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職場の健康と安全を考える
企業における人手不足や高年齢労働者の増加を背景に、労働災害のリスクが高まっている。厚生労働省の発表によれば、2024年に発生した労災による休業4日以上の死傷者数は前年より増加し、死傷者数の増加は3年連続となった。近年では猛暑の影響を受け、熱中症による労災は増加傾向で死亡事故も毎年発生しており、予防対策の徹底が求められる。6月1日からは改正労働安全衛生規則が施行され、労災は時に労働者の生命に関わる深刻な問題であり、すべての労働者が安心して働ける職場を整備することは、経営者に課された重要な責任である。
職場の健康と安全を考える
労災防止は重要な人的投資
厚労省がまとめた「労働災害発生状況」によると、24年の労災による死亡者数は前年から9人減少して746人となり過去最少を記録した。一方で休業4日以上の死傷者数は13万5371人と、前年に比べて347人増加となった。
23年3月に策定された「第14次労働災害防止計画」では、21年比で死亡者数を5%以上削減し、死傷災害の増加傾向を抑制して25年までに減少させることが目標に掲げられている。
死亡者数については減少傾向が続いており、このままの状況が維持されれば、計画の目標達成が見込まれる。一方、死傷者数は引き続き増加傾向にあり、特に労災発生率が高い60歳以上の高年齢労働者を対象とした対策の推進が求められている。
事故の種類別では「転倒」が最多であり、前年より320人多い3万6378人が被災している。高年齢労働者の増加が、転倒災害の主な要因となっており、転倒予防の取り組み強化が急がれる。誰もが安全に働ける職場づくりは、企業にとっての人的投資であり、経営面においてもプラスに働く施策である。
6月1日施行 改正規則 熱中症対策-企業に義務付け
厚労省は6月1日から改正労働安全衛生規則を施行し、企業に対して熱中症対策の実施を義務付けた。対象となるのは、連続して1時間以上または1日合計4時間以上の作業が見込まれるなどの一定の条件を満たす作業を行う事業者で、対策を怠った場合は罰則が科される。
この改正は作業現場での熱中症による死亡や重症化を防ぐことを目的とした。体調の変化を早期に把握するための手順や報告体制の整備など、職場における安全管理の強化が企業に求められている。
厚労省によると熱中症による労働災害は近年増加傾向にあり、22年以降は3年連続で30人以上の死亡事故が報告されている。屋外に限らず屋内作業においても熱中症のリスクはあるが、死亡事故の約7割は屋外作業中に発生しており、厳しい暑さの中での作業が危険性を増している。
熱中症による死亡災害のほとんどの原因は「初期症状の放置・対応の遅れ」。企業にとっては従業員の健康と命を守るため、改正規則に則った適切な対応が急務となっている。
「熱中症」企業の対応手順まとめる-あんしん財団
中小企業の災害防止に取り組んでいるあんしん財団(東京都新宿区、山岡徹朗理事長)は、熱中症発生時の対応手順や企業が認知すべき対策をホワイトペーパーにまとめた。産業界に広く配布し、熱中症を防ぐ取り組みを促す。このホワイトペーパーは6ページで、熱中症の恐れがある人に対する処置が一目で分かるポスターも付属する。産業医科大学の堀江正知副学長が監修した。