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倉庫・物流センター
物流の機能の一つとして、産業を下支えする倉庫業界。半導体などの市場拡大や、医薬品などで倉庫の需要は増しており、各社、新規倉庫の開設が相次いでいる。中でも電気自動車(EV)の市場拡大でリチウムイオン電池(LiB)の取り扱いが増え、危険物倉庫の需要が伸びている。また、医薬品物流も少子高齢化やパンデミック(世界的大流行)の影響で需要が拡大しており、倉庫の開設のほか、ドローンを活用した輸送の実証実験などにも取り組む。
再生医療—品質管理 国の基準に適合/新規倉庫の開設 相次ぐ
危険物倉庫/リチウム電池向け 需要増
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澁澤倉庫の定湿機能を備えた環境配慮型拠点「本牧営業所」
危険物倉庫はLiBのほか、EC(電子商取引)関連の化学品などの需要増加を背景に、コンプライアンス意識の高まりなども相まって、全国的に増加している。特にEV化の推進に伴うLiBの流通量増加で、これまでの港湾地区に加えて内陸部や地方港でも倉庫需要が拡大し、供給が追いつかない状況も生じている。
澁澤倉庫は4月に、栃木県芳賀町の営業所敷地内に2棟の危険品倉庫を開設した。空調システムを設置し、温度管理が必要な商材にも対応するほか、多品種小ロット物流に対応した自動ラックを導入し、荷役作業の効率化や省人化を実現した高機能倉庫となる。澁澤倉庫の危険品倉庫は神戸市、大阪府茨木市に続く3拠点目で、拡大する危険物の物流需要に対応する。
安田倉庫もグループのオリエント・サービスを通じ、同社の物流拠点「明知物流センター」(愛知県春日井市)の隣接地において、3棟の危険物倉庫の建設に着手した。明知物流センターにはすでに1棟の危険物倉庫が稼働しており、増設により、今後の需要増に対応する。
三和倉庫は大東事業所(大阪府大東市)で国内最大規模の危険物自動ラック倉庫を2026年6月に竣工する。3000パレット超(200リットルドラム1万2000本分に相当)の収容能力を持ち、さまざまな荷姿、容器の収納が可能。大阪を中心に近畿、中国、四国、東海方面への輸送をカバーする。
環境配慮/倉庫内 照明にLED採用
澁澤倉庫は24年11月に横浜市の本牧ふ頭に低温・定湿機能を備えた「本牧営業所」を竣工した。天吊りパッケージエアコン、超音波加湿器によって温度15度C、湿度70%の空調環境を確保。空調設備を使用するため、屋上に太陽光パネルを設置し、蓄電池と組み合わせることで、災害時にも対応可能な体制としたほか、倉庫内の照明には人感センサー付きLEDを採用するなど環境にも配慮した。
拡大する倉庫需要に対し、新規倉庫の開設が続いており、ケイヒンは「神戸西流通センター」(神戸市長田区)を5月に開設した。施設にはトラックバース22台、ドックレベラー2基、垂直搬送機4基、エレベーター2基を備えており、ランプウェイを通じて2階まで直接トラックの乗り入れが可能だ。食品を中心に取り扱い、物流サービスを提供する。
医薬品物流/医薬品 医療関係者 空飛ぶクルマで運ぶ
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三菱倉庫は「空飛ぶクルマ」の航空医療分野での活用を検証
新型コロナウイルスの感染拡大や少子高齢化の進展、先端医療の普及などにより、医薬品物流の需要も急速に拡大している。ワクチンの製造や輸送においては温度管理や状態監視が不可欠となり、コールドチェーンの高度化が求められている。
三井倉庫ホールディングスは1月に、神戸市の自社施設で再生医療等製品の製造業許可(包装・表示・保管区分)を取得した。これにより、再生医療などの製品製造や品質管理に関する国の基準(GCTP)に適合したサービスを開始した。
三井倉庫は21年1月に、関東地区に保有する高機能施設で再生医療等製品の製造業許可を取得し、同年8月から大手製薬企業をはじめとする再生医療関連企業に対しサービスを提供。GCTP適合拠点を西日本にも置くことで、対応エリアを広げるほか、BCP対策などにもつなげる。
医薬品物流では少子高齢化で進展する地方の過疎化を受け、地域医療を支えるためのラストワンマイル配送の必要性も高まっている。分散型の物流拠点の整備や、ドローンなどの新技術の活用が解決策になるとみて、実証実験などに参画する動きも加速する。
三菱倉庫はメディパルホールディングスの子会社、メディセオと、エアバス・ヘリコプターズ・ジャパンの3社共同で「空飛ぶクルマ」(eVTOL〈電動垂直離着機〉)の航空医療分野での活用を検証する実証実験を実施した。大阪府、大阪市、兵庫県の「空飛ぶクルマ社会実装促進事業」に採択されたことを受けたもので、24年12月に行った。
実証実験では自然災害の発生を前提に空飛ぶクルマを模したヘリコプターを活用。大阪府と兵庫県の都市部、山間部、離島など3ルートで医薬品の輸送や医療関係者の移送を実施した。これにより、目標としていた「必要な関係者および緊急時の諸手続きの事前把握」や「社会実装時にスムーズな連携を図る準備」を確認。今後3社で、行政機関との連絡体制や、飛行申請、バーティポート(空飛ぶクルマの離着陸場)の許可など申請手順を確認し、社会実装に向け、さらなる検討を進める。
【ごあいさつ】 日本倉庫協会 会長 藤倉 正夫/「新物効法」荷主と連携 対応
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日本倉庫協会 会長 藤倉 正夫
日本倉庫協会は倉庫業の健全な発達を促進し、公共の福祉に寄与することを目的に1948年に設立された団体です。全国の地区協会を通じて約2650社の営業倉庫事業者が入会しています。
物流を取り巻く環境は今、大きな転換期を迎えています。今年施行された改正物流総合効率化法(新物効法)は、荷主企業、物流事業者を問わず、すべての関係者に物流効率化への取り組みを求めるものです。荷待ち・荷役時間の短縮、積載効率の向上、繁閑の平準化や共同配送などは、1社だけで完結できるものではなく、サプライチェーン(供給網)全体での対応が不可欠です。
特に荷主との協力・連携はその根幹であり、こうした取り組みを会員各社が進められるよう、当協会では関連する情報を「新物効法対応ガイド」として整理し、ウェブサイトを通じて提供しています。
また、「物流の2024年問題」に象徴されるドライバー不足や輸送力の制約は、依然として業界全体に重くのしかかっています。倉庫業界もこの課題に正面から取り組み、取引や業務のあり方を見直しながら、物流の安定と持続可能性を確保していくことが求められています。
倉庫は単なる保管施設にとどまらず、製造業をはじめとする産業活動や消費行動を支える社会インフラであり、その強靱(きょうじん)性の向上は日本のモノづくりの競争力維持や経済安全保障にも直結します。
当協会は今後も、業界横断的な連携を推進し、持続可能で安心できる物流の実現に全力を尽くしてまいります。
