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廃棄物処理技術
廃棄物処理技術は再資源化に欠かせない。家電製品にリチウムイオン電池(LiB)が多く使われるようになった一方で、近年では廃棄物処理施設でLiBの発火が原因とみられる火災が頻発し、稼働を停止する事態が起こっている。LiBの回収率向上に向けた取り組みに期待が集まる。
作る責任 使う責任
【22年度ゴミ総排出量】東京ドーム108杯 リサイクル19%
廃棄物を処理し資源化するためには破砕によるサイズの最適化、分離や選別による異物の除去、あるいは有機性廃棄物のみの取り出しといった工程が求められる。
破砕対象となる廃棄物はペットボトルやプラスチック、廃家電、自転車用タイヤなどのゴム製品、コンクリート、材木など。効率的に破砕するためには対象物の種類、破砕後の目標とするサイズなどによって破砕機を使い分ける。
破砕した廃棄物は金属やプラスチックなど、さまざまな材料が混在している。混合廃棄物を効率的に再資源化するため、選別や分離が行われる。
環境省の「一般廃棄物処理事業実態調査」における2022年度のゴミの総排出量は東京ドーム約108杯分相当の4034万トンで前年度比1・5%減少した。1人1日当たりのゴミの排出量は880グラムで同1・1%減となった。
ゴミの総処理量は3890万トン。この内、焼却や破砕、選別などの中間処理量は3668万トン。再生事業者などへ直接搬入された直接資源化量は188万トンになる。この「中間処理量」と「直接資源化量」の合計は総処理量の99・1%を占める。
中間処理後の再生利用量は451万トン。これに直接資源化量と集団回収量を合計した総資源化量は791万トンで、リサイクル率は19・6%となっている。
ゴミ焼却施設数は1016施設。そのうち新設は27施設だった。全体の処理能力は1日17万4646トン。
【リチウム電池火災】復旧工事3億円 処理施設
こうした中、不燃ゴミや粗大ゴミに混入したLiBが破砕され、火災を発生させる要因となっている。LiBは内部短絡(ショート)などで熱暴走することが知られており、破砕による内部短絡が発生していると考えられている。
自治体の処理施設で日常的に火災が起これば稼働が止まり、日常生活や企業活動にも影響が出る。23年11月、東京都江東区にある粗大ゴミ破砕処理施設で、LiBなどの二次電池による大規模な火災が発生し稼働を停止した。同施設は今年3月に仮復旧したが、本復旧は8―9月頃を予定しており、工事費は本復旧を含めて3億2000万円を見込んでいる。
LiBはモバイルバッテリーやワイヤレスイヤホン、ハンディーファンなどの小型化を実現し、身近な存在となっている。こうした小型家電は本体内にLiBを内蔵し、容易に取り出せない機構なども採用されている。
【リチウム電池選別】火災被害100億円 回収率14%
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LiBを内蔵した小型家電は破砕処理の前に処理施設の作業員が手選別を行っている
国立環境研究所によると、LiBの廃棄重量は年間およそ8000トンと推計されている。公的な回収率は約14%と低く、具体的な回収目標も設定されていない。
LiBを内蔵した小型家電は、破砕処理の前に処理施設の職員が手選別でLiBを取り出している。家電から取り出したLiBの重量は不燃ゴミの総量に対して0・06%という計算もある。小型かつ軽量なLiBを確実に選別する技術は現在では確立されていない。職員が小型家電からLiBの取り出しに要する時間は、一つ当たり約10秒から2分程度かかる。
国環研によると、LiBが原因で発生する処理施設の火災による被害額は推計100億円。同研究所の寺園淳上級主席研究員は「LiBの混入は市民の協力による分別収集次第で2―8割減、手選別の徹底では9割減の可能性があるが容易ではない」と述べた。
経済産業省が公表した資源有効利用促進法による22年度のLiBの回収実績は、前年度比11%減の701トン。ただし、ハンディーファンやワイヤレスイヤホン、タブレット端末など施行時になかった製品は回収対象には含まれていない。
小型家電リサイクル協会などの団体や政府は、LiB回収の重要性を消費者へ啓発している。今後は対象品目の追加や消費者への回収の認知度向上など、業界全体の取り組みを高めることで、効率的な再資源化が実現できる。