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大変革期を切り開く 5軸・複合加工機
高精度・高品位な5軸加工のポイント
【筆者】
大阪産業技術研究所
和泉センター 加工成形研究部
研究員 川村 誠
ものづくりの基幹をなす切削加工業界では、効率性や精度を高め、より高付加価値な製品づくりに適用できる技術が求められている。そのひとつとして注目されているのが5軸加工機である。5軸加工機は直交するX、Y、Z軸に加えて傾斜・回転軸を持ち、加工物に対する工具の姿勢を自由に変えられる。そのため、工程を集約して生産効率の向上が望めるほか、五つの軸を同時制御することで、従来の3軸加工機では難しい、複雑な形状加工が行える。一方、5軸加工機を活用するためには、装置や関連ソフトウエアに対する知識とノウハウが不可欠である。本稿では、5軸加工の手順や、高品位で高精度な加工を行うためのポイントについて解説する。
寸法精度向上と高品位化
5軸加工機で高精度かつ高品位な加工を行うためには、「装置の精度」、「制御器の設定」そして「数値制御(NC)プログラム」の3点すべてに注意を払う必要がある。
装置の精度
5軸加工機は三つの直進軸と二つの回転軸で構成されているが、温度変化や経年使用に伴ってこれらの位置関係が狂う。機械精度の悪化は加工面の段差などの加工不良を引き起こすため、軸同士の直角度や回転軸の芯ズレを定期的に測定し、補正する必要がある。この作業は手間を要するが、自動的に幾何誤差の測定と補正を行える装置もある。
また、正確な切削工具長測定も重要だ。実際の工具長と設定値に誤差があると、工具軸が傾斜した際に食い込みや削り残しが発生してしまう。工具長測定の際は、熱膨張による影響を避けるため、工具主軸の暖気運転を行った後に測定を行う。特に、焼きばめホルダーを使用する際は、ホルダーの温度が外気温になじんでから測定することが鉄則である。
制御器
制御器とは5軸加工機に内蔵されたコンピューターで、NCプログラムを読み取って加工機の各軸に動作指令を送る役割を担っている。NCプログラムでは加工位置が離散的な点で指示されているが、制御器はこれを先読みし、軸の動きを調整することで、スピードと仕上げ面品位を両立した加工が可能になる。スピードと精度どちらを重視するかは細かな設定が行え、高速設定では素早い動きが可能な一方で動きがギクシャクし、加工面に凸凹が発生しやすくなる。
逆に、高精度な設定にするほど加工面品位は向上するが、加工スピードが落ちて能率が悪化する。加工物の要求精度や加工内容に応じて適切に設定することが求められる。
NCプログラム
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同時5軸加工
5軸加工機を自動制御するため、工具の移動経路や加工条件を指示したものがNCプログラムだ。機械精度の補正や制御機の設定が適切に行われていても、最終的な加工品質はNCプログラムが決定する。3軸加工機に比べて剛性が低い5軸加工機では、切削工具や被削材、加工形状に応じて切削条件を適切に選択し、加工負荷を抑制することが重要である。また、同時5軸加工では工具姿勢の制御が加工面の仕上がりを左右する。不要な加減速や工具姿勢の変動を抑えた、スムーズな軸制御が高品位加工のポイントとなる。
5軸加工の作業手順
NCプログラムを作成し、実際に加工する手順について、より具体的に解説する。
5軸加工のNCプログラムは作成が難しそうという印象を抱きがちだが、3次元CAMソフトウエアを用いたNC加工の手順は3軸加工と大差ない。特に、5軸加工の中でも、加工中に傾斜・旋回軸が動かない「割り出し加工」においては、事前に加工平面を指示する以外、3軸と同じ手順で行える。
加工中に工具姿勢が変わる同時5軸加工を行う場合は、工具先端が移動する経路(位置)に加えて工具姿勢(角度)の設定を行う。近年のCAMソフトには工具姿勢を自動制御する機能が備わっており、一定の傾斜角度で加工を行いつつ、干渉が発生する場合は傾斜角や方向を変えて回避することが可能である。したがって、単純な5軸加工であれば工具姿勢の制御に気を使う必要はない。しかし、加工形状によっては不連続な姿勢変化やふらつきを起こし、切削した面に段差ができることがあるため、加工品質にこだわる場合は手動で工具姿勢を調整し、各軸がなるべくスムーズに動き続けるようにする必要がある。
このような細かな設定の良しあしが5軸加工の仕上がりを左右すると言え、作業者の腕の見せ所となっている。
こうして作成したツールパスは5軸加工機が読み込めるNCプログラムとして出力されるが、複雑な動きを伴う同時5軸加工では、常に機械干渉(衝突)のリスクがある。そこで、実機で加工する前に、5軸加工機をバーチャルに再現したNCシミュレーションソフト上で動作を検証し、干渉の確認を行う。NCシミュレーションソフトでは、5軸加工機の内部形状や加工機固有の命令コード等がほぼ完全に再現されており、NCプログラムを読み込ませて加工動作の検証が行える。
また、切削加工条件の最適化も可能である。シミュレーションで計算された切削体積や加工負荷をもとに、部位によって工具回転数や送り速度を調整し、工具損傷を抑制しつつ加工時間を短縮できる。重切削や長時間の切削加工では特に有効である。
NCプログラムの確認が終わったら、いよいよ実加工の準備に移る。5軸加工機のテーブル上に治具や材料を固定し、切削工具の取り付けと設定を行う。材料の位置や、切削工具の工具番号や工具長、ホルダーの種類は、CAMソフトとシミュレーションソフト、実機で同じ値になるよう注意する。最後に原点位置の測定を行い、NCプログラムを読み込んで加工をスタートさせる。
シミュレーションで問題がなくても、実加工では、工具が過負荷で折損したり、びびり振動によって加工不良が起こる可能性があるため、加工速度を遅くしたり、NCプログラムを作り直す必要に迫れることも多い。このように、高品質な5軸加工を行うためには、装置やソフトウエア、切削加工について、さまざまな知識とノウハウが必要になる。
今後、ものづくりはさらに高度化すると同時に、人手不足の問題も深刻化すると予想されている。このような状況の中で、高度かつ高能率な5軸加工機の導入と活用は、切削加工業にとって不可欠な要素で、5軸加工に関する知識と技術を備えた人材の育成が急務と言える。