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ファインバブル
万博で宣言 GISHWイベントで世界へ飛躍
ファインバブル産業会(FBIA)はファインバブルに関する基本用語や測定方法、試験方法などの規格化・標準化を推進している。2025年大阪・関西万博内ではGISHW(用語参照)のイベントを通じ、ファインバブルのブランド確立に向けた発信を行った。また消費者が安心してファインバブル製品を取り入れられるよう、認証制度の普及・拡大を進める。
半導体・金属加工/産業で進む活用
日本発の技術であるファインバブルがさらに飛躍しようとしている。ファインバブルは国際標準化機構(ISO)規格で直径が100マイクロメートルより小さい泡と定義されている。ファインバブルは泡の大きさにより「マイクロバブル(MB)」と「ウルトラファインバブル(UFB)」の二つに分けられる。ファインバブルのうち、直径100マイクロメートル未満で1マイクロメートル以上の泡をマイクロバブル、直径1マイクロメートル未満の泡をウルトラファインバブルと呼ぶ。
シャワーヘッドへの採用で生活分野に浸透が進むファインバブルだが、生活用品だけでなく産業用途でも幅広く利用されている。例えば食品の分野では、青果物や水産物の鮮度保持、酸化防止などに効果が見られる。農業では農畜産物の成長促進、収量増加、品質向上などに有効とされている。
工業用でも活用が進む。半導体製造では、ウエハーの薄膜分離に利用される。技術進歩によりウエハーの薄膜化が進んでおり、従来の方法では剥離が困難となっていた。超微細な気泡であるファインバブルを導入することで、薄膜ウエハーの剥離も可能となっている。
金属加工の分野でもファインバブルが採用されている。研削や切削に用いるクーラントにファインバブルを含ませることで、切り込み量を増やして研削・切削の効率を高められる。これに加え、クーラントの腐敗や悪臭の発生を防止してクーラント寿命を延ばすなど、多くの効果が見られる。
FBIA「万博宣言」
世界の安全・健康・ウェルビーイング(心身の幸福)を推進する団体などの連合体であるGISHWは、7月17日に2025年大阪・関西万博で開催した「地球上の80億人のための安全・健康・ウェルビーイング」に関する国際イベントの一つとして、フェスティバルを開いた。GISHWには、68カ国・地域からの参加者と共にFBIAも参画している。
FBIAはこのフェスティバル内で、ファインバブル技術の専門委員会(ISO/TC281)と共同で「ファインバブル技術/2025年万博宣言」を行った。
壇上ではISOのチョ・ソンファン会長、経済産業省の猿橋淳子国際標準化交渉官、ISO/TC281参加国の各国代表とFBIAの森川智会長の臨席の下、TC281のスティーブ・ワード・スミス議長がISOの立場で、FBIAの松下剛副会長が産業界代表の立場で宣言した。
粒径・用語—国際的に統一
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ISO/TC281のスティーブ・ワード・スミス議長とFBIAの松下剛副会長が「ファインバブル技術/2025年万博宣言」を行った
宣言の内容はISO国際標準化を通じてファインバブル技術の産業化を推進し、ISOビジョン「生活をより簡単に、より安全に、より良くする」の達成を目指すことをISO/TC281(ISO側)とFBIA(産業界側)が共同で宣言するもので、ISO「2030戦略」の三つの目標(ISO規格が隅々に普及する、世界のニーズに対応する、すべての声に耳を傾ける)に基づいている。
具体的な内容の一つは「ナノバブル」という呼称は使用せず、「ウルトラファインバブル」を使用するというもの。ナノバブルという表現は市場でよく用いられてきたが、定義が統一されていない曖昧な言葉で、グレー製品などでよく使われていた。一方、しっかりと定義されたファインバブルの呼称は、洗浄、農業、医療、食品、水処理などさまざまな業界で求められていた。
これを受けて、2017年にISOで「ファインバブル」「マイクロバブル」「ウルトラファインバブル」の用語が規格化された。その結果、ファインバブルという用語や粒径が国際的に統一され、産業界や研究界、ユーザーの間で同じ基準で評価や議論ができるようになった。その後、測定方法や性能評価方法についてもISO規格化され、ファインバブルの効果を客観的で再現性のあるデータで示せるようになった。
ウェルビーイング中核技術 グローバル産業化
