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処理施設 世界で拡大
環境省によると、2021年度末までのわが国における一般廃棄物の最終処分場の残余容量は前年度比1・4%減の9845万立方メートル。また、残余年数は同比1・1年増の23・5年となっている。排出量が減ったことで残余年数が増えたものの、残余容量は減り続けている。
一方、世界では廃棄物処理量に占める埋め立て処分の割合が大きい。発展途上国などでは処分場以外の道路や空き地、水路などに投棄する場合が多く、大量のメタンが発生している。
今後、投棄が主流の地域で廃棄物の熱処理や生物処理への移行が進む場合、廃棄物処理施設の世界市場は拡大する成長分野と見込まれている。
汚泥再利用 多様な用途
23年3月に環境省が発表した「令和4年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」によると、産業廃棄物の排出量を種類別に見た時、汚泥の排出量は全体の43・9%に当たる1億6267万6000トンと最も多い。
しかし、再生利用率は最も低い7・2%。汚泥は水分を多く含むが、中間処理で脱水しており、減量率は高くなっている。
中間処理では重力、遠心、浮上、分離などによる濃縮・脱水処理を行い、脱水後は焼却して減量化する。再利用できない汚泥は最終処分場で埋め立てる。
汚泥の再利用は多様で、下水汚泥の性質に着目したバイオマスとしての緑農地利用やエネルギー利用、セメント原料などの建設資材利用などがある。
21年度には乾燥重量ベースで168万トンが再生利用されている。セメント原料(67万トン)、れんが、ブロックなどの建設資材(44万トン)、肥料などの緑農地利用(33万トン)、固形燃料(22万トン)などの用途に利用されている。
B-DASHプロジェクト 4事業 新規採択
23年4月に国土交通省が実施している「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」の23年度の実施事業が発表された。新規では2件の実証研究と、2件の事業性調査(FS調査)を採択し、実施している。
B-DASHプロジェクトは11年から実施され、国交省で有識者の審議を経て実証事業を採択する。その後、国土技術政策総合研究所からの委託研究として、民間企業が地方公共団体や大学などと連携した実証研究を行う。実施成果を踏まえ、同研究所で技術ごとの技術導入ガイドラインを策定していく。
超高温炭化技術 無害・高品質化を実現
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超高温炭化技術は3月下旬から検証が始まる(大同特殊鋼提供)
23年度の新規実規模実証の「汚泥の高付加価値化と低炭素社会に貢献する超高温炭化技術に関する実証事業」が、23年度から3カ年、宮城県気仙沼市気仙沼終末処理場で実施される。
事業実施者は大同特殊鋼、テツゲン(東京都千代田区)、グリーンテック(栃木県鹿沼市)、中央大学、気仙沼市からなる。1000度C以上の超高温炭化技術で「高付加価値化」「高品位・無害化」が得られる。
気仙沼市には水産加工場が多い特徴から、塩分を多く含んだ排水が流入する。このため脱水汚泥の塩分濃度が高く、処分が困難なことや、炭化肥料の販売が限られる状況にあった。
汚泥を1000度C以上で処理すると、塩分だけでなく塩素を含む化合物や、重金属類の多くが揮発するため炭化製品の無害化を実現できる。また、多くの細孔を持った活性炭が形成されるため、下水処理場から発生する硫化水素や有害物質を除去できる高機能な活性炭としての活用が期待できる。
3月下旬から稼働予定の実証事業に向けて大同特殊鋼機械事業部鉄鋼設備部環境ビジネス戦略班佐野敏幸リーダーは「来年以降の実証研究において、下水道分野のさらなる温室効果ガス削減や、カーボンニュートラル実現に貢献できればと考えている」と述べた。