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エレクトロニクス京都2025
電気自動車(EV)の成長鈍化や二転三転する米トランプ政権の関税政策など、電子部品・半導体業界を取り巻く環境は不確実性が増す。AI(人工知能)データセンター(DC)や車の電動化などの需要拡大を取り込むとともに、次世代産業の勃興に先手を打つ研究開発が重要となる。世界から人や情報、先端技術が集まる2025年大阪・関西万博は、次の成長を探る絶好の機会だ。次々とフロンティアを開拓し、成長につなげてきた京都企業の取り組みを紹介する。
企業トップメッセージ
京セラ社長 谷本 秀夫 氏/高成長・高収益企業へ回帰
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京セラ社長 谷本 秀夫 氏
2025年は当社が高成長・高収益企業へ回帰するための重要な年となる。現在、半導体市場の大半がAI(人工知能)向けにシフトし、従来製品が在庫過多となる一方、ビッグデータ(大量データ)を処理するハードディスクドライブ(HDD)やメモリーの需要は続く見込み。自動車市場は欧州で落ち込みが続くも、米国では回復の兆しが見られる。
本年度は、従来の半導体用途に使われる有機パッケージなどの設備投資を見直す。車載部品は小型高容量の積層セラミックコンデンサー(MLCC)に置き換わりが進んでおり、米国子会社の京セラAVXと一体で生産体制の最適化に注力する。情報通信市場は、AIサーバーのSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)向けで今後需要が見込まれるポリマータンタルコンデンサーの量産化を進め、課題事業を立て直す。
一方、少子化による労働力減少を踏まえ、自動化による業務効率化を積極的に行う。生産現場での完全自動化ライン導入など、スマートファクトリーの構築を進めており、間接部門でもAIやデジタル変革(DX)活用で、業務効率化を目指す。事業環境が大きく変化する中、これらの取り組みを確実に成果へと結び付けることで収益改善を図り、今後の飛躍につなげていく。
SCREENホールディングス社長 広江 敏朗 氏/海外・新規事業に成長投資
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SCREENホールディングス社長 広江 敏朗 氏
当社グループは中期経営計画「Value Up Further 2026」の2期目に入った。経営大綱で掲げる2033年3月期の売上高1兆円以上(25年3月期連結業績予想は6160億円)達成に向け、本中計では成長投資を実施。主力の半導体製造装置で当社初の海外開発拠点設置と、滋賀県野洲市での新規事業用地取得を2月に発表した。
新規事業でも戦略投資を積極推進。2月に彦根事業所(滋賀県彦根市)で水素関連事業の部材製造などを担う新工場「Sキューブ6」の操業を始めた。ライフサイエンス事業は、4月に次世代がん診断支援システム・サービスの京ダイアグノスティクス(京都市左京区)を子会社化した。
環境負荷低減の取り組みでは1月に国内事業所の再生可能エネルギー使用率100%を実現。年間約4万トンの温室効果ガス(GHG)排出を削減した。
25年3月期は、生成AI(人工知能)の活用増大に伴う最先端ノード向け投資の加速や中国市場の需要前倒しを背景に、4期連続で売上高と全ての利益項目で過去最高を見込む。デジタル変革(DX)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)といった社会変革の中で、人と技術をつなぎ、社会課題解決に挑戦し、持続可能な未来をひらいていく。
日新電機社長 松下 芳弘 氏/エネソリューション拡大
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日新電機社長 松下 芳弘 氏
日新電機グループは2021年度から5カ年の中長期計画「VISION2025」を推進中で、25年度が最終の総決算の年です。
この計画では環境配慮製品の拡大、分散型エネルギー対応、再生可能エネルギー対応、デジタル変革(DX)の製品・事業への適用、新興国環境対応需要の捕捉、電気自動車(EV)拡大に伴う事業拡大の六つの成長戦略と、モノづくり力の強化、生産性向上など事業基盤強化の二つの軸で取り組んでいます。
25年度は半導体やデータセンター、蓄電池関連産業の積極的な設備投資、電気設備の更新需要が見込まれます。また、レベニューキャップ制度(新たな託送料金制度)による一般送配電事業者の計画的な投資や、レジリエンス(復元力)強化に向けた投資の増加、環境配慮製品導入の拡大なども予想されます。親会社の住友電気工業と24年4月に発足した「日新住電エネルギーシステム開発センター」を活用し、住友電工の「環境・エネルギー技術、材料技術、解析技術」と当社の「電力技術、システム化技術」のシナジーを生かしたトータルエネルギーソリューションの事業拡大を推進します。
今後も市場、お客さま、社会ニーズにマッチした製品や事業創出で持続可能な未来社会に貢献していきます。
ニチコン社長 森 克彦 氏/新たな価値創造に挑戦
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ニチコン社長 森 克彦 氏
