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尼崎産業界
産業のまち復権へ OIC本格始動
〝産業のまち〟として発展してきた兵庫県尼崎市も最近、様相が変化している。JR尼崎駅周辺は高層マンションが建ち並び、阪神高速道路湾岸線沿いなどには物流倉庫が乱立、かつての面影が薄れつつある。これまで長年培ってきた技術力を今後どう生かすか、またいかに新たな産業を生み育てられるか。これがこれからの尼崎の成長・発展を左右しそうだ。
松本眞尼崎市長は2024年2月の定例会見で「令和6年度主要事業」の地域活性化や雇用促進、人材育成の取り組みとして、尼崎の強みの〝モノづくり〟を核に、既存企業の新分野進出や新規創業などを支援するオープンイノベーションセンターを設置、産業団体とも連携し伴走支援すると表明した。
これに沿って設立され、4月に活動を開始したのが「オープンイノベーションコア尼崎(OIC)」だ。設立の発端は市内の産業団体や金融機関、有識者、尼崎市などで構成される「尼崎市産業政策会議」で、今後の尼崎の産業をどう盛り上げるかが議論されたことに始まる。
OICは尼崎商工会議所や尼崎信用金庫、近畿高エネルギー加工技術研究所、尼崎地域産業活性化機構と尼崎市で構成。5団体が一体となり、尼崎のポテンシャルをあらためて磨き、新たな企業などの支援を通じ地域経済の活性化を図る専門機関と位置づけられる。
主な活動は、市内の企業はこの10年で代替わりが進み、世代交代した経営者が新たな視点で事業を始めたいという思いの支援とともに、尼崎を大学発ベンチャーのような新規のモノづくり系企業で意欲ある人材の集まる町にすることにある。
実務は行政や金融機関、兵庫県の支援機関で創業や中小企業支援に経験豊かな岸本浩明統括調整リーダー、坂本和英プロジェクトリーダー、鶴房宏一郎サブリーダーの3人がけん引、5団体の協力も得て〝オール尼崎〟で対応する。今後の方針決定や情報共有を月1回の運営会議で行い活動を展開する。ベースは尼崎市産業政策会議での議論に基づく。
現状は「手探りの状況。一つひとつ地道に積み上げる」(岸本統括調整リーダー)と、基礎固めを進める。併せて尼崎市の次年度の新たな事業立ち上げにつなげるヒアリングも兼ねる。社会のニーズを吸収、行政としてミスマッチのないバックアップを目指す。コロナ禍から平時に戻りつつあり、OICを立ち上げ、前向きに頑張ろうというには絶好のタイミングともいえる。
要望実現に道筋
成果を導くには企業の経営状況や困り事、今後どのような企業になり、どう成長・発展させるかなどの情報収集が重要。そんな要望実現への道筋を付ける支援し、尼崎地域のモノづくり、製造業の底上げを図る。構成団体や各団体のネットワークもフルに活用、場合によっては県内外の関係機関の協力を仰ぐことも想定する。
尼崎のモノづくりの活性化が目的だけに、対象はまず市内の事業所になる。パートナー探しの相手が市内で見つかればベストだが、OICの活動に〝呼び込み〟とあるのは、必要であれば市外との連携も視野にあるからだ。大学発ベンチャーも同様。有望な人材が大学の殻を破り、尼崎を創業の地に選んで成長・発展することが理想だ。最終的な命題は〝尼崎のためになる〟ことに尽きる。
本格活用には知名度向上も欠かせず、22日のキックオフフォーラムを皮切りに、9月以降さまざまな取り組みを展開。11月の「あまがさき産業フェア」でも活動紹介を予定するなど、情報発信機会を増やす。「それまでに一つでも成果につなげたい」(岸本リーダー)。それが今後の活動のカギとなりそうだ。
OICの拠点は近畿高エネルギー加工技術研究所ものづくり支援センターに置いているが、企業からの相談や問い合わせは事務局の尼崎市産業政策課(06・6489・6670)が担当する。
キックオフフォーラム開催
OICの本格始動を受け22日、キックオフフォーラムが開かれた。創業者と中小企業の共創で「尼崎を創業とイノベーションの町へ」をテーマに、構成団体の一つである尼崎信用金庫の「あましん創業者大交流会」との合同イベントとして催された。
フォーラムでは主催者を代表して尼崎信用金庫の作田誠司理事長、構成団体を代表して松本眞尼崎市長がそれぞれあいさつしたほか、坂本和英プロジェクトリーダーがOIC設立の狙いや成果につなげる主な活動内容などを紹介した。
同フォーラムには85人が参加。自社でOICが活用できるかを意識してか、坂本プロジェクトリーダーの説明に熱心に聞き入る姿が見られた。