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愛知県西三河地区産業界
西三河地区は、安城市、岡崎市、刈谷市、高浜市、知立市、豊田市、西尾市、碧南市、みよし市、幸田町の9市1町からなる愛知県の中央に位置する製造業の一大集積地。自動車産業を中心に幅広い分野の企業が集まり、優れた技術で世界のモノづくりをけん引し続けている。モノづくりの大変革期の中、各企業は培った技術を生かし、さまざまな分野に挑戦している。
独自技術活用し、新製品投入
小型低速EV本格展開
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燃料電池車などの導入も進む西三河地区(豊田市提供)
西三河地区は愛知県内の製造品出荷額等総数の約5割を担う製造業の一大集積地。完成車メーカーや部品サプライヤーなど、自動車産業を中心に産業が発展してきた。各企業は独自技術を活用し、さまざまな分野に展開する。
豊田鉄工(豊田市)は、自社開発の1人乗り小型低速電気自動車(EV)「Comove(コモビ)」の本格展開を始めた。簡単な操作で高齢者に限らず誰でも気軽に乗れることが特徴。まず福祉用品としてレンタルを開始。夏以降に一般販売するほか2026年以降にシェアリング向けにも展開予定で、年間1000台規模の販売を目指す。
福祉用品を取り扱う豊通オールライフ(豊通AL、名古屋市中村区)にコモビを販売し、同社が東京・大阪・名古屋を中心にレンタルを開始する。夏以降は豊通ALやその他の販売店に、一般販売用として出荷する予定。オープン・ストリート(東京都港区)を通じたシェアリングサービスも計画する。
コモビは最高時速6キロメートル。満充電の状態で12キロメートル走行できる。運転免許は不要で歩道を安全に走行できる。足元のスペースを広く確保して乗降しやすくした。買い物や散歩など日常で使用することを想定し、シート下に荷物を収納できるなど利便性を高めた。
コモビは12年に開発を開始。豊田鉄工はトヨタ自動車の歩行領域モビリティー「C+walk(シーウォーク)」の生産も担っており、完成車の開発や生産に携わった経験を生かしてコモビの製品化につなげた。
反射率大幅減の防止膜
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超低反射防止膜の適応イメージ
眼鏡レンズメーカーの東海光学(岡崎市)は昨年、超低反射膜「WAB-AR」を開発した。
広視野角で低反射、かつ防曇効果を兼ね備えた反射防止膜で、スマートフォンや車載カメラ用レンズ向けに開発した。スパッタリング法とウエットプロセスを用いた独自の成膜技術により、ナノオーダー(ナノは10億分の1)の形状と密度を制御した薄膜を作製する。これにより可視光領域では反射率を通常の3分の1まで低減し、60度の入射角度では反射率を従来の6分の1まで抑えた。また260度Cの高温環境下でもクラック(割れ目)が発生しないため、リフロー工程にも活用できる。
WAB-ARは同社による膜の受託加工のほか、成膜装置メーカーのシンクロン(横浜市西区)が顧客に対し成膜工程やノウハウなどの技術提供も行う。こうした取り組みにより、進化が著しい光学分野での販売を加速させる狙いだ。
機械保全向けIoTシステム、利用者増加
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KONEKTによる遠隔操作画面
キラ・コーポレーション(西尾市)が提供する独自のIoT(モノのインターネット)システム「KONEKT」が好調だ。機械保全に役立つシステムとして開発し、23年から国内向けに出荷するマシニングセンター(MC)や難削材加工機に標準搭載した。現在は約100台に専用装置を設置しており、うち25台がサービスを利用している。
1台ごとに稼働状況や使用した加工プログラムなどの情報を蓄積し、顧客と共有する。異常発生時にはコンピューター数値制御(CNC)画面を共有・操作しながら、同社の担当者が遠隔でサポートする。Ⅹ、Y、Z各軸の稼働状況や工具の回転数だけでなく、機械各部の電気信号データも記録、共有し消耗品交換時期の提案や、予防保全にも役立てる。
クラウドシステムを使用するため顧客はサーバー設置が不要で、クラウド使用料だけでIoTシステムを導入できる。料金は1台につき月額3000円。ソフトウエア開発からクラウドサービスの立ち上げまで、全て内製化することで低価格での提供を実現した。
今後は中堅工作機械メーカー向けに、ライセンス事業を展開。KONEKTを他社の工作機械にも搭載することで、サービスの拡大を図る。
衛星レーザー測距用反射器をJAXAへ納入
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小型リフレクター(中央)を搭載した小型人工衛星
石敏鉄工(碧南市)は、人工衛星の位置を把握する衛星レーザー測距用リフレクター「Mt.FUJI」を製造し、1月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)に納入した。地上から照射したレーザーを反射する部品で、照射して返ってきた光を検知するまでの時間を計測して人工衛星の位置把握に役立てる。増加する人工衛星の衝突を避けるため、レーダーや望遠鏡に続く第3の観測手段として注目される。
