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和歌山産業界
2025年大阪・関西万博の開幕から2カ月が経過した。和歌山県は、京都府や兵庫県など関西1府8県が参加する「関西パビリオン」で常設展示を行っているほか、和歌山県をアピールするイベントを実施する。和歌山県のあるべき姿や魅力を国内外に発信し、地域活性化を目指す。
“魅力”世界にアピール
関西パビリオン
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関西パビリオン内の和歌山ブース
関西パビリオン内の和歌山ゾーンでは、紀伊山地の巨木を連想させる映像タワーを設置。中央には祭りや伝統芸能の実演や展示を行っている。
さらにパティシエ・加藤峰子氏がプロデュースしたスイーツも大きな目玉。和歌山県の桐を材料にした器に和歌山県産の食材を使った6種類のスイーツを盛り付けた「森と恵みのペアリングドリンクセット」を用意した。和歌山県の中瀬雅夫万博推進担当参事は「大型連休(GW)では和歌山ゾーンに1日3000人程度が来場し、予定の倍の人々が訪れている」と盛り上がりを強調する。
和歌山ウィーク
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人工たんぱく質繊維や再生糸を使った和歌山県のニット製品
期間限定のイベントも盛況だ。4月30日—5月3日にはEXPOメッセ「WASSE」で、和歌山県の食やモノづくりなどの体験イベント「和歌山ウィーク」を開催。和歌山県の梅や醤油、日本酒などの試食、試飲などが行われた。
和歌山県は日本でも有名なニットの生産地。産地の販路開拓やモノづくり技術の向上などを目的とする「和歌山大莫小」のプロジェクトの一員として県内のニット事業者11社がイベントに参加した。人工たんぱく質繊維やリサイクルした糸を使ったTシャツやパーカーなどを販売した。
和歌山県串本町では民間初となる人工衛星のロケット打ち上げが注目されている。串本町は4月30日、スペースワン(東京都港区)のロケット「カイロス」に関するプレゼンテーションを実施。串本町役場の名田倍也課長は「和歌山県でのロケット打ち上げで工場の誘致や雇用が生まれれば地域の人口減少に歯止めをかけられる」と期待する。
和歌山県は宇宙関連の産業集積などを目指す「Kii Space HUB」事業を25年度に開始。県内への宇宙産業の集積可能性の調査、宇宙産業人材の創出に向けたセミナーなどを実施する。和歌山県での宇宙開発の可能性を国内外にアピールしていく。
共創チャレンジ
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和歌山県内の学生が地域の課題解決に向けた取り組みを発表
地域課題を解決するため、産学官連携の取り組みも紹介された。5月3—5日にTEAM EXPOパビリオンで、和歌山大学や和歌山工業高等専門学校、和歌山県などが和歌山県の課題解決に向けた活動を報告した。移住者受け入れのための持続可能な地域づくりや、サイクリングによる誘客・周遊促進など、県内7地域の取り組みが報告された。
熊野古道のルートの一つで田辺市から那智勝浦町にかけての太平洋沿いに位置する大辺路(おおへち)もテーマの一つ。発表者の和歌山大院生の北林光さんは、1週間かかる大辺路の旅行ルートに代わる1泊2日程度のモデルコースを提案した。北林さんは「大辺路に行くハードルを下げられれば、繰り返し訪れてもらえるのではないか」と強調する。
和歌山県では24年4月から、県内の大学や和歌山県との共同事業として、県内各地の魅力創出や課題解決に向けた取り組みを実施。学生が各地に足を踏み入れて調査し、成果の一部を万博で発表した。こうした取り組みを続けるため、4月に地元経済界も加わった産学官の連携プラットフォームを構築。万博終了後を見据え、産学官のチームで素早く人材育成や観光、デジタル変革(DX)などの地域課題に取り組める体制を作る。和歌山大の本山貢学長は「地域課題の解決を通じ、学生に地域の魅力を感じてもらい県内に人材を根付かせたい」と狙いを明かす。
万博漬け
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25年後に開封される梅干しの樽
県外との連携イベントもある。6月6日には、放送作家の小山薫堂テーマ事業プロデューサーが手がけるパビリオン「EARTH MART」で和歌山県の梅を使った「万博漬け」のイベントを開催。和歌山県の梅と熊本県天草市の天然塩で梅干しを漬けた。梅干しを万博の思い出としてタイムカプセルにし未来に託す試み。万博漬けは25年後の50年に開封する予定だ。小山氏は「保存できる梅干しを使うことで思い出を未来につなげたい」としている。
和歌山県は、4月に急死した岸本周平前知事に代わり、新たに知事に就任した宮崎泉知事の体制に移行した。「オール県庁でがんばっていきたい」との岸本前知事の遺志を継ぎ、万博での取り組みをバネに和歌山県の発展につながる取り組みが期待される。