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産業ガス
産業ガスはモノづくり産業を支える重要なインフラとして、製品開発から製造、品質管理に至るさまざまな分野で利用されている。産業ガスメーカーは成長分野をターゲットにした市場開拓を行っている。また世界的な脱炭素の流れに対し、水素ガスの安定供給に向けた取り組みも活発化。政府が後押しする希ガス(レアガス)の国産化も進められている。
クリーン社会
CO2排出40%削減
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岩谷産業の中央研究所・岩谷水素技術研究所に導入した純水素型燃料電池
岩谷産業は4月、コスモエネルギーホールディングス(HD)と資本業務提携契約を結んだ。水素エネルギー社会に向けたインフラ整備や、国内におけるグリーン水素製造などの分野で、両社の経営資源を最大限に活用する。産業ガスや液化石油ガス(LPG)などの既存事業でも関係強化を図る。
岩谷産業は3月にコスモエネルギーHDへの追加出資を行い、同社を持分法適用会社とした。かねて水素ステーションの共同運営も手がけており、4月には岩谷コスモ水素ステーション平和島(東京都大田区)が開所した。今後、脱炭素に向けて協業領域を拡大する。
また岩谷産業は兵庫県尼崎市に構えるグループの研究開発拠点「中央研究所」で、「岩谷水素技術研究所」として水素関連を分離独立し、CNの実現に向けた事業を強化している。23年度、中央研究所・岩谷水素技術研究所に、純水素型燃料電池を導入した。液化水素貯槽から水素を供給し、純水素型燃料電池で発電するもので、出力5キロワットの設備を20台連結し、合計100キロワット発電する。
同研究所でのCO2排出量を、19年度比で約40%削減できる。今後は太陽光パネルの増設なども進めることで、最短で27年度にも同比100%削減を目指す。液化水素を気化する際の冷熱の回収や、グリーン液化石油ガス(LPG)の実用化などを進め、排出削減量の拡大を図る。
CO2高濃度改修 60%実現
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高濃度の回収を可能にした小規模CO2回収装置(大陽日酸)
日本酸素ホールディングス(HD)傘下の大陽日酸は、1日当たり約10トンのCO2を回収する装置で、適用可能な原料CO2の濃度範囲を拡大した。同社のガス分離精製技術を活用し、20-40%としていた原料濃度範囲を、最大60%に引き上げた。高濃度の回収を可能にし、顧客の要望に応えた。回収したCO2濃度は98%。原料、CO2濃度が20%未満の低濃度である排出源からの回収についても技術開発を続けていく。
また日本政府が経済安全保障の観点から、半導体製造に不可欠で世界的に需要が伸びている希ガスの国産化を後押しする中、大陽日酸は半導体製造に不可欠な希ガスを国内で増産し、サプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化を図る。
JFEスチールとの共同出資会社であるJFEサンソセンター福山工場(広島県福山市)では、省エネルギー型の最新鋭大型空気分離装置(ASU)を設置するとともに、希ガスのクリプトン、キセノンの製造プラントを新設、24年春に稼働した。希ガスは製鉄所などに酸素や窒素を供給するASUの副産物。日本には大型の分離装置が少なく、大半を輸入している。
大陽日酸ではこのほか、君津サンソセンター(千葉県君津市)が新設するASUに希ガス生産設備を設ける。福山工場と合わせるとクリプトン、キセノンの国内生産能力が現状比で約3倍になると見込む。26年をめどに、現在国内で作られていないネオンの生産も行う。
高圧ガス事故防止に向けて
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大陽日酸の「みんなガスシル」は高圧ガスの安全な取扱いに関する説明や操作実演などの動画を視聴できる
高圧ガスは取り扱いに注意が必要な危険物。経済産業省によると23年の事故件数は約600件となっている。冷凍事業所での事故が約半数と多く、一般製造事業所の高圧ガスの事故が約150件となっている。40件は人身事故で、死亡事故もゼロではない。
高圧ガスの業界団体である日本産業・医療ガス協会(JIMGA)では、高圧ガスの適切な取り扱いと法令の順守を促す「高圧ガスハンドブック」の発行や、高圧ガスの保安・安全に関する講習会・セミナーを行っている。また、高圧ガス業界の認知度向上や事故防止につなげるため、「JIMGA 高圧ガスのうた」を作成し、ウェブサイトで発信する。高圧ガスの種類や基本的な取り扱い事項を歌詞にした「ガスってなぁに?」など3曲構成となっている。
一方、大陽日酸では高圧ガスの保安力向上につなげるサービス「みんなガスシル」を提供している。4月からは大学と高等専門学校、工業高校向けに無償提供をはじめた。
みんなガスシルは動画とオンラインサロンを組み合わせたパッケージサービス。大学、高専、工業高校向けに内容をカスタマイズした。動画を通じて高圧ガスの自主保安活動を学べるほか、不適切な取り扱いで生じる危険性の体感、組織の安全文化を醸成する各種セミナーをオンラインで受講できる。一般の年会費は従業員数に応じて設定され、300人以下・研究機関などが税込み9万9000円から、5000人以上で同19万8000円まで。
産業ガスの利用は高圧ガス保安法で細かく定められている。高い品質と安全性を維持しながら、事故やトラブルを未然に防ぐさまざまな取り組みが行われている。