また宣言文の中では、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、ファインバブル技術の世界的な導入を促進するため、ファインバブル技術の産業化を最優先課題として推進するとしている。
産業分野でのSDGs達成に向けたファインバブルの活用事例は、さまざまある。例えばインフラ分野では、高速道路サービスエリアのトイレ洗浄に関する事例が挙げられる。FBIAの調べによると、サービスエリアのトイレ洗浄にウルトラファインバブル水を使用することで、尿石除去などの有効性が確認され、洗浄効果が改善した。水道水に比べて使用水量を99%削減、清掃時間を40%削減した。また洗剤使用量も66%削減している。
工業分野では、機械部品の洗浄工程で効果を上げている。洗浄装置の洗浄槽にマイクロバブルを発生させ、微細気泡による油分の吸着除去という洗浄原理を生かし、機械部品の表面に付着した油分を洗浄する。通常の水と比べ、ファインバブル水では油分除去洗浄効率が90%向上した。
農林水産分野では、ウルトラファインバブル水を使用することで、グリーンリーフレタスの成長率が20%向上した。大麦の発芽促進では成長率が46%向上した。
こうした効果により、ファインバブル水の使用が節水につながる。節水は水資源の保全や環境汚染防止と関係しており、SDGsの達成に大きく貢献できる。また洗剤や洗浄液の使用を削減することとなり、環境にやさしい技術といえる。
FBIAは同宣言により、「ナノバブル」からの脱皮を図り、ウルトラファインバブルの呼称使用が国内だけでなく、海外にも広まることを期待する。これとともに、認証制度の社会的浸透が進むことを見込んでいる。
GISHWのイベントは30年にサウジアラビアで開催するリヤド万博でも開かれることから、FBIAは「ファインバブル技術をウェルビーイングテックの中核技術として、一層のグローバル産業化を推進していく」としている。
【用語】 GISHW (Global Initiative for Safety, Health and Well—being at EXPO2025 & beyond)=働く人の安全や健康、ウェルビーイング(心身の幸福)向上を考える国内外の専門家などが集う連合体。民間企業のほか、日本からは日本規格協会、日本産業衛生学会などが参画。国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)などの国際的な機関も参加する。
「ファインバブル技術/2025年万博宣言」 FBIA会長挨拶要約
ファインバブル産業会 会長 森川 智
日本はファインバブル技術の先進国として2012年、ISOにファインバブル技術の技術委員会(TC281)を提案・設立して以来、参加国との協力の下、ISO規格化を通じてファインバブル産業のグローバル発展に務めてきました。
その間、ISO規格作りに参画するTC参加国数は、議題に投票権のある「Pメンバー」が設立時の5カ国から、10カ国に倍増。オブザーバーとして参加する「Oメンバー」を含めた参加国数は、15カ国から22カ国に増加しております。既に35規格を発行する成果を上げるとともに、18規格が審議中という成長のスパイラルを生んでおり、ISO規格化は各国のファインバブル産業創成に大きく貢献しております。
具体的には、ファインバブル技術に関する用語定義を含む基本要素の規格化により、ファインバブルという極小の気泡が洗浄、生理活性、成長促進などの機能を発揮することが明確となり、発芽促進、橋梁洗浄などのアプリケーション規格を作成することで、技術や応用が明確に説明されることになりました。
また特性評価および計測技術の規格化により、シャワーヘッド、洗濯機、食洗機などでの認証が可能となり、ファインバブル技術の信頼性が向上しました。さらに、SDGs関連規格化を他のTCに先駆けて実現することで、本技術が持続可能な社会実現に貢献可能との評価を獲得しています。
ファインバブル技術は他の技術に勝るペースで、「生活をもっと楽で、安全で、良いものにする」というISO2030戦略を達成し、産業創成に邁進していると自負しており、私は、GISHW活動への参画の成果として発出した「ファインバブル技術/2025年万博宣言」を礎として、日本においてファインバブル国際会議と国際展示会の定期開催を、実現したいと考えております。
FBIAはGISHW活動に共感、共鳴し、より一層のISO規格化推進ならびに産業創成に務め、次のリヤド万博におきましても、ファインバブル産業発展の報告を行えるようさらなる努力を継続することを誓い、私のあいさつといたします。