JAXAで開発され、民間企業での製造を検討。現在は石敏鉄工を含む国内数社が製造する。
同社が製造に挑戦したきっかけは、子どものSTEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育推進を支援するe-kagaku(京都市伏見区)の小・中学生による小型人工衛星の打ち上げプロジェクト。JAXAと共同で、小型の「mini-Mt.FUJI」を搭載した人工衛星を今夏にも打ち上げ、軌道上実証実験を実施する。石敏鉄工は同プロジェクトに小型人工衛星用のフレームを提供していた。技術力の高さが認められ、mini-Mt.FUJIの製造も依頼された。直径約62ミリメートルと通常サイズの直径112ミリメートルの約半分程度で、小指の先ほどの大きさの部品が多く、精度を保ちつつ加工するのは困難だったという。
こうした実績が今回のJAXAからの受注につながった。小型と通常サイズ両方の製造を手がけるのは同社のみ。精巧な加工技術が宇宙分野で評価され始めている。
強み生かし事業拡大/展示会集客、木工造作も提供へ
オフィス・キートス(安城市)は中小製造業向け展示会プロデュース事業「展示会ブースター」で、ブースの木工造作や照明の提供などサービス拡大を進めている。2024年に事業化し、昨年の成約数は12件。今年は4月までに5件の実績があり、今後の展示会シーズンに向け大幅に成約数を伸ばす見込みだ。
ターゲットとなる顧客のみが足を止めるようなブースづくりを目指し、キャッチコピーの制作やブース設計を実施する。最大の特徴は、顧客の強みを見つけ出すヒアリング。顧客の事業内容やユーザーなど基礎的な内容から聞き出し、顧客自身が気づいていない魅力の発見や、ターゲット顧客の選定に生かす。1回の出展で5件の新規受注につながったケースもある。同社は製造業の会社案内や製品カタログ制作事業を展開している。これまでの事業で培ったノウハウが効果の高いブースづくりを実現している。
また、ブース設計や装飾品は再利用が可能。2回目以降は出展料のみで出展できるため、コスト削減にも役立つ。主に1、2小間の小規模ブース向けの事業だが、大規模な木工造作ブースにも対応する。
本社工場の設備増強
新たな分野に乗り出すため、自社の設備を増強する動きも加速している。
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部品加工能力を増強する本社工場
鬼頭精器製作所(豊田市)は、特殊車両部品の受注増に伴い本社工場の生産体制を見直す。夏までにロボット付き複合加工機を導入して生産能力を確保。併せて工作機械用回転工具の補修事業の拡大を見据え、新たに工場兼倉庫も確保した。
同社は特殊車両の駆動系部品の受注が2025年度は24年度比3倍を計画しており、さらに27年度には同6倍の受注を見込む。現在、本社工場で複合加工機などで生産しているが、生産能力を確保するため、25年8月にはロボット付きの5軸複合加工機を1台導入する。投資額は約8000万円。
生産スペースは現在、本社内で手がけている複合加工機などに搭載する回転工具の補修用作業場と部品保管場を活用する。複合加工機の導入は2台目。今後は精密測定器の導入も検討する。回転工具の補修は現在、年間1000個程度。今後、同2000個以上の受注を目指す。
工場、大型施設など広くノウハウ蓄積
企業の事業拡大に伴って、欠かせない存在となるのが工場や倉庫など設備の建設にノウハウを持ったプロフェッショナルの存在だ。
丸ヨ建設工業(岡崎市)は、創業100年を超える総合建設会社。愛知県を中心に、工場や倉庫、医療施設、公共施設などBツーB(企業間)向け施設を手がける。顧客のニーズに合わせ、木造から鉄骨造、鉄筋コンクリート造などさまざまな構造に対応可能だ。愛知県内であれば、用途に合わせた建設用地の紹介も実施している。また建物の完成後も引き渡しから3カ月、6カ月、1年のタイミングに無料で定期点検するなどアフターサービスも充実する。
特に積極的に受注しているのが、県内を中心とした大型施設の建設だ。東海光学(岡崎市)の真福寺事業所(同)やカワサキロボットサービス(兵庫県明石市)の玉津事業所(神戸市)などの建設を手がけている。工場・事務所などの大型施設から街の医療施設まで、同社は広いノウハウを活用し顧客の要望に応えていく。
西尾市でビジコン開催
西尾市は2月11日に市内の西尾コンベンションホールで地域事業創出を促すビジネスコンテスト「BiZCON NISHIO」の最終審査会を開いた。一般部門グランプリにはキャリアサバイバル(名古屋市中村区)のノウハウ管理サービスが選ばれた。地域の課題解決に向けたビジネスプランを競うもので、一般部門に59社、高校生部門に102チームがエントリーした。
キャリアサバイバルは技術継承と生産効率向上を支援するサービス「KAKO虎」が地域の中小企業経営に貢献すると評価された。高校生部門は愛知県立鶴城丘高校と愛知県立碧南高校が提案した、外国人と日本人が交流する場を創出する「カフェはじめまして」が最優秀賞に選出された。
同コンテストは2023年に初開催され、今回が2回目。観光やモノづくり、農業など5つのテーマから課題解決につながるビジネスプランを考案し、同市での実装を目指す。高校生部門ではビジネスプランの作り方を学べるワークショップも開催され、次世代の起業家を育む取り組みもされている。