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9月1日 防災の日
「防災の日」は、関東大震災が起きた日に由来し、毎年9月1日とされている。今から101年前の1923年9月1日11時58分に相模湾北西部を震源とするマグニチュード7・9と推定される関東大地震が発生。近代化した首都圏を襲ったこの巨大地震により、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県で震度6を観測。発生が昼食の時間と重なったことから、多くの火災が発生し大規模な延焼火災に発展した。
従業員を守るには、トイレの備えが大事
【執筆】特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事 加藤 篤
大きな地震や豪雨が頻繁に起きる時代になった。発災時、真っ先にすべきことは命を守る行動だが、その次に何が必要になるのかはあまり言及されていないのではないか。水や食料はもちろん重要だが、必要になるタイミングとしてはトイレが先だ。
トイレ3つの問題
過去の大地震において発災後3時間以内に約4割、6時間以内では約7割の人がトイレに行きたくなったというデータがある(2016年熊本地震=避難生活におけるトイレに関するアンケート調査)。つまり、水や食料よりもかなり早いタイミングでトイレが必要になる。しかも排泄は待ったなしだ。
被災地では、水洗機能を失った便器が大小便で満杯になり、極めて不衛生な状態になった。このような状態になると、三つの問題が引き起こされる。
一つ目は、集団感染のリスクが高まること。トイレは不特定多数の人が使用し、しかも同じ部分(ドアの取っ手、鍵、便座、洗浄レバー、ペーパーホルダーなど)に触れるため接触感染が起きやすい場所である。また履物で汚れを広げてしまうことも考えられる。
二つ目は、不便・不衛生なトイレにできるだけ行かなくて済むように水分や食事を控えてしまい、脱水やエコノミークラス症候群で災害関連死につながることだ。
三つ目は、トイレ環境が悪化すると、集団生活の秩序が乱れて治安が悪化すると言われている。トイレは避難生活において唯一ひとりになれる空間でもある。排泄の場であるとともに、気持ちを整える上でも大切だ。
これら三つの問題を回避するとともに、被災者の健康と尊厳を守るために、トイレ対策を徹底することが必要である。
災害用トイレ4タイプ トイレBCP対策
企業には、事業を継続するための計画(BCP=Business Continuty Plan)を作成することが求められている。中小企業庁によると、BCPとは事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするため、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画だと説明されている。事業継続にはそれに取り組む従業員の健康維持が重要であり、来客も含めた安全配慮義務としても、BCPにトイレ対策を位置付けることが必要になると考える。
能登半島地震の教訓から、外部支援はすぐに来ないことを前提に、その場の備えを徹底しなければならない。災害時のトイレ対策の最適解は、4タイプの災害用トイレ(携帯トイレ、簡易トイレ、マンホールトイレ、仮設トイレ)を状況に合わせて組み合わせて使用することだ。
※日本トイレ研究所「災害用トイレガイド」参照(www.toilet.or.jp/toilet-guide/)
どれか一つに依存するとそこに負荷が集中するため、うまくいかなくなる。し尿というリスクを分散処理することが必要だ。
中でも初動対応として機能するアイテムが「携帯トイレ」である。水洗機能を失った便器に取り付けて使用する袋式のトイレで、大小便を袋に閉じ込めて可燃ゴミなどで処理する方法だ。使い慣れた建物内のトイレ空間を活用できることが利点。
まずはスピード対応として携帯トイレで対応し、その後に他の災害用トイレを併用することがベターだ。
ストレス回避「初動」カギ
阪神・淡路大震災以降、大きな災害では必ずと言っていいほどトイレ問題が繰り返し起きている。災害時、停電・断水の状況で不衛生になったトイレを清掃することは心身ともにストレスだ。とにかく初動対応が重要である。
また、携帯トイレを備えてあったとしても、ほとんどの人は見たことも使ったこともない。災害が起きてから周知するのは困難なので、日頃の訓練で従業員全員に使用方法を伝えることが効果的だ。
従業員とその家族、さらには地域を守る取り組みとしてトイレ対策を実施していただきたい。