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FOOMA JAPAN(2024年5月)
日本食品機械工業会主催の「FOOMA JAPAN 2024」が6月4日から7日までの4日間、東京・有明の東京ビッグサイト東展示棟1―8ホールで開かれる。982社が出展し、食品製造現場で役立つ機械や関連機器、システム、技術などを披露する。開催時間は10時から17時まで。入場は完全事前登録制。登録者の入場は無料。
食産業の課題を起点としたフードテックの提供価値
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 シニアコンサルタント 白石 勇太郎
ノムラ・リサーチ・インスティテュート・シンガポール コンサルティング部門 部長 佐野 啓介
多様性のある食産業 実現
現在、日本の食産業は多くの課題を抱えている。フードチェーン全体で見ると、調達では気候変動や地政学リスク向上により、食料安全保障が脅かされている。生産・製造では継続的な人口減少を主な背景とした産業の担い手不足により、生産性の維持・向上が必要となっている。流通では食産業特有の多段階の流通構造が、食品ロスなどの非効率性を生んでいる。消費では人口動態の変化に加え、コロナ禍での価値観の変化により、食へのニーズが多様化している。
これらの課題を解決するにあたり、食産業では企業の事業活動や食の在り方そのものを高度化・創造する〝フードテック〟の活用に期待が高まる。筆者らは、フードテックによる提供価値を次の五つに分類している。
①業務効率化・代替
データや人工知能(AI)を活用し生産・製造を効率化できる。例えば、川上・川下にわたる複数データなど、多様なデータを連携して生産性を向上させるソリューションが普及拡大している。
②コーポレート・トランスフォーメーション(CX)向上
食に関わる事業者がフードテックを活用し消費者接点を高度化している。例えば、味覚から嗜好(しこう)性を判断するソリューションなど、多様・多量なデータを活用したパーソナライズ化が進む。
③流通効率化
卸機能をデジタルで代替するソリューションが登場している。多くの流通段階をデータにより連携させることで、廃棄ロス削減などの効率化につながる。
④生産・製造革新
伝統的な生産・販売方法とは全く異なる方法をデジタルにより実現できる。他方、これらは従来方法と比してコストが課題になることが多い。
⑤次世代食品
消費者の健康・エシカル志向や食料安全保障の観点で次世代食品への期待が高まっている。他方、コストの問題に加え、培養肉・代替肉の生産では環境負荷が問題になるなど、依然普及拡大への課題が多い。
このように、各分類で普及スピードは異なる。しかし、課題起点で考えれば将来的には確実に市場拡大が見込まれるだろう。フードテックにより、従来以上に持続可能で多様性のある食産業の実現が期待される。