣選手は4日間の競技を振り返り、「うまくいかないことばかりで、一つひとつの課題を乗り切るのが大変だった」と話した。10連覇が達成できなかったことに関しては「ここまでつないだ9人の先代に申し訳ない」と悔しさをにじませた。
企業中心の選手育成、28年に向け課題も
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国際大会でも活躍したデンソーの杉本三弥選手・鳥喰健太郎選手
前回日本で国際大会が開かれた07年の静岡大会では日本の金メダル獲得数は16個で国別順位は1位だった。今回首位の中国は金メダル36個、2位の韓国は10個と日本の5個、5位とは大きな差が開いた。近年は中国や韓国の勢いが増しており、日本の順位は停滞している。順位低下を現場力の低下と見る向きもあるが、技能五輪にかける各国の投資戦略の違いも大きくかかわっている。
海外勢は職業訓練で力を付けた学生の参加が多い一方、日本勢のほとんどが大企業所属だ。中国・韓国は国を挙げて戦いに挑むが、日本は民間企業が選手を育成し手弁当で競技に参加する。今回最多の金メダルを獲得した中国は多額の資金を投入して技能競技国家研究センターを設置。韓国でも選手や指導者に賞金や勲章を授与しており、国内大会のレベルも高い。
順位の開きには、国の投資額や戦略の違いが鮮明に表れている。日本が再び金メダル数で首位に輝くには、訓練施設や最新鋭の機械設備の整備や、機運の醸成が不可欠だ。また国内大会のレベルを国際大会に近づける必要もある。現状、国内大会とは課題のレベルや設備が異なるため、国際大会の出場が決まってから必要な機械設備の習熟などが求められるという。
また日本では大会の都度企業がエキスパートを選出するため、ノウハウが蓄積しにくいという課題もある。出場企業が変わるたびにエキスパートも交代するため、その場限りとなり戦略面で弱くなってしまう。日本では21年ぶりの国際大会の開催に向け、企業任せでない技能者の育成が、重要になるだろう。
20大会連続最優秀技能選手団賞へ 製造業の強さ見せる愛知勢
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試作モデルの22連覇に貢献したトヨタ自動車の植田創一朗 -
昨年11月に愛知県国際展示場など13会場で開かれた「第61回技能五輪全国大会」では41職種、1010人が参加した。このうち企業別ではトヨタ自動車が9職種で金メダルを獲得、デンソーの5職種がこれに続いた。4年ぶりに入場制限なく開催され、会場は家族や友人、同僚らが応援に駆け付け、熱気に包まれていた。
トヨタ自動車の金メダル数は22年大会の5職種を大きく上回り、「試作モデル製作」で22連覇、「ITネットワークシステム管理」は16連覇を達成。あらためて人材の豊富さを見せつけた。同社の畑田翼選手が金メダルを獲得した「プラスチック金型」は、茨城県内で実施。金型の設計から機械加工、仕上げ加工、成形の一連の工程で技能を31人の選手が競った。22年大会より課題の難易度は高くなり、課題の寸法変更が当日発表されるなど柔軟な対応力も要求されるようになった。競技課題の金型には角部が多く設定され、離型の難しさに多くの選手が苦戦する一方、畑田選手は「メンタル面を意識して練習してきた。本番もいつも通りにできた」と集中力の高さを見せた。
こうした自動車関連メーカー所属の選手の活躍もあり、愛知県は全国最多の金メダル19個、入賞者95人となり、19大会連続で最優秀技能選手団賞(厚生労働大臣賞)に輝いた。これに次ぐ優秀技能選手団賞には東京都、神奈川県、兵庫県が選ばれた。
閉会式で愛知県の大村秀章知事は「次世代の良き手本として、特技をしっかり引き継ぐことを期待する」と述べた。同県は25年まで3年連続で全国大会の開催地となり、さらに28年の国際大会に向け技能競技をより活性化させていく。まずは今年の20大会連続の最優秀技能選手団賞に期待がかかる。
モノづくりの楽しさ来場者に伝える 地域の特徴生かした取り組み多彩
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前回は会場となる常滑市の地域産業、陶芸を来場者が体験した
技能競技を広める取り組みも多彩だ。メーン会場となる愛知県国際展示場では専門家と県内の工業・農業系高校の学生が技能競技の見どころを解説するほか、県内の小中学生向けに見学ツアーも実施する。普段技能競技にかかわりのない来場者にも興味をもってもらえるよう、県が2014年大会から続けてきた取り組みだ。
また、今回は大会で授与されるメダルのデザインを県内の学生から公募した。同県豊田市の中学生の案が最優秀賞に選ばれた。案を基にデザインされたメダルが、技能五輪、アビリンピックの入賞者に授与される。同県あま市の伝統工芸である七宝焼でデザインを表現するなど、愛知県大会ならではの技術が用いられた。
さらに会場では来場者が楽しめる併催イベントを開催する。23日には職人の技を体験・見学できる「ものづくりチャンプ」が開催される。建築大工のカンナ削りの技術や瓦用の粘土を使った小物づくりを体験できるほか、和菓子やフラワーアレンジメントといった伝統技術や技能競技のステージ実演も実施する。このほか革を使ったコインケースや食品サンプルなどの製作体験コーナーも設ける。県内の高校生らが来場者にロボットのプログラミングなどを教えるブースもあり、スタンプラリーも実施する。