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倉庫・物流センター
物流の一角を担う倉庫業界の市場は緩やかに拡大している。普通営業倉庫の面積は右肩上がりで拡大し、保管残高数量も増加傾向だ。電子商取引(EC)市場の拡大に加え、輸送力不足が懸念される「物流の2024年問題」対策として倉庫を分散して持ち、長距離輸送を減らす動きもある。倉庫業界では需要増加対応に加え、より高品質な輸送や環境対策などのニーズに応えて成長を目指している。
相次ぎ新設・異業種参入ー面積1・7倍
2024年問題ー倉庫分散、長距離輸送減らす
国土交通省の「倉庫統計季報」によると、22年度の普通営業倉庫の面積は11年度に比べ約1・7倍に拡大した。保管残高数量はコロナ禍の巣ごもり需要のあった20年に比べると減少したものの増加傾向にある。倉庫各社だけでなく不動産などの異業種も含めて倉庫の新設が相次いでいる。
災害に強い
安田倉庫は今春、埼玉県加須市に物流倉庫「加須営業所」を開設し、営業を開始した。4階建ての延べ床面積約4万平方メートルの倉庫で、免震構造や非常用電源によって災害に強い倉庫とした。医薬品の保管管理に対応した空調・保冷庫などの設備を備えており、配送機能のさらなる強化やメディカル物流サービスの拡充を図る。
阪神に2拠点
澁澤倉庫は今春、阪神エリアに危険物倉庫を2拠点完成させた。神戸支店摩耶営業所七突倉庫(神戸市中央区)は神戸港のほぼ中心に位置する。大阪支店茨木営業所茨木危険物倉庫(大阪府茨木市)は茨木インターチェンジ近隣に立地し、リチウムイオン電池などを取り扱う予定だ。
また、同社は2月に飲料物流に特化した延べ床面積2万3830平方メートルの京葉配送営業所千葉北第三倉庫(千葉市花見川区)を完成させた。これまで培った飲料物流の保管・荷役・物流動線などの知見を反映させた。自動搬送機や無人搬送フォークリフトを導入し、保管や作業の効率を高めた。
EVトラック実証
環境対応の取り組みも進展している。三菱倉庫はノボノルディスクファーマ(東京都千代田区)と共同で、医薬品の輸送に中型の電動トラック(EVトラック)を活用する実証実験を8月に開始した。特約店へ輸送するトラックの1台をディーゼル車から切り替えた。医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインに準拠した中型EVトラックによる特約店向け医薬品輸送は業界初の取り組みだ。
EVトラックは充電スタンドの場所が限定されることや、一度に配送できる総積載量が少ないこと、走行距離が短いことが課題だ。今回、配送ルートの最適化などで導入が可能になった。継続的に取り組みを評価・改善し、順次対象地域の拡大を目指す。
太陽光パネル設置
安田倉庫は東京都江東区の倉庫「Landport東雲・安田倉庫」に、年間発電量が約27万キロワット時の太陽光発電パネルを設置し、5月から運転を開始した。発電した電気は同社の東雲営業所(同江東区)内で自家消費し、二酸化炭素(CO2)排出量を年間約90トン削減できる。
拘束時間削減
物流の24年問題の解決にも取り組む。三井倉庫ロジスティクス(東京都中央区)は、上新電機向けに運営している店舗配送業務にLOZI(名古屋市中区)などが開発したブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した物流管理システムを導入した。店舗向けの配送では、ドライバーの待機時間を1日平均45分削減する効果を確認した。
同システムは出荷から販売店舗での検品までの各ポイントで各事業者が荷物の2次元(QR)コードを読み取ることで、荷物の状況に関するデータを事業者間で共有できる。帳票や伝票などの大量の紙書類によって煩雑化していた事務処理や書類受け渡しの時間を減らし、ドライバーの拘束時間を削減する。
倉庫は物流の結節点にあり、倉庫を分析すればモノがどこへどのくらい輸送されるかが見え、それぞれの需要動向なども見えてくる。倉庫は革新していくことでさまざまな産業を支えている。
ごあいさつ/物流DXで業務効率化
日本倉庫協会は1948年に設立した倉庫業の健全な発達を促進し、公共の福祉に寄与することを目的とした倉庫事業者の団体です。全国の地区協会を通じて約2650社の営業倉庫事業者が入会しています。
さて、今年は物流の「2024年問題」の影響に直面する年であり、物流業界では人手不足への対応が喫緊の課題となっています。人手不足への対応として、人材確保と並行したバース予約システムや、自動搬送機の導入といった物流DXの推進による業務効率化が不可欠となっています。
当協会では会員事業者に向けた情報提供とともに、関係官庁に対して予算・税制面での支援策強化を要望しております。
今年5月には改正物効法が公布され、荷主企業・運送事業者・倉庫事業者が連携した、ドライバーの負荷軽減を図る事となりました。規制的措置を含む政省令等について現在検討が進められています。当協会も業界を代表する組織として対処を進めますが、荷待ち・荷役時間の短縮には荷主企業の協力が必須であり、連携してリードタイム短縮や物量繁閑差の緩和による平準化に取り組んで参ります。
また、持続可能な物流の実現にはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への対応も必要であり、グリーントランスフォーメーション(GX)推進に関する会員事業者への情報発信や支援制度活用を推進します。
事業環境が急激に変化している状況ですが、当協会ではこの変化を業界発展に資するチャンスへと変えるために活動を展開し、社会基盤としての倉庫業の責務を果たして参ります。