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クリーンルーム
クリーンルームは空気中の塵やホコリ、有機化合物、微生物などの汚染物質を低減し、温度や湿度、圧力などを制御して清浄な環境を作り出す。半導体や精密機器などの工業用に利用され、空気中の塵やホコリを汚染物質の対象にしたものを「インダストリアルクリーンルーム」、食品・医薬品などに利用され、塵やホコリのほか微生物、細菌を対象にしたものを「バイオロジカルクリーンルーム」という。ここではそれぞれの活用事例を紹介する。
高品質な製品づくり支える クリーンルーム
インダストリアルクリーンルーム
クリーンルームは空気中の粒子数をコントロールし、環境を清浄に保つ。クリーンルームの定義は「空気中に浮遊する微粒子や微生物が限定されたレベル以下の清浄度に管理されており、不純物やゴミを持ち込まないようにする部屋」とされている。
半導体や精密機器の製造では極めて微細な回路が特徴であるため、わずかな塵やホコリが製品の品質に大きく影響する。そのため、クリーンな環境が求められる。デバイスの微細化が進むほど、より高い清浄度の環境が必要となる。
アズビルは2022年、藤沢テクノセンターにクリーンルームを新設した。同所では、微小電気機械システム(MEMS)の開発と生産を行う。
同社は1986年、MEMSセンサー開発のために藤沢工場にクリーンルームを設置し、その後は開発や生産の拡大に伴って拡張を繰り返してきた。技術開発本部マイクロデバイス部の米田雅之部長は「建屋が老朽化し、耐震強度的に不安があった。また拡張を繰り返してきたので動線が複雑になってしまった」と話す。これらの課題解決のため、クリーンルームを新設した。
新クリーンルーム棟は地上3階建てのビルに、クリーンルームを設置するフロアを二つ設けた(図)。耐震グレードは「上級」を採用し、震度6強程度の地震があっても大きな被害を回避できる仕様とした。
また動線の効率化を図り、密閉空間を極力少なくした。クリーンエリアの壁や扉を削減し、気流制御の工夫によりエリアごとの清浄度を分けている。その結果、動線がシンプルになり、使い勝手を向上させている。
デバイス 進む微細化-清浄度高く
MEMSセンサーの製造プロセスは、半導体製造プロセスに求められるクリーン度や微細加工に加え、異種材料の高精度な接合など、MEMS特有の加工プロセスがある。同所では、接合工程の区域をクラス100の清浄度に保っている。
MEMSセンサーのパターンは、マイクロメートル単位で描かれている。材料は面同士を貼り合わせるが、表面は極めて平坦でなくてはならない。「表面の凸凹の高低差が1ナノメートル以下」(米田部長)の面粗さが求められるという。「接合面にゴミが入ると、ゴミの高さの1000倍分の長さの直径を持った面積のボイド(空隙)ができる。ボイドがあると接合強度が下がり、品質が落ちるのでゴミがあってはいけない」と米田部長は話す。
同所のクリーンルームでは、仕切りが無いスルーザウォール方式を採用している。壁を設けず、同社の空調制御技術により清浄度の高い方から低い方へ空気を流すことで、エリアごとに必要な清浄度を確保している。製造装置の前面に間仕切りを設け、作業域だけを高清浄化する。製造装置の多くは自動化されており、装置前面に加工対象物(ワーク)の出入り口があるほかは外気から遮断されている。そのため装置全体を高清浄域に設置する必要がない。
米田部長は「エネルギー効率を良くするため、この方式を採用した」と話す。