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旋盤・ターニングセンター
旋盤加工は円形断面をもつ部品加工に活用され、モノづくりにおける切削加工の中で、最も基本的かつ重要な加工工程のひとつとして用いられている。金属を高精度かつ低コストで効率よく加工できるプロセスとして、自動車や産業機械の高精度部品製造を支えている。部品形状が複雑化し、要求される加工精度が高まる中、ミーリング用主軸や主軸以外の回転軸、焼き入れ用のレーザーなどを備えた旋盤構造の複合加工機であるターニングセンターの需要も高い。さまざまな工作機械メーカーが独自技術を搭載した旋削加工機を投入している。
機能多彩な旋削加工を披露
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研削機能を搭載したCNC立型ターニングセンター「VTLex1100M」
昨年11月に開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)では、各社がさまざまな機能を搭載した旋削加工機を披露した。
オーエム製作所(大阪市淀川区)はCNC立型ターニングセンター「VTLex1100M」に研削機能を搭載し、披露した。
切削後にワークを取り外して研削機に移す手間を省き、加工時間を短縮する。高精度自動パレット交換装置(APC)により、パレットの振れ精度を0・01ミリメートル以下と従来機の半分以下にした。
さらにオプションでAI(人工知能)切り粉検知機能を搭載。刃物に切り粉が巻き付き、機械が短時間停止するリスクを減らし、加工品質を高めた。
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長尺シャフト加工にも対応するNC旋盤
「2SI-8 Mk-Ⅱ」
シマダマシンツール(愛知県豊川市)は、2主軸1タレットNC旋盤「2SI-8 Mk-Ⅱ」の加工ストロークを従来よりも350ミリメートル長くした新型機を開発した。重機や工作機械などに使用する長尺シャフト加工に対応する。2本の主軸を手前と奥に配置し、奥の主軸が加工している間に手前の主軸でワークを着脱可能にして、機械稼働率の向上に貢献する。従来機はZ軸のストロークが250ミリメートルだった。
新型機は2倍以上のストロークを確保したことで、NC装置も加工安定性も増すよう改良を加えた。また従来機は加工室にのみドアを設置していたが、本機は段取り用の手前の主軸の外側にも扉を設置。ワークが大物になることから主軸が入れ替わる際の安全性を高めた。
中村留精密工業(石川県白山市)は、小型の2スピンドル2タレット複合精密CNC旋盤「NT-Flex」を開発した。1台で旋削、ミーリング、歯車などの加工に対応する。
工場の限られた場所でも設置できるように奥行きを1・38メートルに抑えた。小型ながら24ステーションのタレットを上下に一つずつ搭載。「クアドラプルホルダー」を使い、最大96本の工具をセットできる。バー材からの連続加工も可能で、上下のタレットで四角形状を削り出せる。
3次元CADデータを基にNCプログラムを作成する機能などを搭載した独自システム「NTスマートXs」を用いて、簡単に加工できる。
加工の効率化を支援
高精度で高効率な加工は加工機の性能だけでなく、工具や周辺機器の精度も重要だ。
曽根田工業は超硬チップホルダー「マックスVポイント」シリーズで、先端角の小さいひし形チップ用「同450」を販売する。中心から刃先が5度傾く構造で、旋盤で端面や内径を加工する際などに使用できる。同様の製品は海外製が主流で、国産は珍しい。マックスVポイントは超硬合金製のボディーに、V字型の接合部にタングステン製ヘッドを取り付けて剛性を高めた同社の主力製品。
野村製作所(大阪府岸和田市)は、小型旋盤向けの逆止弁機能を内蔵する中空エアシリンダーを開発した。同機能により、停電などで工作機械の電源が落ちてもチャックがワークをつかんだ状態を維持できる。従来は大型旋盤に対応できる製品群のみ取りそろえていたが、チャックの外形が4インチ以下の小型のものにも対応可能にした。自動車関連のアルミニウムや樹脂部品の加工向けで展開を狙う。
仕様は最大貫通穴径が11ミリメートルで、質量は6・5キログラム。1分間に8000回転と高速回転の加工にも対応する。これまではチャックの外形が5-6インチに対応したものはあったが、新たに3-4インチのものにも対応する。
ユーザー導入事例/吉田鉄工所
内製化めざし複合加工機を導入
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複合加工機「MULTUS U3000」を導入しマシニング加工を内製化した -
今後は工場の拡大も視野に入れる
吉田鉄工所は創業から約40年、旋削加工を専業としてきた。工作機械部品を中心に、プーリやシャフト、フランジなどの丸物加工や樹脂金型加工を手がける。10年ほど前に現在の工場へ移転したのをきっかけに、汎用旋盤をNC旋盤に入れ替えるなど、高度化投資を進めてきた。同社の吉田高幸社長は「家族経営の会社だからこそ、事業を継続していくには仕事の幅を広げることが重要。そのためには新しい設備も必要だ」と積極的な姿勢をみせる。2024年12月には、初めてオークマ製インテリジェント複合加工機「MULTUS(マルタス) U3000」を導入し、マシニング加工の内製化に乗り出した。
取引先の拡大を図る中で、複雑な形状の部品の受注が増加。後工程となるマシニング加工を外注する割合が高くなっていた。親族内事業承継を見据え、部品加工の一貫体制を整えることで経営を安定化させ、さらに新たな加工領域に事業を広げようと複合加工機の導入を決めた。
しかし、同社は全員MCを使った経験がなく、オペレーターに指名された長男の征弘さんは不安も大きかったという。特に懸念していたのが、加工室内での工具とワークの衝突だ。損害額が大きく、発生すれば会社の経営状態に影響を与えかねない。こうした課題を解消したのが、標準搭載されている「アンチクラッシュシステム」だ。工具とワークの干渉を予知すると即座に動きを止めるため、衝突を未然に防げる。同機能により「初めて加工する製品にも、安心して挑戦できる」(征弘氏)という。またオークマで実施している個別トレーニングに通い、機械の使い方や加工の方法を学べたことも大きな安心要素だったという。
複合加工機の導入以降、半導体向け部品の試作や食品用攪拌(かくはん)機部品など付加価値の高い、新たな仕事も増加する。またワンチャッキングで一貫加工できるため、加工精度も向上。より高付加価値の仕事に挑戦できるようになった。今後は受託加工だけでなくコンピューター利用設計・製造(CAD/CAM)を活用し、前工程への事業拡大を図る。
MEMO
▽事業内容=工作機械、産業用機械向け部品の量産・試作
▽所在地=愛知県弥富市鳥ケ地3丁目1502-19
▽社長名=吉田高幸(よしだ・たかゆき)氏
▽電話番号=0567・52・3311
▽資本金=25万円
▽従業員数=5人
▽創業年=1981年