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エレクトロニクス京都2025
電気自動車(EV)の成長鈍化や二転三転する米トランプ政権の関税政策など、電子部品・半導体業界を取り巻く環境は不確実性が増す。AI(人工知能)データセンター(DC)や車の電動化などの需要拡大を取り込むとともに、次世代産業の勃興に先手を打つ研究開発が重要となる。世界から人や情報、先端技術が集まる2025年大阪・関西万博は、次の成長を探る絶好の機会だ。次々とフロンティアを開拓し、成長につなげてきた京都企業の取り組みを紹介する。
次世代産業に先手
生成AIブーム加速
韓国・SKハイニックスがサムスン電子を抜いた―。韓国の調査会社カウンターポイントリサーチが、25年1―3月期のDRAM売上高でSKハイニックスが世界首位に躍り出たと公表した。一時記憶の容量やデータ転送速度を向上した高性能DRAM「広帯域メモリー(HBM)」で業界をリードし、生成AI向けに伸長していることが背景にある。サムスン電子が長らく王座に君臨していた業界の勢力図を塗り替えるほど、AIの勢いはすさまじい。
京都企業も生成AIブームに乗る。SCREENホールディングスはAIなどの旺盛な需要に支えられ、25年3月期の業績は過去最高を見込む。TOWAは次世代のHBM向けに新たなパッケージング技術を確立。従来の厚みを維持しながらDRAM積層数を増やしてHBMの性能を高めたいという相反するニーズに応えた。この新装置を8月に発売する予定だ。
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ロームのGaN半導体が村田製作所のAIサーバー向け電源に採用された -
ニチコンの商用EV用急速充電器「サイクリックマルチ充電器」
村田製作所はAIサーバー用電源ユニットに、ロームの窒化ガリウム(GaN)半導体を採用した。GaNで電源ユニットの電力効率が向上し、小型化もできるという。9月までにロームのGaNを搭載した電源ユニットの量産を始めることにしている。
化合物半導体では、ロームの炭化ケイ素(SiC)がEV市場の停滞で調整局面にある。同社が積極投資を続けてきた製品分野でダメージは小さくない。ただ、車の電動化は今後も続くトレンドだ。ニチコンはトラックやバスなどの商用車でもEV普及を見据え、急速充電器の新製品を7月に投入する。ニデックは電子制御ユニット(ECU)を中心としたソリューション提案の強化を目的に、車載グループ会社2社を1日付けで統合。世界的に不足するソフトウエア開発リソースを集約し、これまで以上に完成車メーカーへ食い込みを狙う。
一方、堀場製作所は韓国のグループ会社を通じ、ウエハー検査装置メーカー、韓国エタマックスを買収した。同社が持つ化合物半導体ウエハー欠陥検査の知見やソフトウエア技術を生かして研究開発を加速し、需要を取り込む。
新製品の投入、有力企業同士の技術の結びつき、さらに“新しい血”の導入、新たな潮流の中で、京都企業の取り組みが加速する。
エレクトロニクスメーカーの万博
2025年大阪・関西万博が開幕した。多くの国や企業、団体などが参加する中、京都からも文化や食、伝統産業などはもちろん、エレクトロニクス関連をはじめとする企業が「ほんまもんの京都」を世界に発信する。
8人のテーマ事業プロデューサーが体現した「いのち」について考える「シグネチャーパビリオン」では京セラや村田製作所などが技術をアピールする。
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シグネチャーパビリオン「いのちの未来」で使う京セラ製のスマートフォン
京セラはアンドロイドやロボット、コンピューターグラフィックス(CG)などで未来社会を展示する「いのちの未来」に最先端技術を提供している。パビリオン内で来場者が使う京セラ製スマートフォンのケースは人間と技術が融合した新しい「いのち」の形。50年後の新しい臓器をイメージしてデザインされた。さらにパビリオン内のアンドロイドやロボットとの高速無線通信なども同社の技術が支える。
万博会場中央の「静けさの森」の一角、壁や天井のない建築物「Better Co―Being」には、村田製作所が「ふしぎな石ころ エコーブ」を提供する。エコーブは触覚技術「3Dハプティクス」や位置検知のLFアンテナ、押圧検知のピコリーフ、リチウムイオン電池(LiB)など多くの技術を搭載。将来的に視覚障がい者の誘導などに活用し、社会課題の解決への寄与を目指しているデバイスだ。
島津製作所は京都大学の土佐尚子教授がアーティスト活動を行うNTアソシエイツ(京都市下京区)やTOPPANホールディングスとともに、フューチャーライフ万博・フューチャーライフエクスペリエンスにメディアアートを常設展示する。胎児として母親の胎内にいる頃を疑似体験できる装置で、アートを鑑賞後、脳活動の反応を見ることができる。この脳機能計測に島津の技術が使われている。