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ウオータージェット
ウオータージェット(WJ)は高圧ポンプで加圧した水をノズルから噴射させることで発生する高速高圧噴流だ。噴流を対象物に衝突させることで、表面処理、はつり、各種材料の切断・穴開け・溝掘り、洗浄、バリ取り、切りくず除去などさまざまな方法で広く活用されており、今後も技術の進化が期待される。
複合材・複雑形状-自在に加工
CFRP・チタンー航空機向け好調
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素材機能を損なわずにワークをカットできる(米山製作所提供)
WJは数メガ-650メガパスカル程度の高水圧噴流を、直径0・1ミリ-1ミリメートル程度の細さで超音速で噴出する。薄い材料から300ミリメートル程度の材料まで加工でき、金属やコンクリート、ガラス、樹脂、セラミックス、ゴム、布、紙、食品、複合材など、あらゆる材料の加工に使用される。
加工対象物(ワーク)とノズルが非接触なため自由度の高い切断が可能で、任意の点から切断を始められるので切り抜き加工が容易にできる。また水で加工するため発熱せず、ワークに熱影響を与えないので、素材機能を損なわない。複合材や複雑形状なワークを高精度で加工できる。
さらに薬剤を使わないため有毒ガスが発生しないほか、粉じんの飛散もないため、作業員が安全な環境で作業できる。環境にも人にも優しい加工法だ。
WJ加工は大きく二つに分けられる。水にガーネットなどの研磨材(アブレシブ)を混ぜて加工するアブレシブWJ加工は、金属やガラス、複合材料など硬質材料の加工に向いている。水のみで行う加工はピュアWJ加工などと呼ばれており、ゴムや発泡材、不織布などの軟質材料の加工に向き、食品加工にも用いられる。
WJはあらゆる素材を加工でき、製造や建設・インフラ、食品などさまざまな分野を支えている。チタンや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)といった硬素材も加工できるため、これらが多く使われる航空機向け部品の加工で需要が高まっているほか、コンクリート構造物の切断・はつり・塗装剝離などでも多用される。
また食品加工にも利用されており、近年は繊細な曲線による複雑なデザインカットの需要が高まっている。刃物の欠けなど異物混入の心配がないことや、スポンジ状の食品など形崩れしやすいものでもきれいに切断できる点などが評価されている。
さらに素材機能にダメージを与えないという特徴から、製品・素材の断面カットにおいても活躍する。製品内部の劣化具合の確認や、新素材・積層材の試験片カットなどに使われる。
軽量で高硬度な新素材の開発や活用が進む中、WJのさらなる進化が期待されている。
【導入事例】キトー興産/”水ぬれ厳禁”耐火材 加工 2台で加工データ共有
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カスタマイズを施した「マッハ500」で耐火コンクリート事業の内製化に挑む
キトー興産は工業炉用の耐火材・断熱材の商社として設立。10年ほど前から材料の加工も一貫で提供している。事業化にあたりフロージャパンのWJシリーズ「Mach(マッハ)4」を国内で初めて導入した。
耐火材などの加工は数値制御(NC)ルーターや専用加工機を使うのが一般的。しかし木村昌利社長の「将来的にはセラミックなど多種多様な材料を加工したい」との思いから、WJの導入を決めた。WJに独自のカスタマイズを施し、加工法を研究。加工できる材料の幅を広げるだけでなく、歩留まりのいい加工を追求することで売り上げの25%を占める事業に成長させた。
2024年6月には同「マッハ500」を新たに導入した。産業機械部品向けの断熱材加工を受注したことで扱い量が増加し、2台目のWJが必要となった。また使用していたマッハ4は10年以上稼働しているため、故障やメンテナンスで停止するリスクにも備えた。
現在、産業機械部品向けの受注量が減少しているため、マッハ500も工業炉向けを中心に活用している。マッハ4は特定化学物質に指定されているリフラクトリーセラミックファイバー(RCF)専用として、そのほかの素材はマッハ500で加工する。2台で加工データや段取りを共有できるため加工効率が向上し、産業機械向けの加工が予定の生産量に戻った場合も十分に対応できるという。
また、同社はワークの水ぬれを最小限にする加工を得意とする。耐火材の中にはぬれると断熱性が弱まるものもあり、通常はWJでは加工できない。しかし同社では、独自にカスタマイズしたWJと蓄積した技術により、水ぬれ厳禁の素材でもWJでの加工を実現した。
WJでは加工しにくいそのほかの素材や形状に対しても、マッハシリーズのオプション機能「ダイナミック・ウォータージェットXD」を活用することで挑戦を可能にした。5軸制御で高速かつ柔軟な斜め加工ができる機能で、「事業に欠かせない機能として、マッハ500導入時にも追加した」(木村社長)という。
さらに同社はマッハ500を活用し、耐火コンクリートの型枠の内製化も進めている。型枠を専門の職人に発注した場合、通常は最終製品の納品までに2、3カ月必要になる。一方、WJで型枠を削り出し内製化すれば、最短2週間で納品できる見込みだ。現在は試作段階で、多品種少量品を中心に受注を広げていく。
【企業情報】
▽事業内容=工業向け耐火材、断熱材の加工・販売
▽所在地=名古屋市港区砂美町157番地
▽社長=木村昌利氏
▽電話=052・653・6531
▽資本金=1000万円
▽従業員=5人
▽創業=1972年4月5日
