-
業種・地域から探す
廃棄物処理技術
欧州では自動車における再生プラスチックの利用目標が提示されているが、それ以外の材料や製品においても再生資源を循環させる試みは観察される。このような中、課題はサーキュラーエコノミー(循環経済)により生まれていると考えられる付加価値の評価である。水平リサイクルに取り組む多様な企業が存在する中で、市場および政府がこの付加価値をどの程度評価するかが今後の焦点となる。
水平リサイクルの現状と合理的な循環について
【執筆】 山口大学 国際総合科学部 教授 阿部 新
使用済み自動車由来再生プラ EU、20%に下方修正
2023年7月、欧州委員会は欧州連合(EU)の使用済み自動車に関する新しい規則案(ELV規則案)を示した。中でも日本で話題になったのは、再生プラスチックの新車への利用目標値の設定だった。それは再生材の利用の義務付けのほか、利用される再生材に一定割合の使用済み自動車由来のものを含めることを規定し、水平リサイクルを求めている。25年12月の欧州理事会の発表では、再生プラスチックの利用目標値を6年後に15%、10年後に25%とし、そのうちの使用済み自動車由来の目標値を20%とする下方修正案で欧州議会と暫定的に合意したとされる。
このELV規則案では、プラスチック以外の再生資源でも利用目標値の設定を検討していた。そこでは鉄やアルミニウムのように議論が先送りされたもの、銅やガラスのように早々に破棄されたものなど対応はさまざまである。欧州では容器包装規則やエコデザイン規則など自動車以外の分野においても制度により再生資源を循環させる試みが観察される。
日本でもかつて10年ほど前に再生プラスチックを新車に利用するための制度化の議論はあったが、実現しなかった。自動車に限らず、改めてそのような制度化の議論が進むかどうかだが、既に企業の自主的な取り組みの中で再生資源を新品に取り入れる動きはある。よりハードルの高い水平リサイクルの動きもある。
サーキュラーエコノミー時代 温室ガス・経済安保考慮
-
【写真1】 サーキュラーエコノミーによりリサイクル市場は変わるか
サーキュラーエコノミーの解釈はさまざまだが、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の時代と異なった新しさは、温室効果ガス(GHG)の排出を考慮していることである。現代は生産から廃棄までの製品のライフサイクル全体の最適化に焦点を当て、環境負荷は廃棄物に限らず、GHGも含む。また、経済安全保障の意識が高いこともサーキュラーエコノミー時代の新しさである。これについては、2000年代も議論があったが、現代は特定の資源を重要鉱物と位置づけ、自国で調達することを付加価値とする風潮がある。そのような付加価値が価格に反映されれば、それまで処分されていたものが利用されるようになる(写真1)。
水平リサイクル製品 価格上昇受け入れ鈍く
-
【写真2】 台湾では使用済み2輪車のプラスチックが回収されている
このような中、現実的にこれらの付加価値が価格に表れているかというとまだ難しいという印象がある。近年、多くの製品で水平リサイクルに挑戦している企業が観察されるが、事情はさまざまである。そのうち、以前からこれを行っている企業は、比較的その合理性が見いだしやすい経済構造となっている。これに対して、サーキュラーエコノミーが叫ばれるようになってから水平リサイクルに挑戦している企業は、コストを下げる努力を行う一方で、それにより生まれた付加価値を価格に転嫁させることで新たな市場を創ろうとしている(写真2)。
現状は、水平リサイクルされた製品の需要側がその付加価値を評価し、価格の上昇を受け入れているかというと全てではない。もちろん、一部では受け入れているようであり、供給側の企業はそのような取引相手を探し、確保する努力をしている。同時にコスト面で改良を重ね、より効率的にリサイクルできるように設計を変えるという、いわゆる環境配慮設計に取り組む企業もある。また、使用済み製品を回収することの壁が高く、現時点では消費前の工場発生スクラップに軸足を置いて事業を進める企業もある。一方で、コスト高を認識しながらも使用済み製品を回収することにこだわり、付加価値を評価する顧客にピンポイントに売り込む企業も存在する。
製品の付加価値 政府が評価・数値目標化
これらの行方はどうなるだろうか。気候変動への世界的な関心は後退しているという見方もあるが、経済安全保障の観点から重要鉱物の確保の必要性は依然として変わらないようにも思える。ただし、経済安全保障の付加価値は中長期的なものと考えられ、短期的な利潤を求める需要側がどこまで評価するかである。市場の自主的な取り組みで難しい場合、中長期的な合理性を政府が評価し、数値目標などの制度化を進めることもあるだろう。
制度設計にはステークホルダーの合意が必要になるが、日本の関連業界が受け入れる説得力のある説明ができるかどうかである。
