-
業種・地域から探す
続きの記事
セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバー(CNF)は植物からとれるセルロース(パルプ)を化学的・機械的処理により数ナノ-数十ナノメートルに微細化したナノ繊維。幅100ナノメートル以下にほぐしたセルロースをナノセルロースといい、サイズや由来原料によって種類が分かれるうちの一種だ。"ナノ"まで解繊した機能性材料として実用化が進む一方で、強度を目的とした構造材料では" ナノ"まで解繊しないセルロースとしての利用が広がっている。
軽量・高強度・少量で効果
CNFは鋼鉄の5分の1の軽さでありながら、5倍以上の強度を持つ。比表面積が大きく、熱による変形が小さい。また、ガスバリアー性、透明性、増粘性、チキソ性などさまざまな特徴がある。
植物由来
植物由来のため生産、廃棄における環境負荷が小さく、リサイクルしても機能が低下しない。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に欠かせないバイオマス素材として、存在感を高めている。
親水性が高いことから、機能性添加剤として市場投入が始まった。ナノレベルまで解繊した透明性の高いCNFを少量添加することで効果が出る。天然素材のため人体に触れる用途にも安心して使え、化粧品や食品などで実用化が進んでいる。
化粧品・食品
化粧水では保水性を高めるものとして、食品ではどら焼きの皮などにふんわり感やしっとり感を出すものとして定着した。最近では米粉麺に増粘剤として添加され、小麦粉に比べまとまりにくい、麺が切れやすいなどの課題を解決。のどごしも向上させた。
自動車・家電
一方、量産効果を出すには軽量、高強度、低熱膨張という特性を生かした自動車部材や家電などの構造用途が期待されている。強化繊維として化石由来の樹脂を減らして軽量化できるほか、マテリアルリサイクル性に優れ温室効果ガス(GHG)排出削減につながる。ただCNFを疎水性のプラスチックと複合化するためには加工コストの高さが課題となっていた。
コスト軽減
近年はプラスチックとの複合材など強度を狙う分野はエネルギー面やコスト面を考慮するとナノまで解繊しなくてもよいという認識が広がってきており、コストを抑えた用途開発が進んでいる。
折り鶴・電子材料・・・万博で展示/ナノセルロースジャパン
-
NCJは大阪・関西万博に出展した(NCJ提供)
産学官の連携によるナノセルロースの技術開発・普及を目指す「ナノセルロースジャパン(NCJ)」は、6月10日から16日まで大阪・関西万博に出展した。「うわっ、うわっ、うわっ、ナノセルロース」をテーマに「食品添加物」「化粧品」「ヘルスケア」「生活」「電子材料」「モビリティー」の6分野で40種類以上のナノセルロース製品・開発品を展示。展示材料や説明員のユニホーム、シューズにもナノセルロースを使用した。
-
電子材料分野の展示(NCJ提供)
電子材料分野では、日本製紙が東北大学で発見された技術を基に開発したCNFを用いた蓄電体を展示した。CNF蓄電体は従来の電気化学的蓄電池と違い、リチウムなどレアメタルと有機溶媒を使用した電解液が不要で安全性が高い。安全性や安定化、大容量化の研究を重ね、蓄電容量が開発初期と比べ10の6乗倍に向上している。
王子ホールディングス(HD)は山形大学と共同で開発する燃料電池用高分子電解質膜(PEM)を出品した。王子HDのリン酸エステル化CNFと山形大が扱う微粒子を複合化し、高いプロトン伝導性と膜強度を両立したもの。従来は化石燃料由来の樹脂製で有機フッ素化合物(PFAS)を使用していたが、木質由来のCNFを主成分としているため、環境にやさしく安全性上の懸念も解消できる。
-
ナノセルロースペーパーで折り鶴を折る体験コーナーも設けられた(NCJ提供)
NCJ事務局によると、展示エリアには1日当たり約2000人が来場。来場者はナノセルロースが多くの製品に応用されていることに驚きつつ、食品添加物や化粧品など日常生活に関連する用途に高い関心を示していたという。ナノセルロースゲルを触ったり、ナノセルロースシートで折り鶴を作成したりする体験エリアが好評だった。CNFを使用した製品の配布も行われた。
