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省エネ・再生エネ①
重要性増す「再生エネ」/サプライチェーン巻き込む
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成のカギを握るのが、再生可能エネルギーの導入加速。中でも、産業用では固定価格買い取り制度(FIT)に依存せずに、発電事業者が需要家と長期にわたって契約を結ぶ「PPA(電力販売契約)」の普及が本格化している。改正省エネ法が4月に施行するなど、制度面の強化も後押しが続く。エネルギー価格の高騰が進む中で安定的な事業運営のためにも、再生エネ活用が一層重要な選択肢となっている。
1万2000社にエネ消費報告義務
●改正省エネ法 一定規模事業者に再生エネ義務化
産業分野では徹底した省エネルギー化のため消費設備の削減や、需要に応じた最適負荷調整が急がれている。
4月に施行した改正省エネ法では、年間原油換算で1500キロリットル以上のエネルギーを使用する「特定事業者」は、1年分のエネルギー使用総量や単位当たりのエネルギー消費を報告することが義務付けられた。およそ1万2000社がその対象となり、再生エネ導入目標設定とその実行が加速している。
また、自らの事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ「RE100」の参加企業は、世界415社のうち日本企業が82社にまで増えた(7月現在)。こうした企業がけん引し、そのサプライチェーン(供給網)を巻き込んで、再生エネを中長期的に活用拡大する動きが活発化している。
富士経済が2022年12月に発表した調査(図)では、国内グリーン電力(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生エネ)市場は、小売り金額ベースで35年に22年度比16.5倍の2兆2375億円まで伸びると予測されている。このうち太陽光発電のPPAサービスは、同6.3倍の2917億円。住宅用設置義務化や産業用で初期費用導入を抑えた導入手法として定着が進むとみられる。
●非FIT市場の拡大
太陽光発電市場では、力のある大手エネルギー会社と再生エネ開発企業によるプロジェクトが目立ってきている。
再生エネの開発・運営事業を手がけるブルースカイソーラー(東京都港区)は4月、岩手県軽米町で同社最大規模となるメガソーラーを稼働した。約75ヘクタールの敷地にパネル6万7000枚を設置。発電出力は36メガワットで、年間発電量は4076万キロワット時。一般家庭1万1000世帯分の年間使用量に相当する。全量を東北電力に売電する。
ブルースカイソーラーはまた2021年に大阪ガスと太陽光発電所の共同開発・保有契約を締結したのに続き、非FIT案件の共同開発にも力を注いでいる。経済産業省の「需要家主導による太陽光発電発電導入促進補助金」を活用。両社が50%ずつ出資の合同会社が運営し、発電した全量を大阪ガスが買い取るスキームだ。
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ブルースカイソーラーが大阪ガスと共同開発した太陽光発電所(岩手県一関市)
同補助金は、需要家の自発的な太陽光発電設備の導入を支援するためにスタートし、オフサイトPPA(遠隔の発電所から電力を供給する)などが対象となっている。両社共同でこれまでに全国で6件を稼働させたほか、今後も年に複数カ所を稼働させていく。
ブルースカイソーラーの羽田野修平取締役は「当社の開発力と大阪ガスの案件組成力を組み合わせて、1件ずつ着実に、PPAの開拓をやっていきたい」と見据える。また蓄電池技術を組み合わせた開発案件にも取り組み、需給バランスの調整機能を備えたプロジェクトに力を入れる方針だ。
2年契約 導入しやすく
●短期コーポレートPPA
発電事業者が企業や自治体に対して長期間にわたって電力供給を契約する「コーポレートPPA」は、安定した価格で契約できることから、再生エネ積極活用に踏み込む企業を中心に広がっている。
こうした中、東急不動産と高島屋、リエネ(東京都渋谷区)などは、再生エネ電力の短期コーポレートPPA契約による取り組みを国内で始めて注目されている。一般には15-20年というPPA契約を、東急不動産が開発事業の投資回収ノウハウを生かして2年の短期契約を実現した。
脱炭素社会実現に向け再生エネ需要が今後も高まるとみて導入しやすい短期契約の普及に対応する。
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