世界は今、経済面の不安定感の高まりとともに地政学的リスクも懸念され、先行きの不透明感が強まっている。このような状況において大切なのは、変化し続ける世界情勢をしっかり見極め、的確に対応すると同時に、未来志向で社会課題と向き合い、新たな価値創造に向かって挑戦を続けていくことである。
当社は現在、中期成長目標「Vision2025」の達成とその先の成長も視野に、「コンデンサ事業」では車載関連機器や情報通信機器向けの製品を拡大すべく、生産・供給体制の強化を図っている。「NECST事業」においては、地球環境の改善に寄与する機器やサービスの提供を通じて、ソリューションによる価値創造ビジネスの拡大を図り、ひいては社会課題の解決に貢献するための取り組みを進めている。このような中、常にお客さまに目を向け、誠心誠意の対応を心がけることを大切にし、さらなる品質改善を図り、QCDSME(品質・コスト・納期・安全・意欲・環境)を良くすることで、お客さまに満足いただけるよう努力を重ねていく。
今後も社会の抱える課題を解決し、経営理念「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献」することを具現化し、全社一丸となって事業の発展、成長を図っていく。
堀場製作所社長 足立 正之 氏/「ほんまもん」で社会貢献
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堀場製作所社長 足立 正之 氏
堀場グループは2024年始動の5カ年の中長期経営計画「MLMAP2028」より、「エネルギー・環境」「バイオ・ヘルスケア」「先端材料・半導体」の3フィールドを軸とした事業体制へ移行した。創業80周年を迎える本年は、従来の5セグメントを融合することで見えてきた新たなチャンスを着実に数字へと変えてゆく。
収益の中核を担う半導体事業では、5月に研究開発拠点「京都福知山テクノロジーセンター」新棟を、12月には堀場グループ過去最大の投資となる福知山新工場の竣工(しゅんこう)を予定している。この新工場では、主力のマスフローコントローラーをはじめ、幅広い製品の生産を計画しており、長期的な安定供給体制の確立を目指す。
ほかのフィールドにおいても、昨年12月に発売したラボ・車載両用の可搬型排ガス計測システム「MEXAcube」や、3月に海外で先行発売したバイオ医薬品の薬効成分などを迅速分析する蛍光分析機器「Veloci」といった高付加価値型の新製品拡販に取り組み、市場開拓を推し進める。
お客さまの心を震わせる「ほんまもん」の技術・製品・サービスを提供し、社会へ貢献することが堀場グループの使命であり、唯一無二の企業価値を追求し続けていく。
GSユアサ社長 阿部 貴志 氏/電気蓄える・使う技術の革新
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GSユアサ社長 阿部 貴志 氏
GSユアサは、蓄電池技術をはじめとするエネルギー技術で、「モビリティ」と「社会インフラ」領域を中心に、世界中のあらゆる産業で人々の暮らしを支えています。車の電動化や再生可能エネルギーの活用など、脱炭素への対応が求められる中、これまで培ってきた電気を蓄える・使う技術のさらなる革新とともに、それらの技術を広く実装・運用することで、持続可能な社会の実現と人々の快適な暮らしに貢献するエネルギー・マネジメント・カンパニーを目指してまいります。
現在、バッテリー電気自動車(BEV)用リチウムイオン電池(LiB)は、車載のノウハウや技術を豊富に持つ自動車メーカーとの協業を通じ、グローバル競争力を持つ電池開発を推進しています。需要が急増する電力インフラ向けの系統用蓄電システム(ESS)用LiBでは、生産能力の増強や供給体制の整備を行い、需要に応えてまいります。
企業理念である「革新と成長を通じ、人と社会と地球環境に貢献する」の実践こそ、事業の持続的な成長に結びつくものと考えます。この先も常にステークホルダーから信頼され、世の中から必要とされる企業であり続けるため、当社は止まることなく挑戦を続け、次の100年へ向けて成長してまいります。
不二電機工業社長 八木 達史 氏/デジタル化見据え製品開発
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不二電機工業社長 八木 達史 氏
2027年1月期までの3カ年の「中期経営計画2027(新STEP50フェーズ1)」で、売上高42億5000万円(25年1月期は39億2700万円)を目指している。重点項目は「利益拡大への取り組み強化」「働きがいのある職場環境の整備」「サステナブルへの取り組み推進」の三つ。利益拡大への取り組み強化は「省力化・省人化」「デジタル化」をキーワードに製品開発と市場開拓に注力し、新たな付加価値の創造に挑んでいる。
顧客の省力化・省人化ニーズに対応した製品として「無停電交換用コネクタ」を展開している。商業施設やマンションをはじめ、データセンターでも使われる電力量計(スマートメーター)を、無停電かつ安全に交換でき、現場作業の効率化や負担軽減に貢献する製品として好評である。
デジタル化ニーズでは、3月の電気学会全国大会にて通信の国際規格「IEC61850」を適用したインターフェースユニットを発表した。これからの電力設備のデジタル化を見据えた製品で、今年秋からの販売開始を目指す。
電力会社や再生可能エネルギー発電事業者、大規模工場・鉄道変電・データセンターなどの電力大口需要家が、デジタル変電所技術に注目しており、業績拡大の起爆剤になると期待している。