-
業種・地域から探す
和歌山産業界
2025年の幕が開けた。4月にはいよいよ大阪・関西万博が始まる。万博に訪れる国内外の人々に和歌山県をアピールする絶好の機会だ。さらに万博終了後のレガシー(遺産)をどのように残すかも重要な課題。これを機に豊かな観光資源やロケット打ち上げで盛り上がる宇宙産業の支援など、地域活性化の取り組みを進める。人口減少や災害への対策など問題は山積みだが、和歌山の特性を生かした産業が花開こうとしている。
万博で訪日客取り込む
-
大阪・関西万博の和歌山ゾーンでは和歌山県の食の魅力を五感で感じる場を提供する(和歌山県提供)
4月開幕の万博に向けた準備が着々と進む。和歌山県は関西広域連合が設置する関西パビリオン内に和歌山ゾーンを設置する。和歌山県の自然や歴史を表現した映像、特産品を生かした料理などを提供する。万博終了後にもリピーターとして和歌山県に足を運んでもらうことが狙いだ。和歌山県の魅力を発信することで、増加傾向にあるインバウンド(訪日外国人)を取り込む。
和歌山県には和歌山県北部にある高野山や白良浜(同白浜町)、三重県や奈良県などにもまたがる熊野古道など、自然豊かな観光資源が多い。万博期間中にこうしたエリアへの誘客がカギとなる。
宇宙産業集積に期待
-
ロケット打ち上げを見ようと多くの人が和歌山県串本町を訪れた
さらに和歌山県ではロケットの打ち上げが注目されている。スペースワン(東京都港区)は和歌山県串本町の発射場から小型ロケット「カイロス」2号機を24年12月に打ち上げた。前回に続き今回も予定していた軌道に人工衛星を投入することはできなかったが、次の打ち上げに向けた大きな一歩となった。スペースワンの豊田正和社長は「今回の打ち上げを前向きに受け止め、次の挑戦に向けてまい進したい」と強調する。
三菱UFJ銀行の試算ではロケット打ち上げによる県内での経済波及効果を今後10年間で最大1590億円と見込む。すでに3号機の打ち上げの準備が進んでおり、成功への期待がかかる。和歌山県も宇宙産業の集積に向け、ロケット打ち上げを支援する。
地方振興 市町村と人材連携/和歌山県知事 岸本 周平 氏
-
和歌山県知事 岸本 周平 氏
和歌山県の岸本周平知事に2025年の展望を聞いた。
ー25年の目玉は何でしょう。
「目玉はなんと言っても大阪・関西万博。関西広域連合の一員として万博を成功させたい。100日前イベントを開催するなど、機運醸成を進めてきた。県内の子どもたちが万博を通じ、学びと楽しみが得られるようにし、レガシーとして残るとうれしい。また万博には間に合わなかったが、空飛ぶクルマの離着陸の乗り場の適地を探し、実現させたい。空飛ぶクルマの取り組みは防災の観点で先に実用化するだろう」
ー24年1月の能登半島地震から1年がたちました。災害対策についての考えは。
「能登半島と紀伊半島は被災時に孤立集落となる点で共通する。こうした課題解決のため、空飛ぶクルマや飛行ロボット(ドローン)が使われるだろう。また災害対策としてトイレカーやキッチンカーのネットワークを作りたい。また衛星通信の整備も検討している。24年8月に南海トラフ地震臨時情報が発表された際には防災意識が高まり、県で防災体制を整備し良い訓練となった。今後はインバウンド向けの案内動画を作るなど、防災を意識した観光振興も大切になるだろう」
ー観光振興にどう取り組みますか。
「世界文化遺産登録20周年を迎えた24年には『聖地リゾート!和歌山キャンペーン』を実施し、観光資源の広報・宣伝に取り組んだ。外国人には観光地の精神性が受けている。今後、持続可能性や静けさなどの要素と合わせて磨き上げる必要がある。富裕層向けホテルの誘致なども行いたい。またロケットの打ち上げが中止した際、付近の工場や星空がきれいな白浜町の日置川への周遊ツアーなどができれば面白いのではないか」
ーロケット打ち上げに宇宙ファンが注目しています。
「なかなか思い通りにいかないものだが、打ち上げを続けていればいつかは成功するだろう。スペースワンは年間30回の打ち上げを目指している。ある程度の打ち上げ回数を超えれば、ロケットの部品・組立工場が必要になると思う。その時には県内に工場を誘致したい。さらに県内で宇宙産業を作るには人の確保が重要だ。工業高校の設立や留学生の受け入れなど、人材確保のあり方を新総合計画に盛り込みたい」
ー2040年を見据えた新総合計画の策定作業が進んでいます。県として方向性は。
「26年度からの新総合計画の策定作業を進めている。40年の和歌山県のあるべき姿を示したい。総務省は人口が大きく減少する『2040年問題』で人口が半減する市町村が出てくるとみている。小さな市町村では専門職を中心に職員を雇えないケースも出てくるだろう。そこで行政サービスを県と一緒に行う仕組みを議論している。また県庁職員の人材配置を見直し、新卒職員は地方の振興局に配属する人事制度を導入している。今後、若手職員を積極的に振興局長に登用するなど、県庁と各市町村を人材が行き来するような仕組みに変えていきたい」