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省エネ・再生エネ②
供給網全体でCO2を削減
サプライチェーン全体における二酸化炭素(CO2)排出量削減は産業界にとって大きな課題だ。製造時はもちろん、事業所全体でのカーボンフリーのエネルギーの導入など、カーボンニュートラルへの取り組みが急がれている。
「ネットゼロ」目標に/取引先と一緒に試行錯誤
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アズビル金門エナジープロダクツ和歌山工場。PPA活用により太陽光発電を導入(アズビル提供)
ガスメーターや水道メーターの開発製造と計測技術などをコア事業とするアズビル金門(東京都新宿区)は、50年までにCO2排出量実質ゼロ(ネットゼロ)達成を目標とし、グループ全体で工場・事務所の省エネや再エネへの転換、取引先との協業によるサプライチェーンでのCO2排出量削減に取り組んでいる。
20年から活動を本格化させてきた同社の大村史典執行役員は「エネルギー使用量を測り、削減施策を検討・実行し、効果検証をするといった地道な省エネ活動」の大切さを語り「そこからCO2削減のノウハウを蓄積し、実績をあげてきた」と振り返る。
グループとしては、2社の製造子会社における電力の再エネ転換により、グループ全体が使用する電力に由来するCO2排出量の78.4%削減を実現した。
製造子会社の一つ、アズビル金門エナジープロダクツ(福島県白河市)の和歌山工場では、太陽光発電をDaigasエナジーとPPAで導入し、23年1月から稼働した。第三者所有形式と呼ばれる形で、工場の屋根に敷かれたパネルで発電した電力を購入している。
また太陽光発電で賄うことのできない不足電力調達においては非化石証書を購入している。アズビル金門エナジープロダクツとしては、福島県にある二つの工場で22年3月に電力を再エネに転換しており、3工場全てで使用電力のCO2排出量実質ゼロを達成した。
もう一つの子会社が水道メーター用ケースの鋳造を行うアズビル金門原町(福島県南相馬市)。21年8月、その使用電力を100%、非化石燃料由来の再エネに転換した。これにより、事業者自らの直接排出「スコープ1」と電気や熱などの使用に伴う間接排出「スコープ2」で発生する温室効果ガス(GHG)の94.3%削減を実現した。
同時に保有車をハイブリッド車(HV)から電気自動車(EV)に交換し、災害時の緊急電源として利用できるように充電設備も整えた。また鋳造と加工のノウハウを強みに、ケース材料のリサイクルを進めており、リサイクル率の向上により製品1個当たりのCO2排出量削減に取組んでいる。
アズビル金門グループとしては、自社の活動に関連する他社での排出「スコープ3」のうち、上流にあたる主要取引先とのCO2排出量削減のための協業を始めた。まずはこれまで培ったノウハウを取引先に伝承し、エネルギーの使用量管理をすることから始めている。大村執行役員は「声をかけたとき、半数以上のお取引先が関心を示し、一緒に試行錯誤させていただいている」とし、「夢は部材のリサイクルを協業で実現すること。相互の強みとなる」と将来を見据える。
インタビュー/再生エネ普及の世界潮流
大胆な規制緩和・新技術必須/エネルギージャーナル社 編集次長 今西 章氏
太陽光発電のアフターFIT市場の見通しについて、エネルギー関連の専門メディアであるエネルギージャーナル社(東京都新宿区)の今西章編集次長に聞いた。
ーPPAの普及が目立ってきましたが、利点を教えてください。
「PPAは需要家である企業や自治体が直接、電力を調達し主力電源にできる仕組み。米国でもともと普及していたが、日本ではRE100の加盟企業などがリードし広まっている。価格面でFITのうまみがなくなり、また化石燃料も高騰する中、PPAのメリットを生かしたケースが増えてきた」
ー国内では太陽光発電ができる土地が限られますが、まだ再生エネが足りていません。
「大規模開発が難しくなる中、力のある大手エネルギー会社などと組んだ開発会社などの動きが注目される。工場やビルなどの屋根の上部に載せる小規模タイプはまだ開発余地があるだろう。ただ、カーボンニュートラル達成の通過点である2030年までに農地などでより大胆な規制緩和や、ペロブスカイト太陽電池など新技術の積極導入は欠かせないだろう」
ーモノづくり企業への今後の影響は。
「グローバル取引の多い企業はCO2排出を伴う電源で作った製品は売れなくなるとの強い危機意識から、PPA契約をはじめ再エネ活用が加速するだろう。背景には欧州連合(EU)が10月に開始する国境炭素調整措置(CBAM)の報告義務への対策がある。オフィスでも再生エネで作った電気を供給するビルにしか入居できないという企業も増えている。サプライチェーン上にいるあらゆるモノづくり企業に関係してくる出来事で、世界の潮流を見据えた判断が必要だ」