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9月30日 クレーンの日
9月30日は「クレーンの日」。1980年に日本クレーン協会とボイラ・クレーン安全協会が、クレーン等による災害防止の意識向上を図るため制定し、今年で46回目を迎えた。毎年この日に両協会は全国のクレーン関係者に向け、クレーン作業における労働災害防止を呼びかけている。災害防止の重要性を再認識し、現場では点検・整備、マニュアルの見直しを行うなど、災害防止の意識を高める機会としたい。
労働災害 防ぐ
現場—点検・整備・マニュアル見直し
クレーンの日はクレーンなどに関わる全ての人が災害防止の重要性について認識を新たにする日として制定された。制定以降、クレーン等による死傷者数は減少傾向にある。しかしいまだに死亡災害は起こっており、引き続き災害防止の強化が望まれる。
日本クレーン協会によると、2023年のクレーン等により発生した労働災害による死傷者数は1722人で、前年と比べて128人の増加となった。一方、死亡者数は46人で、前年に比べて6人減少した。
クレーン等労働災害を業種別に見ると、死傷者数では製造業が683人で最も多く、続いて建設業447人、運輸交通業232人の順となった(図)。死亡者数では建設業が最も多く26人、製造業が14人、そのほかの事業5人、交通運輸事業1人となっている。
建設現場や工場、港湾などさまざまな場所で活躍するクレーンは、高性能化が進むとともに安全性や操作性向上などの配慮がなされている。しかし、荷の振れを制御できなければ、人やモノに衝突したり、吊り荷が落下したりと事故につながりかねない。クレーン操作は危険な仕事であることを、常に認識する必要がある。
クレーンによる災害・事故を防止するには、クレーンの性能検査を受検し、定期自主検査・点検・整備をすることが重要となる。また事業者は作業者に対して作業マニュアルを周知し、作業者自身もマニュアルに基づいてクレーンの運転や玉掛け作業を行うことが求められる。
特に玉掛けや玉外しは災害が発生しやすい工程の一つとなっている。例えば日本クレーン協会が公表している災害事例によると、過去に鋳鋼品製造の現場で玉掛けワイヤロープが滑って吊り荷が落下し、1人が死亡した。重心の偏った玉掛けをしたため、吊り荷を巻き上げた時に重心が片側に移動してワイヤロープが滑って荷が傾いたことが原因としている。また吊り荷の玉掛けの方法や吊り具の選定などの基準が示されておらず、作業者が都度判断して玉掛け作業を行っていたこと、荷の巻き下げ作業中に被災者がピット内に入ったことなども災害の原因に挙げている。
対策としては、安全作業マニュアル全般についての見直し、特に玉掛けの方法や吊り具の選定などについて具体的な規定を設けること、玉掛け有資格者のうち、特に非専従者に対して行う再教育訓練については、実務面も十分に加味した内容のものを計画的に実施すること、作業マニュアルに基づく安全作業の徹底を図ることを挙げている。職場の安全のため、作業手順を徹底し、安全教育を実施したい。
また日本クレーン協会やボイラ・クレーン安全協会では、各支部でクレーン運転免許取得に向けた技能講習を開催している。座学と実技を交え、小型移動式クレーンや床上操作式クレーン、玉掛け技能講習などを随時行っている。例えば小型移動式クレーン運転技能講習では、座学で小型移動式クレーンに関する知識のほか、原動機や電気、力学に関する知識、関係法令などを学ぶ。実技ではクレーンの運転や運転のための合図を習得する。
そのほか実技教習や安全衛生教育、定期自主検査者安全講習、危険体感教育なども行っているので、職場の災害防止に向けて利用したい。
【ごあいさつ】 日本クレーン協会 会長 森下 信/安全啓発に努める 機械の機能さらに向上
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日本クレーン協会 会長 森下 信
「クレーンの日」は1980年に日本クレーン協会とボイラ・クレーン安全協会により、現行のクレーン等安全規則が公布された9月30日にちなんで制定されました。この日の制定はクレーン等関係者に対して、クレーン等に関わる災害防止、点検、整備などの啓発を目的としています。
2024年の全産業での労働災害発生状況では、死亡者は746人で、前年に比べて9人減少しました。一方で、休業4日以上の死傷者が13万5718人となり、前年と比較して347人増加しました。これは高年齢労働者の増加を背景として、作業行動に起因する災害が増加しているものと分析されています。労働災害を減らすためには、当事者が危険を認識することはもちろん必要ですが、クレーン等を含む機械の機能をさらに向上させることが大切です。
当協会では「クレーンの日」と関連して、インターネットやポスターなどを活用して広報活動を行っています。また全国クレーン安全大会を開催し、優良クレーン運転士などの表彰、特別講演、研究発表などを行っています。今後も一層の安全啓発活動に努めてまいります。
