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尼崎産業界
人手不足解消へ-外国人材活用進む
人材不足が課題となる中、その解消に各社躍起になっている。兵庫県尼崎市の企業も同様だ。こうした状況から最近、外国人材を雇用する動きが活発化する。国も「出入国管理及び難民認定法(入管法)」を改正、外国人労働者の受け入れを拡大して長期就労や永住化を図るなど、人材不足解消へ向けた動きが活発化する。
入管法改正で雇用増続く
1989年の入管法改正で新在留資格「定住者」が創設、日系3世まで就業可能な資格が付与された。ただ2008年の「リーマン・ショック」で状況が一変、外国人従業員の解雇が相次いだ。その後、リーマン・ショックから立ち直りを見せた段階で人手不足が顕著になった。
そこで2019年、同法改正で外国人材の受け入れ・共生のための総合対応策として新在留資格「特定技能」が創設。当初は受け入れ業種に制限があったが、23年6月の閣議決定で解消、一定の活用拡大が図られた。さらに24年の改正で「技能実習」を廃止し「育成就労制度」が創設されることで、流れが変わりつつある。
法改正に対し、尼崎市内の企業は今後の動向を注視する一方、雇用拡大で大都市圏に人材が流れることが危惧される。それだけに、いかに外国人材に選ばれる地域や企業になるかが喫緊の課題となっている。
外国人材の雇用は08年に厚生労働省が統計を取り始めて以降、国全体をはじめ、兵庫県もハローワークベースで労働者数や雇用事業者数は毎年過去最高を更新、尼崎市も同様の動きを見せる。
ただその活用にうまく対応できている企業とそうでない企業の二極化傾向もある。経営者の行動や意識がうまく働き、日本人と外国人が調和しダイバーシティーマネジメントが実行できている企業は採用や育成が進むが、そうでない企業は今後、最悪の場合、廃業につながるのではないかという声も聞かれる。
こうした中、尼崎地域産業活性化機構は21年、市内の従業員数50人未満の2200事業所を対象に「外国人材活用に関する意識調査」を実施(回収数553件、回収率25・1%)。調査によると、雇用実績は16・6%、92事業所で見られた。求める人材像は、長期就業、日本語能力、業務スキルが挙げられ、今後も外国人材雇用に前向きな姿勢を示す事業所が大半を占めた。
事業所のモデル像 明確化
企業間でのマネジメントには違いもあり、経営者行動や企業活動と組織変革の両側面のスコアが高い「両面改革型」企業が効果を認識し、さらに追求する姿勢が強い。単なる労働力ではなく公平公正に扱い、日本人材とともに育成する動きが顕著だ。
この結果から、三宮直樹常務理事は「両面変革型企業を増やし、意識を高め醸成する政策が求められる」と説く。その一環で創設されたのが「外国人材雇用・育成・定着支援モデル事業所認定制度」だ。どのような外国人材を雇用すればいいか事業所のモデル像を明確化、目安にする考えだ。「外国人材雇用のきっかけづくりになれば」(三宮直樹常務理事)という狙いもある。
中小企業では依然として技能実習や特定技能の流れに沿って進める傾向が強く、制度が機能していないケースも見られる。これが企業間格差を生むこともあり、また一企業だけではなく、市全体でこうした課題解消に取り組む必要性も認証制度創設の背景だ。今回認証された3社はいずれも建設業だが、人手不足の深刻さを如実に表した結果でもある。
同機構では認証制度だけでは十分ではなく情報発信のためのセミナーも行ったほか、21年度から国際化コンソーシアムも運営する。外国人材とともに中小企業の支援も両輪と捉え、尼崎市にも協力を仰ぐ。「市域に広げるには行政の力は欠かせず、非常に大きい」(同)と捉える。
生産人口の減少は待ったなしで、どういう制度が設けられるのかなどの仕組みづくりが急がれる。さらなる成長・発展を考えたとき、企業だけではなく自治体も危機感を持つ必要がある。問題意識を持ち、課題を共有してその解消の道を探り、実行することが重要な意味を持ちそうだ。
待遇改善 やる気醸成/積極対応の中、独自方針も
尼崎市でも人材確保を外国人材に求める企業が増える一方、各社の方針はさまざまだ。
大河内金属は青垣工場(兵庫県丹波市)と氷上工場(同)で13人のベトナム人人材を雇用、両工場の従業員の4割近くを占める。本来なら地元の高校生の採用を進めたいところだが、「全く採用に至らない状況が続く」(山村聡一工場長)ためで、「頼りになる存在となっていることは間違いない」(同)という。今後も採用の継続を視野に入れる。
ゼロ精工は3カ国8人の外国人材を雇用、全従業員の約10%を占める。15年前に採用をしたが、いったん休止し、その後、日本永住希望のベトナム人を採用。相前後して日本人雇用が厳しさを増したことが背景。日本人従業員と同等の待遇改善がやる気につながっている。「いい人材を見つけるとともに雇用側の努力も重要」(佐藤雅弘社長)と捉える。
ミナミテックは30代前後のベトナム人4人を雇用する。先ごろ導入した最新設備を活用しモノづくりに携わる。周りの企業にない設備を使えることがやりがいにつながり、「仕事の楽しさも覚え、入社して良かったと語っている」(南友広社長)ことに採用活動の順調さを裏付ける。日本人従業員と同等の評価も後押しし、年2回の面談を通じストレス解消にも気を配る。
ヤマシタワークスは4月からベトナム人4人、ネパール人1人の計5人を採用。育成就労制度創設で一定の改善は進んだが「まだ十分ではなく、留学生を採用した」(山下健治社長)。マンツーマンでの指導と並行し、共に学び社内のモチベーションが高まるなど、副次的効果も生んだ。今後は「より多く採用し、海外展開などに力を発揮してもらえれば」(同)と展望する。
SEAVACには京都工場(京都府久御山町)に中国人従業員が1人在籍。ただ「外国人雇用の一環で採用したわけではない」(清水博之社長)と通常の人材確保の一環と強調する。本人の努力がカギとなるが、雇用側の準備や心構えも重要視する。今後も方針は変わらないとした上で、現役社員のコミュニケーションを学ぶなど、「互いの努力が欠かせない」(同)のは間違いないところだ。
トーホーも外国人材雇用は1人で、一般的な採用活動の一環。中洲勝執行役員は「日本人でも外国人でも当社の採用基準をクリアすれば雇用する」方針とした上で、「通訳を付ける人的余裕がなく、語学力は欠かせない」(同)とコミュニケーションのための語学力が採用の判断基準に加わることになる。
音羽電機工業や尼崎信用金庫はこれまで、外国人従業員・職員の雇用実績は持たないが、音羽電機工業は工場を中心に外国人材の採用も視野に入れる必要性は感じており、将来的には採用の可能性を示唆する。ただ現時点では具体的な計画は進んでいないのが実情だ。一方、尼崎信金では採用の可否は同信金の採用基準に準じて行うとしている。